Life goes on
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最後かもしれない時に好きな人と身体を重ねるのは、種を残そうとする生存本能だけやないんやろうな。
その人と一緒におった証のようなものが欲しい。
少なくとも私は、そう思って…
「いつもと違うからかぁ?あんなちひろチャン初めてやったなぁ」
「………」
事後の疲れた身体を休めながら、身形も整えてソファーに深く座って心の中で自分に言い訳してると、隣でふんぞり返るように座る真島さんに茶化すように言われた。
自分でも冷静になって思い返すと、めちゃくちゃ恥ずかしくて、真島さんの顔も見られん状態やった。
「誰かに見られてるっちゅーんが、興奮したんか?」
「そ、そんなんと違う…」
「他の女に取られんように頑張った結果か?」
「他の人とは張り合うたりしません」
「いつも、こんなんやったら俺も楽しいんやけどな」
「もう無いと思うてください」
「落ち込んどったちひろチャンの方が可愛げあったで」
「どうせいつものあたしは可愛げないです」
恥ずかしさ隠すように不機嫌全開でも、真島さんの態度は変わらへん。
私もすっかり元の自分取り戻せた気がする。
「そうやって拗ねる所は可愛いで?」
「ええですよ、そんなん。真島さんにお世辞は似合わんし」
「俺が世辞言うわけないやろ」
「そうでしたね。それやったら、もっと沢山可愛い言うてください」
「思ってへん事は言わん」
「思えや。腹立つわ」
「ヒヒ…やっぱオモロイなぁ。ちひろチャンのあけすけな所は、ホンマ好きやで」
「……………………」
口喧嘩みたいな事しとっても、不意に好きとか言われて心臓止まりそうになる。
私の一部を好きや言うてるだけでも、それでも飛び跳ねたいくらい嬉しくなるんやから、私の真島さん愛は気持ち悪いくらい深くて重たいんやな。
「おん?なんや、照れたんか?」
「ちょ、今こっち見んといて!」
黙った私の顔を覗き込むように見られて、目を合わせるのが無理で顔を逸らす。
照れるというか、ニヤついとるやろうなって思える締まりのない顔になってるから、あんまり見せたくない。
身体ごと真島さんから背けてみた。
「俺から逃げるなんて、ええ度胸やな」
背中から聞こえた声に反論しとこ思うたけど、背後からぎゅって抱き締められた。
引き寄せられると、真島さんの胸に背中預ける形で収まる。
さっきの余韻もあって、胸がキュンってしたと同時にイきそうやった。
「顔見せろや」
言うて、顎をガッと掴まれて上を向かされる。
「ちょ、苦しいて!」
別にイチャつく為に抱いたんやないって分かって、身体も一気に冷めていく。
色気も何もない手によって、上向かされて真島さんが後ろから覗き込んでくる。
前髪がはらりと落ちた時、真島さんが少し目を丸くさせた。
そして、もう少し続くかと思うとったのに手がすぐに離れて解放される。
首も痛いなぁ思いながら、真島さんの方に向き直れば、真剣な眼差しとぶつかった。
「真島さん?」
「そろそろ賽の河原に戻ろか」
「え?………あ、はい」
あまりにも唐突で、怪訝がって真島さん見つめれば、ソファーから立ち上がった真島さんが私の前に立って見下ろしてきた。
そして、伸ばした手で私の額に触れる。
あ…と、思い出す。そこは、絆創膏が貼られた場所。
「戻ったら、ちゃんと手当てし直すんやで?」
怪我した箇所を優しく撫でられて、急に態度改めた事でも気付く。
きっと、さっき興奮した事もあって絆創膏越しでも解る程に血が滲んでるんやろな。
歩き出した真島さんに置いてかれないように、私も立ち上がって銃を拾ってから部屋を出た。
途中、ガラスで反射した自分を見ると、キャパオーバーで血が溢れ出すんちゃうかってくらい真っ赤な絆創膏になってた。
気遣われると、足でまといって言われてると思うたけど、今はもう素直に嬉しくて胸がいっぱいになる。
ホンマ、心の余裕失くしてたんやな…。
タワーから出ると、陽が傾き出していた。
昼間っからあないな事してたのが、ホンマ今になって恥ずかしくなる。
「どないしたん?顔赤いで?」
