軽蔑
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※浮気のお話です。ご注意ください。
運命の赤い糸なんてあるのかな。
あなたに抱かれる度にぼんやり思う。きっと普通の女の子はみんな、愛を囁かれながら好きな相手に抱かれてそれはそれは甘い夢を見ながらシーツの波間で踊るんだろう。
仮に赤い糸があったとして、どんなに手繰り寄せても今隣で眠るこの人と私がつながっているはずがなくて。この人と奥さんをつなぐ糸を今すぐ切り落として、私の糸と結びなおしたところでするするとほどけてしまうのだろう。
けれど私は、この人が好きで仕方ない。
ベッドから降りてカーテンを少しだけめくり窓の外を眺めれば、雨が降っているというのにこの街は明るい。散らばった洋服と彼の背中に棲む不動明王が暗い部屋に浮かび上がり、左手の薬指に鈍く光る指輪だけが私を見つめていた。
誰にでも分け隔てなく接してくれる彼の優しさが純粋に嬉しかったし、好きになった。
それがいつの間にか性行為を伴う愛情になってしまった。
彼には妻がいる。そんなこともうずっと前から理解はしているのに抱かれるのをやめたくなくて、彼も私を抱くのをやめてくれない日々がただ過ぎてゆく。
「……なまえ、どうした」
カーテンから差し込む明るさに目を覚ましたようで、私の背中に低く掠れた声が投げられる。
「…なんでも、ないです」
振り返らずにカーテンを閉めて、小さく返事をした。
「こっち、戻ってこい」
シーツが動く音がして“こっち”が彼の隣を指したことに気付く。それを断ることもできず、導かれるように彼の隣へと潜り込んだ。
「体、冷たくなってる。寒かっただろ」
「…少しだけ」
「そうか。起きたら一緒に風呂、入るか」
「……うん」
ベッドの中で私を抱きよせて髪を撫で、まだ少し眠そうな目で私を見つめている。
愛する人にも、この眼差しを向けているんだろうか。
こうして髪を優しく、撫でているんだろうか。
私が貰えないものを、与えているんだろうか。
そう考えるとすこし、胸が苦しくなる。
本気だなんて言えなくて。物わかりの良い女のフリをして、愛を貰っているずるい女。
きっとこの人の奥さんには地獄に落ちればいいのに、って思われているんだろうな。むしろ、地獄の果てまで追いかけてやるとすら思われてるかも知れない。私も、そう思っている。
髪を撫でていた大きな手が頬を滑り、唇まで降りてきて指先がかさついた私の唇をなぞる。
「…好き、です。堂島さん」
「あぁ。俺も、なまえが好きだ」
うそつき。
「…好き」
2回目に好きという言葉をつぶやいたときには彼の唇でふさがれてしまった。それ以上言わないように、という意味も込められているかもしれない。
今はこんな風にキスをして身体を重ねているけれど、いつか“さよなら”さえないまま、彼は消えてしまうんだろう。
それが今日か、明日か、明後日かもしれない。数か月後、数年後、数十年後かもわからない。
いつまで私は彼の傍にいるかもわからないけれど、それまで私は彼とこうしてシーツの上で踊り続ける。
ねえ、いま、あなたは私を抱きながら何を思っている?
運命の赤い糸なんてあるのかな。
あなたに抱かれる度にぼんやり思う。きっと普通の女の子はみんな、愛を囁かれながら好きな相手に抱かれてそれはそれは甘い夢を見ながらシーツの波間で踊るんだろう。
仮に赤い糸があったとして、どんなに手繰り寄せても今隣で眠るこの人と私がつながっているはずがなくて。この人と奥さんをつなぐ糸を今すぐ切り落として、私の糸と結びなおしたところでするするとほどけてしまうのだろう。
けれど私は、この人が好きで仕方ない。
ベッドから降りてカーテンを少しだけめくり窓の外を眺めれば、雨が降っているというのにこの街は明るい。散らばった洋服と彼の背中に棲む不動明王が暗い部屋に浮かび上がり、左手の薬指に鈍く光る指輪だけが私を見つめていた。
誰にでも分け隔てなく接してくれる彼の優しさが純粋に嬉しかったし、好きになった。
それがいつの間にか性行為を伴う愛情になってしまった。
彼には妻がいる。そんなこともうずっと前から理解はしているのに抱かれるのをやめたくなくて、彼も私を抱くのをやめてくれない日々がただ過ぎてゆく。
「……なまえ、どうした」
カーテンから差し込む明るさに目を覚ましたようで、私の背中に低く掠れた声が投げられる。
「…なんでも、ないです」
振り返らずにカーテンを閉めて、小さく返事をした。
「こっち、戻ってこい」
シーツが動く音がして“こっち”が彼の隣を指したことに気付く。それを断ることもできず、導かれるように彼の隣へと潜り込んだ。
「体、冷たくなってる。寒かっただろ」
「…少しだけ」
「そうか。起きたら一緒に風呂、入るか」
「……うん」
ベッドの中で私を抱きよせて髪を撫で、まだ少し眠そうな目で私を見つめている。
愛する人にも、この眼差しを向けているんだろうか。
こうして髪を優しく、撫でているんだろうか。
私が貰えないものを、与えているんだろうか。
そう考えるとすこし、胸が苦しくなる。
本気だなんて言えなくて。物わかりの良い女のフリをして、愛を貰っているずるい女。
きっとこの人の奥さんには地獄に落ちればいいのに、って思われているんだろうな。むしろ、地獄の果てまで追いかけてやるとすら思われてるかも知れない。私も、そう思っている。
髪を撫でていた大きな手が頬を滑り、唇まで降りてきて指先がかさついた私の唇をなぞる。
「…好き、です。堂島さん」
「あぁ。俺も、なまえが好きだ」
うそつき。
「…好き」
2回目に好きという言葉をつぶやいたときには彼の唇でふさがれてしまった。それ以上言わないように、という意味も込められているかもしれない。
今はこんな風にキスをして身体を重ねているけれど、いつか“さよなら”さえないまま、彼は消えてしまうんだろう。
それが今日か、明日か、明後日かもしれない。数か月後、数年後、数十年後かもわからない。
いつまで私は彼の傍にいるかもわからないけれど、それまで私は彼とこうしてシーツの上で踊り続ける。
ねえ、いま、あなたは私を抱きながら何を思っている?
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