The Lovers③
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やっぱり、蓮と2人で見れたら嬉しいなと思ってしまう。
もちろんみんなで見るのも楽しそうでいいんだけど。
「遊江」
「!」
考えていたら、まさにその人に呼び止められた。
一日目の試験も終わって、帰ろうと正門を通り抜けた直後に後ろから声が追ってきた。
立ち止まって目の前に来るのを待った。
「一緒に帰ろう」
「うん」
二つ返事で頷けば、蓮が柔らかく笑った。
「テスト、手応えあった?」
「ああ。遊江は?」
並んで歩いて、話す内容はやっぱり試験の事になっちゃう。
もう少し色気のある話が出来ればいいけど、今はそんな余裕もない。真に怒られたくないから。
「…そこそこ?」
「じゃあ、一緒に勉強する?」
疑問形で答えると、クスッと笑った蓮が頼もしい眼差しで聞いてきた。
それに対して私はやっぱり…
「お願いします!」
二つ返事で返していた。
「場所はどこにする?」
「蓮が良ければ、ルブランがいいな」
「ルブラン好きだな、遊江」
「雰囲気良くて落ち着くんだよね」
「俺の部屋も?」
「蓮の部屋がなんか一番落ち着く」
「………落ち着かれたら困るんだけどな」
「え?」
「いや、なんでもない。行こうか」
ポツリと呟かれて聞き逃しかけたけど、困るって聞こえた。
何が困るんだろう?
ルブランに着いて、ドアを開ける。
可愛い音を鳴らすそこを通り、中に入るとコーヒーの香り。この瞬間が好き。
「ただいま」
「おかえり」
「お邪魔します」
「遊江ちゃんか、いらっしゃい」
「今日も勉強会だから」
「なんの確認だ、それは」
「……一応言っただけ」
佐倉さんに挨拶をして、お店を横切り階段を上がっていく。
今の蓮と佐倉さんのやり取りがちょっと可笑しかった。
はっきりと報告したわけじゃないけど、佐倉さんには私達の関係がバレてるから。
ニヤリと訳知り顔で笑う佐倉さんには、蓮もまだまだ敵わないらしい。
屋根裏部屋に入って、蓮がテーブルを出してくる。
私をソファーに座らせてくれて、自分は椅子を斜向かいに置いて座る。
モルガナは、散歩してくると部屋を出て行った。
二人きりの空間で、甘い雰囲気……
「さて、やるか」
「お願いします」
に、なるには時期が悪いかな。
真面目に教科書を開いて、ノートと向き合う。
そういえば、前の試験期間もこうやって蓮と勉強したよね。
あの時はまだ好きと自覚してなかったけど、思えば既に惹かれてた。
「ん?どうした?」
じっと見詰めちゃってて、気付いた蓮が顔を上げてこっちを見てくる。
眼鏡の奥に隠れる瞳は、相変わらず綺麗なまま。
「な、なんでもない。ちょっと、思い出してただけというか…」
「何を?」
「え…あー、前もこうやって勉強したなって」
「あぁ。遊江に可愛いって言ったら、照れてたな」
「………それは思い出さなくていいやつ」
イタズラっ子な眼差しになったから、またからかわれると思って少しだけ睨んで制止する。
「俺、遊江のそういうカオ好き」
「ッ!?」
眼差しはそのままに愛しそうに笑みを深められて、不意打ちに心を射止められた。
頬が熱くなっていく。
「照れたカオも好きだな」
「……わ、わかったから…勉強!ねっ!勉強しなきゃ!」
「もっと見ててもいいけど?」
「勉強するの!」
「残念」
そう言いながらも楽しそうなまま、視線を教科書に戻してくれた。
私も熱い頬をそのままに教科書とノートを確認する。
「タラバガニってカニじゃないんだもんね」
「ヤドカリだな」
「ね。カニなのにね」
「遊江、カニ好き?」
「そんなに好きってほどでもないかな」
「そっか」
「蓮は?」
「俺も、タダなら食べたいと思うくらい」
「タダなら私も食べたいよ」
明日のテスト科目の復習をしながら時には少しだけ脱線しつつ、解らない所は教え教えられながらスムーズに勉強が出来ていた。
2、3日目の放課後も蓮と一緒にルブランで勉強した。
半分は口実。ただこうして二人でいられる時間を作りたかっただけ。
「明日で最後だな」
「うん。蓮のお蔭で乗り切れそう」
「俺は何もしてないよ」
3日目の試験を終えた帰りも一緒にルブランに向かって、すっかり居心地のいい屋根裏部屋。
試験は明日で終わって、その先には花火大会。そして、夏休みが待っている。
「蓮もなんだか張り切ってるように見えたけど?」
「そりゃあまぁ、花火大会楽しみだから」
「ふふ。子供みたい」
「………」
花火大会をワクワクしながら待ち望む蓮が可愛いなと思ってそう言ったら、蓮はちょっとだけムッとして私を見詰めてきた。
機嫌損ねちゃったかな。
「言っとくけど、楽しみなのは花火じゃないから」
「ん?じゃあ何が楽しみなの?」
ムッとしながら反論するけど、花火大会で花火が楽しみじゃないってどういう事だろう。
ハテナをたくさん浮かべて蓮に首を傾げれば、蓮は途端に口角を吊り上げた。
その表情がジョーカーの時のようで、ドキッと胸が高鳴った。
「──遊江の浴衣姿」
頬杖を着いて期待に満ちた眼差しで見詰められると、敵わないなと思う。
「着て行こうかなって思ってるけど…ハードル上げない方がいいよ?」
「なんで?スゴい可愛いと思うけど?」
そういう事をサラッと言っちゃう所が、なんかもう好き…ってなる。
「もう、あんまり上げないでって。杏と真だって着るかもしれないんだから」
「真は似合いそうだよな。杏は…着こなせそう」
あの二人と並んだ時、目が行くのはたぶん杏。人を惹き付ける華があるから。
そして、蓮も言う通り、真と和装は絶対合う。
そんな中に私が混じっても霞んじゃいそう。
「ね?あの二人の方が素敵だと思うから」
「………………解ってないな、遊江は」
「何が?」
「ヒミツ」
呆れつつも楽しげに笑う蓮に、やっぱりハテナしか浮かばなかった。
「当日、実証すると思うから………心の準備しといて」
「え?どういう事?」
蓮の考えてる事は不思議すぎて解らない。
終始怪訝に蓮を見詰めていても、蓮は悪戯な笑みを浮かべるだけだった。
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