どうか私に、あきらめさせてください
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「ごめん、お待たせ」
「おぉ、来たな」
カフェのテラス席でふかしていた煙草を灰皿にギュッと押し付ける。待ち合わせていた彼は、女性に対して気遣いがそこそこできるキザな男だった。
「なまえ、今日メイク薄くねえ?」
「たかが錦山に会うだけなのに、気合い入れるわけないでしょ」
「お前ぐらいだよ、俺のことを”たかが”なんて言うヤツ」
「そうでしょうねぇ。で?今日は何の用?」
彼の向かいの席へ腰を下ろし、カフェラテを頼む。
ちょっぴり自信過剰なところも彼の特徴の一つで、長い付き合いとなった今ではそれをあしらう事にも慣れていた。
「ほら、くれてやるよ」
「なにこれ?」
ジャケットのポケットから小包を取り出して私の前にちょこんと置いた。
ブランド名が刻印された小さな箱を開けてみると、中から出てきたのはちょっとお高めの口紅。
しかも、プレゼントをしたい子がいるから女目線でアドバイスがほしいと言われて少し前に買い物に付き合った時に購入していたものだった。
「え、これ、この間買ってたやつ。女の子に突き返されたの?」
「バーカ、ちげぇよ。コレは最初からお前にやるはずだったんだっつーの」
「いや…ちょっと意味が解らなくて怖いんですけど」
私にコスメのプレゼントなんて、気でもふれたのかと思うぐらいびっくりしている。
「お前もさぁ、こういうの似合うぐらいイイ女になれよってことでよ。たまにはいいだろ?」
「いやあ、イイ女度は今でも充分じゃない?」
「ははっ、お前のそういうところ、嫌いじゃねーぞ」
真っ白な歯を見せてくしゃりと笑う彼を見て、泣きたい気持ちを抑えて笑う。
”嫌いじゃない”なら、好きと言ってほしかった。
私がこの人に愛されないのを知っているから、少しでもあなたからの”好き”がほしい。
友達として、好き。人として、好き。それだけで充分なはずなのに。
こんなことをされたら欲張りになってしまう。
「まあ、お前の事イイって言ってる奴は俺の周りにいっぱいいるから、今度紹介すんぞ」
「えー、お金持ち?イケメン?」
「お前いい加減そういうので男選ぶのやめろって…」
冗談を言い合いながら、ずっとこの時間が続けばいいと思った。
氷がとけて薄くなったカフェラテを一口飲む。そういえば、ガムシロップを入れるのを忘れたっけ。
彼への気持ちにふたをするのと同じように、もらった口紅の入った箱にふたをして、リボンを結びなおす。
きつく、きつく、ぜったいに、ほどけないように。
タイトル:確かに恋だったより拝借
「おぉ、来たな」
カフェのテラス席でふかしていた煙草を灰皿にギュッと押し付ける。待ち合わせていた彼は、女性に対して気遣いがそこそこできるキザな男だった。
「なまえ、今日メイク薄くねえ?」
「たかが錦山に会うだけなのに、気合い入れるわけないでしょ」
「お前ぐらいだよ、俺のことを”たかが”なんて言うヤツ」
「そうでしょうねぇ。で?今日は何の用?」
彼の向かいの席へ腰を下ろし、カフェラテを頼む。
ちょっぴり自信過剰なところも彼の特徴の一つで、長い付き合いとなった今ではそれをあしらう事にも慣れていた。
「ほら、くれてやるよ」
「なにこれ?」
ジャケットのポケットから小包を取り出して私の前にちょこんと置いた。
ブランド名が刻印された小さな箱を開けてみると、中から出てきたのはちょっとお高めの口紅。
しかも、プレゼントをしたい子がいるから女目線でアドバイスがほしいと言われて少し前に買い物に付き合った時に購入していたものだった。
「え、これ、この間買ってたやつ。女の子に突き返されたの?」
「バーカ、ちげぇよ。コレは最初からお前にやるはずだったんだっつーの」
「いや…ちょっと意味が解らなくて怖いんですけど」
私にコスメのプレゼントなんて、気でもふれたのかと思うぐらいびっくりしている。
「お前もさぁ、こういうの似合うぐらいイイ女になれよってことでよ。たまにはいいだろ?」
「いやあ、イイ女度は今でも充分じゃない?」
「ははっ、お前のそういうところ、嫌いじゃねーぞ」
真っ白な歯を見せてくしゃりと笑う彼を見て、泣きたい気持ちを抑えて笑う。
”嫌いじゃない”なら、好きと言ってほしかった。
私がこの人に愛されないのを知っているから、少しでもあなたからの”好き”がほしい。
友達として、好き。人として、好き。それだけで充分なはずなのに。
こんなことをされたら欲張りになってしまう。
「まあ、お前の事イイって言ってる奴は俺の周りにいっぱいいるから、今度紹介すんぞ」
「えー、お金持ち?イケメン?」
「お前いい加減そういうので男選ぶのやめろって…」
冗談を言い合いながら、ずっとこの時間が続けばいいと思った。
氷がとけて薄くなったカフェラテを一口飲む。そういえば、ガムシロップを入れるのを忘れたっけ。
彼への気持ちにふたをするのと同じように、もらった口紅の入った箱にふたをして、リボンを結びなおす。
きつく、きつく、ぜったいに、ほどけないように。
タイトル:確かに恋だったより拝借
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