コーヒーカップの底

ニンジャスレイヤー

2025/05/03 12:33
雑記
ニンジャ殺すべし

アイエー!!?ナンデ?ニンジャナンデ?!?!

とあまりにもユニークな言葉で有名なニンジャスレイヤーを読みました。
原作はTwitterで連載している小説なのだけど、私はコミック版を読みました。
それはもうものすごく軽い気持ちで。
ネットミームの原作を知りたいなーぐらいの、羽毛フートンぐらい軽い気持ちで。

めちゃくちゃ面白かった。本気で、めちゃくちゃ面白かった。

設定と、世界観と、語彙と言葉と発言がとんでもなく面白いだけで、内容は見事な復讐譚だった。


『ニンジャスレイヤー』という作品の特異性から説明しよう。
と思ったのだけど、公式からアナウンス記事が公開されているので是非読んで欲しい。
>>ニンジャスレイヤーとは?
https://diehardtales.com/n/nc13c0c39a52f

翻訳チームがブラッドレー・ボンドとフィリップ・N・モーゼズという二人の原作者から権利を取得し、日本展開を大々的に行っている。それはもう大々的に。
書籍からコミック、アニメ、オーディオドラマ、ゲームにTRPGなどなど幅広すぎて本当にドン引きである。

因みに小説はほとんどすべて公開されている。(書籍版書き下ろし限定を除く)
そのアーカイブ化もされていて、いつでも追える状態だった。
>>ニンジャスレイヤー3部作アーカイブ【総合目次】
https://diehardtales.com/n/neee793bfd909

新規にも手厚くて、有料記事も豊富。二次創作やファンフィクを大いに寛容、また推奨や応援までしているのはあまり見たことが無い。(Twitterタグリファレンスを読む限り、ネタバレも寛容しているのでネタバレ絶許勢ワイは軽い気持ちでタグを漁れない哀れな人間になっています。自衛は大事。こういう時私は自己防衛おじさんになる)

>>Twitterタグリファレンス
https://diehardtales.com/n/n557624ec1c30

>>二次創作ガイドライン
https://diehardtales.com/n/n27de4df65791


本当に手厚すぎて私が語ること少なくて、このままでは公式のリンクを記事に張り付けるだけのヤバいやつになりかねないので、ニンジャスレイヤーもといフジキド・ケンジの成り立ちと、第一部であるネオサイタマ炎上編についてほんの少しだけ、お話したい。
因みに私は角川発のコミック(全14巻)とアニメ作品のニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨンしか見ていません。その上で分かった事。面白かったこと。徒然と語りたい。

●読む前の偏見
ネット上で時折ネタにされ、ミーム化しているのを知っていたので、海外コミックのトンチキ☆ジャパンかな?
私海外の人が書くトンチキ☆ジャパン大好き!!多分原作は漫画でしょう!

●読んだ後の動揺
漫画読んでるけどこれどこからどう見ても日本産だよな……(台詞の枠で海外コミックと日本コミックの区別がつく)えっ、原作小説?えっ、しかもTwitterで連載している???
ちょっと待ってくれ、これめちゃくちゃ熱い漢の物語じゃねぇか。戦闘もかっこいいし、主人公が強くなっていく過程とかマジで少年漫画……
おいおい……なんだバイオスモトリって……なんだクローンヤクザって……粉末オオトロや、完全栄養食スシとか、発言が全部おもろすぎでこれはミーム化するし、ネットミームは全て正しかった……こんなにかっこよくて面白いのに、ちゃんとトンチキしてる……最高か……??


偏見から動揺に至るまでの過程が容易に想像つくだろうか。
因みに私がニンジャスレイヤーをちゃんと読み始めたのは4/29からで、つい先日に一部のコミックを全部読み終え、その勢いのまま二部のコミックを大人買いして今読み進めています。
言うなれば私はニンジャスレイヤーニュービー。
私はB級映画が好きで、海の向こうの人たちが生み出す意味不明な日本観が大好きだ。
B級映画というのは、往々にしてそうなる理由がある。特に予算が無かったり、脚本が雑だったり、演出がチープだったり。そういうのをすべて包括して私はB級が好きなのだけど、このニンジャスレイヤーはかなり違う。
設定や言葉の端々にトンチキが滲むけれど、ストーリとしては主人公フジキド・ケンジが理不尽にも妻子の命をニンジャや暗黒メガコーポに奪われ、それらの復讐を行うというリベンジ物だ。
私の脳がぐちゃぐちゃに狂って行くのを感じた。ニューロンがシナプスを上げながら焦げ付いていくのを感じた。
こんなにトンチキなのにめちゃくちゃ熱くて面白い。非道と人情に富み、怒りと感謝に燃える。こんなにもトンチキなのに。
大混乱である。こんなトンチキ作品が傑作であるわけがない。でも確かに面白いのだ。疑いようもなく面白すぎる。


