反逆
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初めて見た時の、あの衝撃は未だ忘れない。
呼吸も忘れ、時間さえも止まってしまったような出逢いだった。
【サユリ】は、俺にとって神と言っても過言ではない程、心の奥深くに温かなモノを与えてくれた。
それが、何故……
何故なんです!先生!
「いやああああ!」
気付けば、隣で高巻さんが悲鳴を上げていた。
物凄い速さで落ちていると解ると、咄嗟に彼女を抱えていた。
だが、彼女の悲鳴は止まらない。
あぁ、俺も落ちているのか…。
衝撃の後に何処かに降り立ったと解るが、よく無事だったなと客観的に思ってしまう。
彼女も無事だったのは良かった。と思っていたら、殴り飛ばされた。
何故なんだ…!
起き上がると、俺を取り巻く環境の異常さが眼についた。
見渡せば、眼が眩むような庭のような空間が広がり、変な格好の奴らが立っていた。
これは、俗にいう誘拐か?
「なんだお前ら!?」
「落ち着いて喜多川くん!私だってば」
「高巻さん?」
確かに抱えたのは高巻さんだったが、仮面にライダースーツのような格好は些か本人と気付かない。
よく見れば、彼女の隣に立つ奴らも見覚えのある二人だった。
小さな着ぐるみもいたが、コレは置いておこう。
ここは一体何処なんだ?
つい先程までアトリエにいたはず。部屋を出て、それから急に視界が歪んで…
「何なんだここは!」
「……心の中よ、マダラメの」
俺の疑問に冷静な声が答えた。
「先生の、心の中?………高巻さん、悪いが…気は確かかい?」
着地の時にどこかふつけたか?
「ウソじゃねぇ、これがヤツの本音なんだよ。欲望まみれの…カネの亡者ってこった」
そう思っていると、今度はガラの悪いアイツが言ってきた。
「でたらめを言うな!」
俺も思わず声を張ったが、俺を見てくるみんなの眼が真剣なのに気付く。
此処は、先生の心の中。深層心理とも呼べるもう一つの現実。
こんなおぞましい世界が先生の本当の姿だというのか?
百歩譲って、先生の心の中だとしよう。
だが、それなら何故俺達は先生の中にいるんだ?
どうやって入り込んだ。お前らのその格好は何なんだ…。
「お前ら、いったい何なんだ?」
聞けば、奴らは胸を張る。
「腐った悪党を改心させる集団…てとこか」
本当に何を言っているんだ…。
突然過ぎる。
【サユリ】の事も何がなんだか解らない。それに加えてこの世界。
信じられるワケがない!
だが、コイツらは最初から先生を疑って俺に色々と言ってきた。
コイツらは解ってたのか?この世界の事、先生の事…。
もし、これが現実だというのなら、俺の知る先生は…何処にも…
「だが…それでも十年置いてもらった恩義だけは…消えない」
「喜多川くん…」
案じてくれる声に、これが現実なんだと突き付けられる。
そう思うと、身体が拒絶反応を起こしたように吐気が込み上げてきた。
「頭の理解に、気持ちがついていかない…」
言葉にしても、全くどうしていいのか解らなかった。
「悪いが、のんびりしてられないぜ。すんごい警戒されてる。さっさとズラかるぞ!」
あの着ぐるみの言葉に、移動を始めた彼らに俺も続いた。
何処に向かっているのか知れないが、見える景色全てが俺の心を抉る。
派手に着飾っているだけでてんで中身のない、虚栄心の塊のような美術館。
これがあの先生の心の中だと………!
展示室のような部屋に着いてすぐに眼に入ったモノに眼を瞠った。
「この絵は……」
「見覚え、あるんじゃない?昔、同じ弟子だった人達でしょ?これ」
彼らは本当になんでも解っているんだな。
この部屋にある肖像画の全て、かつて斑目門下だった者達だ。
先生が考えている“弟子”。まるで物扱い。
彼らの解釈がすっと胸に下りてくる。
それは、そこに自分の肖像画もあると聞いたからだろう。
先生にとって、弟子とは作品を生み出す装置。
そんな事、今まで見てきて知っている!
「弟子の絵はこれが全てか?」
「そうじゃねぇ?同じのも何枚もあるっぽいし」
これが全て?だとしたら、あかりは?
アイツの絵がないのは何故……
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