ホテル
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
真っ暗な空とは対照的に明るい繁華街を、杉浦を先頭にリコ、そしてそんな二人を追って男達数人が駆け抜ける。
全速力のマラソン大会をしているようだ。
そんな彼らをすれ違う通行人が何事かと振り返るが、この街では珍しい光景でもない為、すぐに自分の事に戻っていく。
杉浦が狭い路地へと入ると、リコもそれに続く。
男達もなかなかどうして足が速い。あの借金取りの男は一人遅れているようだが。
人ひとり通れる程の建物の間を通る中、杉浦は後ろを確認する。その足の速さは昨夜のチェイスで実感しているように、リコはしっかり付いてきているようだ。
建物間を抜けて大きな通りに出ると、今度は階段を駆け上がり目の前の建物へと入っていく。
自動ドアを通ると、その先に吹き抜けのフロアがあった。
杉浦は、躊躇なく手摺りに手を掛けて飛び越えると一階層下のフロアへと着地した。パルクールが得意な自分にとって、その高さは簡単に越えられる。
しかし、華麗に着地した後で慌てて後方上を振り返った。
いつもの癖でパルクールをしてしまったが、今はリコが一緒だったと気付く。
振り仰いだ先、一階層上のガラス柵の手摺りに手を付いて見下ろしてくる瞳とぶつかる。
すぐに近くにあるエスカレーターを指差して教えた。
リコが一度後ろを振り向く。どうやら男達も建物内へと入ってきたようだ。
男達の手がリコに届く、その直前にリコは手摺りを飛び越えた。
驚く杉浦の目の前に手を地面に着きながらも無事に着地する。
立ち上がりながら杉浦にしたり顔の笑みを浮かべた。
やるじゃん、と目で伝えた杉浦は、すぐに走り出す。
男達もまた手摺りを飛び越えてきたからだ。
着地に失敗して尻餅を着く男達を確認しながら、反対の出入り口へと向かって、建物も後にする。
建物内から怒号が追ってくる。まだ油断は出来ない。
そのまま道すがら真っ直ぐ駆け抜けていくと、そこはホテル街だった。
恋人らしき二人組が多く行き交う中、杉浦とリコは構わず走り続け、一つの建物の影へと入り込んだ。
「はぁ…はぁ………」
どちらからともなく呼吸を整える音がする。
建物の影に身をひそめ、こっそりと辺りを窺う。
一度見失ってくれただろうが、まだ撒いたわけではない。警戒を緩める事なく周囲を見回す。
すると、やはりまだ諦めてはいない男達が通りに姿を見せた。
「こっちの方に来たのは確かだ…探し出せ」
見失ってはいるようだが、ここに留まっていればいずれ見つかる。
しかし、下手に飛び出しても自分にあの人数を相手に出来る力量はない。八神や海藤なら考え無しに飛び出して全員叩きのめすんだろうな、と二人のデタラメな強さを羨んでみても、それで自分も強くなるわけじゃない。
一人だったら多少無茶をすればなんとかなるかもしれないが、今は女性がそばにいる。自分が無茶をして彼女に被害が及ぶのだけは避けなければならない。
そう考えると、どうしたって男達と戦うという選択肢は選べなかった。
ここから逃げるルートを頭の中で模索していると、不意に手首が掴まれた。
「っ!?」
「こっち、行こ!」
驚きながら見れば、リコが掴んだ手首を引っ張って駆け出した。
わっ、と転びかけながらもすぐに体勢を立て直した杉浦は、引っ張られるまま彼女にどこかへ連れて行かれた。
1/4ページ