Technical-Foul
Name change
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翌日。学校へ行けば、黄瀬涼太のファンだろう女らからのキツい蔑視をプレゼントされる。
嫉妬に
真偽が解らず遠慮がちに見てくる疑惑の視線。遠くからの潜めいた声。
想定通りの反応の数々は、あまりに滑稽で一人で笑ってしまいそうだ。
「茗子ーっ!石丸茗子ー!」
そんな中、無遠慮に私の名を声高に叫ばれる。
フルネームで名指しする所、故意だな。
「どうしました?ミカ」
「どうもこうもないってー」
その人物──ミカを待ち受け、廊下の真ん中で…ちょっと壁際に寄って、話を始める。
「ねぇねぇ、私に話す事ない~?」
嬉々として聞いてくるミカに苦笑が漏れる。
「特に報告事項はありませんが?」
「まったまた~、とぼけちゃって~。私の所にも回ってきたよー?コレ」
ニヤニヤと面白がりながら携帯を見せてくる。
それは昨日私の下に届いたメールと同内容、同掲載物だった。
「茗子いつの間にリョータと付き合ったのよ~?」
声が大きい。
態とだな。
「付き合っていません」
「え~?付き合ってないのにキスしたの~?」
「してません」
「茗子が誘惑したの?それともまさかリョータから!?」
「違います」
「で、もうヤッちゃったの?」
「……………」
この言葉に辺りの空気が凍り付いた。
ミカの声が大きいから聞き耳を立てずとも聞こえる会話に耳を傾けていた女らが、ドス黒いオーラを放ち始める。
「ねねっ、どうなの?」
「……………」
その問いには答える事無く、小さな笑みを浮かべるだけにしておこう。
「なーに?その意味深な笑顔は~」
「意味なんてありませんよ」
肘で突いてくるミカにもう一度笑みを向けて、この嫉妬やら憎悪やらが渦巻く廊下を颯爽と歩き出す。
中には敵意ではなく最早殺意なのではないだろうかという程に迸らせている人も見受けられた。
それから数日。
事態を知らない黄瀬涼太は、出会えば声をかけてくる。
他愛も無い有り触れた会話をするだけでも、近くに居た女らからは透かさず嫉視を浴びせられる。
だけど、嫉視と罵声ばかりで特に行動を起こしてくる人物が無く、退屈だ。
剃刀入りの手紙だとか靴に画鋲だとか机に落書きだとか、そういうのを期待していたんだが。
まぁ、ドラマでもあるまいし、日常でそんな事が簡単に起こる訳も無い。
と、思っていた矢先にとある出来事が起きた。
それはほんの些細な出来事。
「茗子っちー!」
大人しく次の授業を待っていると、戸口から私を呼ぶ声があった。
教室中に通る声で呼ぶその人物に、教室や廊下に居た人らがざわめいた。
席を立ち、相も変わらずキラキラしている彼の下まで向かう。
「なんでしょうか?黄瀬さん」
「辞書持ってねっスか?」
「辞書ですか?ありますよ」
「貸して!オレ今日当たるんスよ」
「忘れたんですか。分かりました」
パンと手を合わせる彼に苦笑いを一つ残して、自分の机に辞書を取りに戻った。
今日も変わらず嫉視の数々。
何か言いたげに見ていないで、言ってくればいいのに。
「どうぞ」
「助かったっス~。ありがとう茗子っち」
「そうですね。このお礼はデートでいいですよ」
「デート?」
辞書を受け取った彼がポカンとする。皆に見られてしまうよ、その間の抜けた顔。
「はい。おサボりデート、またしませんか?」
「………ははっ。悪い子っスね」
楽しげに笑う彼を見て、周りから痛い程の視線を食らう。
「ありがとうございます」
「考えとくっス」
「色好い返事をお待ちしております」
手を前に揃えてお辞儀をすると彼から笑い声が上がった。
顔を上げると、楽しげに笑う彼が辞書を軽く掲げてから、自分の教室の方へと歩いて行った。
辞書を忘れ、友人に借りに来た──よくある事なのに私相手だと、誰も良い顔はしないようだ。
あのメールは途轍もない力を持っている。
それに、彼は大きな声で私の名を呼んだ。
決定打にしては充分過ぎる起爆剤だった。
そして翌朝、靴箱にラブレターが入っていた。
待っていた展開に頬が緩むのを抑えて、チャイムを聞きながら教室に向かう。
途中出会った担任に注意されながら共に教室に入った。
【石丸茗子
午後4時、プール横のプレハブ前に来い】
授業中にラブレターを確認する。もし、私が行かなかったらどうなるのだろう?
何かあると解っていて態々行く人がどれくらい居るだろうか。
まぁ、最低一人は居るか。此処に。
売られた喧嘩は格安で買いましょう。
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