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「昨日までみたくやってけばいいじゃん。オレは茗子といれるならそれで──」
「黄瀬さん。この2ヵ月確かに楽しかったです。だけどそれだけですから……さようなら」
「茗子っ!!」
──パタン
静かに閉じた扉。その向こうで彼は悲しんでいるだろうか。
だけどそれでいい。
私はサイテーなだけだから、もう関わらない方が良い。
あの太陽を曇らせるなんて出来ない。したくない。
「……………もしもし、アカネさん?」
携帯でアカネさんに繋いで、私はその場を離れた。
昼休みの終了を告げるチャイムを聞きながら、私は視聴覚室に入った。
そこには…
「もったいぶった登場だね」
「てか、期間長いから呼び出されるまでゲームの事すっかり忘れてたわ~」
「さぁて、どっちの呼び出しかなぁ~」
「………報告、よね?茗子」
「はい」
サイテーで最悪なゲームの参加者が集っている。
次の時間、この教室を使うクラスは居ない。各々にバラバラな列の椅子に着いて私を見てくる。
「で?どうなのどうなの?黄瀬とヤッちゃった!?」
「あと9日残しての報告ってことはぁ、つまりそういうことかなぁ?」
「…………」
「…………」
ミカとアカネさんが深刻そうに私を見る。
ミカと話して30分もしないうちの報告。ミカはきっと解っているだろう、私の報告がどちらかを。
アカネさんもきっと何かに気付いている。私に対して様子がおかしかったのはそういう事だろう。
目を輝かせる二人に向かって私は口を開く。
「今回のゲーム、私の負けです」
「っあー!やっぱりー………って、え?」
「負、け?……え~、どういうことぉ?」
二人が唖然とする。
「まず、黄瀬涼太にゲームの事が露見しました」
「え?…あっ!もしかして、あの時リョータいたの!?」
「はい。どうやら聞かれていたみたいで、あの後問い詰められました」
ミカが気付いて、申し訳無さそうに眉尻を下げる。
気にする必要は無いのに。彼が通り掛かったのを知って態と会話を続けていたのだから。
「げぇ、黄瀬怒った?」
「まあ、それなりに」
「それなりぃ?」
「はい。私が負けを認めた一番の理由は、スズさんの言った通りです」
「は?あたし?何言った?」
「ゲーム初日の賭けの時に“ぜってー怖じ気づくのがオチ”と言いました」
「あ~…言ったっけ?」
「はい。結局その通りでした。私は土壇場で怖じ気付いたんです」
「……へぇ?」
「そっかぁ~、でも仕方ないよねぇ。ハジメテなんて怖いもんねぇ」
「………」
フォローしてくれているようでそうでもない言葉が何故か胸を刺した。
今迄こんな気持ちなんて抱いた事は無かった筈なのに、この感覚はなんだというのだ。
自分の不可解な感情に頭を捻っていると、スズさんがポツリと呟いた。
「折角、あげたチャンスだったのにさー」
「!?」
「スズ!」
アカネさんが直ぐに嗜めるが、聞こえてしまった。
「どういう事ですか?あげたチャンスってなんですか…」
「………」
気まずそうに顔を顰めたスズさんだったが、直ぐに開き直って私を見てきた。
「いやね、どうせロストすんだったら思い出に残る人との方がいいんじゃないかなぁって」
「なんですかそれ…。つまり、私を故意に黄瀬涼太と引き合わせたという事ですか!?なんでっ!?」
「アンタには、そういうの大事にしてもらいたかったんだよ」
アカネさんが真剣な眼差しを向けてくる。
「黄瀬ちゃんは、笠松も認めてる人だから茗子の事ちゃんと大事にしてくれると思ったの。だから──」
「巫山戯ないでください!」
「っ!」
「だったらなんでゲームを抜きに引き合わせてくれなかったんですか!?こんな形で黄瀬涼太が私を大事にする訳無いじゃないですか!!」
「ちょ、茗子…?」
私が声を荒げたからかスズさんが驚く。
「ゲームが絡んでいないのなら元より関わろうなんて思いませんでしたけど…。それでも結果がこれですよ!」
「…茗子」
ミカが私に心配そうな目を向ける。
「サイテーなゲームからは最低な結末しか生まれないんですよ!」
「そうかなぁ?」
「なんですかマユミさん。何故そこで首を傾げるんですか」
「茗子と黄瀬くんなら生まれると思うなぁ、最高な結末」
「何を馬鹿な事を。もう二度と関わるつもりは無いんですよ」
「え~、でもたまぁに茗子と黄瀬くん一緒にいるの見たけど、ほ~んと仲良さそう…ってゆーか恋人みたいに見えたもん。なれるよ二人なら本物にさぁ」
「節穴ですか。私にそんな感情はありませんよ!」
「ほんとにぃ?」
「……もう止めてください。これ以上は不毛です」
「茗子はそれでいいの?」
「しつこいです。貴女らのエゴイズムに私を巻き込まないでください!大きなお世話なんですよ!!」
こんなに気分が悪くなったのはどれぐらい振りだろうか。
これ以上此処に居ると皆に暴言を吐いてしまいそうだ。
それに、暫くは皆の顔も見たくないくらい腹が立っているのも事実。
「………暫くは話し掛けて来ないでください。さようなら」
「あ、ちょっと茗子!?」
「わぁ、怒んないでよぉ茗子~!」
皆の声を扉で完全にシャットアウトする。
出た廊下は静まり返っていた。
まんまと嵌められた。私は最初からアカネさんらの手の平の上だったという訳か。
ああ…きっと黄瀬涼太もこんな気持ちになっているのかもしれない。
本当に私は彼に最低な事をしたんだな。
“答えは………NOっス”
“七不思議って謎を解明したくなるじゃないっスか。まさにそれなんスよ”
“じゃあ一緒にバスケしてみないっスか?”
“番号教えて欲しいってのはもっと話したいって事なんスから”
“オレもよく解んねぇけど…呼びたいんスよ、茗子って”
“自分のファンに好きな子が嫌がらせ受けてるなんて嫌だ”
“なんか嬉しいな。茗子がオレに身体全体で反応してくれてるって”
なんだこれ?何故、黄瀬涼太の顔が、言葉が過る?
もう関係無いのに、なんで…。
“オレ、茗子が好きだから”
「──っ!」
何故、こんなにも胸が苦しい…。
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