ゾンビをサクサク撃ちながらも私の方を見てくる真島さんを軽く睨む。
「分からへんでしょ」
「なんやホンマに赤かったんかいな。熱上がったんか?」
赤みを帯びた陽射しで顔色なんて解らないと指摘すれば、揚げ足取るように悟られた。でも、からかうような口調にはならへん。
「別にそんなんやないけど…」
「ん~?それやったら、さっきの思い出してまた興奮しとるんか?怪我に響くで」
「ちゃうわ!逆に恥ずかしなってんねん!」
結局からかうような事言われて思わず声を張ると、ほう…と感心するように目を丸くされた。
「やっぱり見られて恥ずかしかったんやな」
「いや、ゾンビには別になんも…」
「ゾンビやなくて、子分どもにや」
「……………………え?」
なんか怖い事をサラッと言われたような気ぃする。
瞬時に理解が追い付かなくて、ポカンとした私に真島さんは首を傾げた。
「なんや気付いとらんかったんか。事務所の奥の部屋にアイツら隠れとったやろ」
「…………………え?」
「わしが最初に出てく時、生きてた奴ら残してきたから、あの奥におるやろ?」
「うそやん…………」
「嘘吐いてどないすんねん」
「うそやって言うて!」
「嘘や…ないで!」
ハッキリ言われて、顔から火が出そうな程熱が上がる。
恥ずかしいとかそういう次元の問題やない。
「いやや…次会うた時、どないな顔して会えばええねん」
「普通に会うたらええやんか」
「恥ずかし過ぎるわ!」
全く解ってない真島さんが腹立たしい。
「別に見られるくらいええやろが」
「良くないわ!てか、なんではよ助けてあげないんですか!」
「あそこにおった方が安全やろ」
「けど、もしもの事があったら…」
「そん時はしゃあないわ。それに、例え死んだとしても冥土の土産出来たんやからええやろ」
真島組の組員の心配してるのに、真島さんはしれっとしてる。
「はぁ?なんやねん、その冥土の土産て」
眉根寄せて聞けば、真島さんはニヤリと口角を吊り上げた。
あ、嫌な時のやつ。
「AV顔負けのちひろチャンのエッロい姿見れたんや。オカズにもなるし、今頃別の意味で昇天しとるかもな」
ケラケラ笑って、人の恥をなんやと思うてるんやろこの人は。
「今すぐ抹消してほしいわ!」
「イッヒッヒッ。ホンマ話題の絶えないやっちゃなぁ」
頭抱えた私をまだ笑い飛ばす真島さんやけど、その子供のような無邪気な笑い声に小さくため息吐いて、全て流す事にした。
賽の河原に戻って、真島さんと別行動になって、まず手当てして、それから堂島くんの姿を捜す。
お礼をまだしとらんかったから、出来るうちにしときたい。
奥の屋敷に架る桟橋の前で部下と話してる堂島くんを見つけた。
近付いて、部下の人との会話が終わるのを待ってから声をかける。
「堂島くん、今ええかな?」
「ん?ああ……どうやら元の自分ってやつを取り戻せたようだな」
私の帰りが遅かった事から、きっと真島さんと何があったのか察してるやろうけど、特に突っ込んで聞かれる事はなかった。
「うん。堂島くんのお蔭やわ。ホンマありがとう」
「俺は、付いてっただけだ」
小さく首を振る堂島くんに笑みがこぼれた。
「そんな事ないよ。気持ち吐き出せたのも堂島くんのお蔭やし、真島さんに言うてくれて本当に助かったし…」
「力になれたのなら良かった」
柔らかく頷いてくれて堂島くんに胸が温かくなる。
「この騒動が落ち着いたら何かおごらせてや?」
「え、いや……………そうだな、楽しみにしてる」
一度否定しようとしたのに、私の好意を無下にせずに立ててくれる所もええな。
ホンマ、ええ男やな。
心のつかえは下りた。
あとは、このゾンビ騒動を終わらせる為に何をすべきか考える。
ヒルズから賽の河原へみんなを移動させて、食糧なども運び終えて一息つけたのが夜。花屋さんの情報では、郷田龍司が色々と動いてくれとるらしかった。
夜が更けていく。
あのツインテールの女の子も賽の河原に移動してきて、入れ替わりにヒルズの方へ向かう真島さんとは会えず終いで姿を捜しとるようやった。
でも、深夜になっても真島さんは帰って来なかった──。
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