甘いマスクのホストにはご用心
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
自分が生きている世界で、無縁だと思っているものが多々ある。
特に興味も無く関わり合いにならないと気にも留めない事柄。誰にでもあるんじゃないかな。
そんな物でも、唐突になんの前触れもなく関係することが、時にはあるという事も。
「ねぇ、凛子。今日の夜空いてない?」
「夜?…空いてる、けど…どうしたの?」
「私に付き合ってくれないかなぁ?」
「何?飲むの?それとも買い物?」
「ある意味どっちも正解」
「?」
友人の伊織ちゃんに誘われたのが、まさにその入口だった。
伊織ちゃんに誘われるまま、夜のかぶき町を歩き、客引きや酔っ払いや男や女の様々な姿を横目に一つのお店の前で立ち止まる。
煌びやかな構え。現実離れした桃源郷。
其処は、何処からどう見ても──
「ホストクラブ?」
「そっ!高天原だよ」
その名は勿論知っていた。だけど、絶対に関わらない場所だと思ってた。
かぶき町で一番のホストクラブ【高天原】。ハイレベルなイケメン揃いのハイレベルなサービスは、一度足を踏み入れた女性を必ず虜にすると言われている。
決して興味が無い訳じゃなかった。だけど、兄の存在がこういった類のお店に行かせてくれる筈もなく、私も反対を押し切ってまで行こうとも思えなかった。
きっと一度も経験する事がないだろうなと…。
いつどんなきっかけでどうなるのかなんて本当に解らないものだ。
「二人で予約したんだけど、いつも一緒に行ってる子が風邪引いちゃってね」
その子が風邪を引かなければ、私は誘われる事もなかったと思うと、巡り合わせって不思議だ。
「あ、もしかしてホスト苦手だった?」
私が思案顔でもしてたからか、伊織ちゃんは申し訳なさそうに私を窺ってくる。
「ううん。初めてだから勝手が解らなくて」
「あぁ。それなら大丈夫!お酒飲んでお喋りするだけだから」
私の知識もその説明通りしかない。
高天原に関して言えば、夢のような時間を過ごせるらしいけど。
「相手もプロ。お客が嫌がるような事はしないから」
私を安心させようとしている伊織ちゃんに小さく微笑んで、意を決した。
今日は、新しい世界に足を踏み入れてみよう。
何事も経験だ。
1/4ページ