本人には言えない事も他人には言えたりする
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今日も今日とて万事屋へ。
今回は知人からの代理依頼でやって来た。
呼び鈴を鳴らして、扉を開ける。
出迎えがあるより先に居間へと入るのはいつもの事。
そう…私は何も変わらないいつもと同じ行動を取っているだけ。
「万事屋さんに依頼持ってきたよ」
入ると、まず新八君が笑顔で迎えてくれる。
そして神楽ちゃんがまた来たのかと呆れるけど、酢昆布一つで喜んでくれる。
銀さんは、ジャンプを読みながら今日はどうしたと聞いてくる。
それがいつもの万事屋。
…のはずだった。
「此方の同意無く上がるのは不法侵入に当たる」
「小さな事から悪は育つ。社長斬りますか?」
新八君と、神楽ちゃん……多分。
変な羽織りを着て、険しい表情をして、木刀と傘の切先をこっちに向けてくる。
「な、何してんの?二人とも」
「江戸の平和を護る為、我ら万事屋はこれから見回りに出る」
なんて、ワケの分からない事を言われて、椅子に座る銀さんの方を見た。
後ろ向きで背凭れの向こうに上がる紫煙にハテナが浮かぶ。
「ぎ、銀さん?今日の依頼、犬のお世話お願いしたいんだけど」
知人から預かった犬の入った鞄をテーブルに置いた。
すると、椅子がくるっと反転し、銀さんがこっちを向いた。
「犬の世話?」
いつもより何処か鋭い声に銀さんを見れば、前髪を上げて纏めた髪型をした、いつもより凛々しい表情の銀さんと眼が合う。
煙管を片手にきっちりとした雰囲気の銀さんに思わず心臓が跳ねた。
「我々に動物の世話をしている時間はない」
「犬の世話くらい自分でしろヨ」
ドキドキと胸を高鳴らせていると、新八君と神楽ちゃんから冷たい言葉が飛んでくる。
「えっ?依頼だよ!?なんで引き受けてくれないの…」
「我々には悪を取り締まるという指命がある」
「お前の相手をしてる暇はないアル」
私にはハテナしか浮かばない。
なんでこんなに冷たいのか。なんでこんなにピリピリしてるのか。
みんなたまにオカシイ時はあるけど、こんなのは初めてだ。
「銀さん、これどういうコト?」
「見ての通り、規律を正しただけだ」
ちょっとカッコイイなんて思った私が馬鹿だった。
「何それ。そんなの万事屋じゃないよ」
「今は仕方ねぇと思ってくれ」
「そう…今は、私の好きな万事屋じゃないみたいだね」
なんだか切なくなって銀さんを睨めば、僅かにたじろいだように見える。
でも、このオカシな空気は変わることはない。
「帰る。万事屋がこんなんならしばらく来ないから」
「オイ、待て。これには事情が…」
何か言おうとしてる銀さんを無視して、鞄を持って玄関に向かう。
外に出る前に見える居間に向かって一言残した。
「銀さん、その煙管ぜんっぜん似合ってないから!」
ピシャッと扉を閉めて、階段を下りる。
下りた所で犬を鞄から出して地面に降ろしてあげた。
リードを握って、犬の赴くまま歩いた。
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