●世界観について
ニンジャスレイヤーはサイバーパンクだ。

”◆舞台は電脳犯罪都市ネオサイタマ◆
極彩色のネオンと重金属酸性雨。過激なサイバネティクスと暴力。ディストピアを生きる人々の群像劇。そしてニンジャたちが潜む街。ネオサイタマこそはニンジャスレイヤーの物語の舞台であり、もう一つの主役だ”(前述、ニンジャスレイヤーとは?より引用)

一部の企業ソウカイ・シンジゲートや、ザイバツなど、ごく一部の企業こと暗黒メガコーポが利益の殆どを貪り、マッポ(警察)は企業と癒着。市民は企業所属である一部のカチグミとその他大勢泡沫のマケグミに分かれている。人は簡単に死ぬし、そこに倫理観はない。

ものすごく既視感がある。ものすごーく既視感がある。
サイバーパンク2077だ。あれも日本企業アラサカがナイトシティを牛耳っており、ギャングや悪が蔓延り、人は簡単に死ぬ。
私的SF概論でもサイバーパンクについてふわっと述べたと思う。
しかし今作で何となく日本人が思い描くサイバーパンクと、海外の人が思い描くサイバーパンクとでちょっとした違いが何となく分かってきた。
私的SF概論でちょこっと述べたが、サイバーパンクが台頭したのはインターネットが普及してきた90年代だ。その頃90年代は日本はバブル真っ盛りであり、日系企業が市場を席巻していた時代。
その頃を生きていた外国人からしたら、日系企業が世界征服をしていてもおかしくない。
映画界隈でも有名な「日本製品だ、壊れない」という台詞(や風潮)は90年代に生まれたものだ。日本にいたら気づかないかもしれないが、それぐらい日本製のモノは海の向こうで氾濫していた。

そこにある種のエキゾチックさとサイバーが組み合わされば、海外の想像するサイバーパンクが誕生するという訳だ。
日系暗黒メガコーポはサイバーパンクにとってマストだ。

巨悪と悪が蔓延る中に、一抹の善性と暴力でもって巨悪の鼻面をぶん殴りに行く。
面白くない訳が無い。
ニンジャスレイヤーはそこにニンジャが追加される。素晴らしすぎる。
ニンジャ名鑑が公式で公開されてたので、眺めたら400以上あって思わず鼻で笑ってしまった。
ナンデニンジャ!多すぎ!


●主人公について
主人公は普通のサラリマンであったフジキド・ケンジだ。
丸ノ内スゴイタカイビルにて行われたソウカイ・シンジゲートのニンジャ抗争に巻き込まれて妻子もろとも自身も理不尽にニンジャに命を奪われた。
そんな瀕死のフジキドにナラクニンジャというニンジャソウルが宿り、妻子を殺したすべてのニンジャを殺すことを誓うニンジャスレイヤーとなったのだ。

ニンジャについて少し説明しよう。
一般人にとってニンジャとは空想上の存在だ。一般的にはあり得ないものとして受け取られる。
そのため、実際にニンジャと出会ってしまうとその恐ろしさから失禁しつつ「ナンデ!ニンジャナンデ!」と叫ぶNRS(ニンジャリアリティショック)状態に陥るのだ。
これが有名なミーム元。

その実、ニンジャというのはある日突然覚醒する。
フジキドのように死にかけるというのが一種のトリガーのようだが、正確な事はあまり分からない。
江戸時代に亡くなったニンジャの魂が憑依することによって、ただの一般人だった人々がニンジャとなるのだ。
しかし大抵のニンジャになった人は強靭な肉体や精神力、強力なパワーや特殊なジツ(術)に溺れて悪徳に身を投じてしまう。
ソウカイ・シンジゲートなど企業お抱えのニンジャになったり、流れ者でも人間らしさを捨て悪徳の限りを尽くしていることが多い。
ニンジャスレイヤーの世界観では、実質ニンジャが裏を牛耳っているのだ。


●ニンジャスレイヤーで最も好きなところ
人間性だろう。これはニンジャアクションでありながら究極の人間讃歌ともいえる。
前述のとおり、悪徳に身を投じてしまうニンジャが大半だ。
その中、己の中の怒りを薪にし復讐のためニンジャを殺し続けるニンジャスレイヤー。そんな彼が歩む復讐の道のりは数多の人間が死んでいる。ニンジャ同士の戦いは壮絶で、巻き込まれて死ぬ人間は数え切れず、悪人もいれば無辜の人もいる。
復讐のオニでもあるニンジャスレイヤーは、血まみれの地獄への道を歩みながらもその道程で出会う僅かな善性に助けたり助けられたりしていた。
地獄の中でも失われぬ善性や人間らしさに、ものすごく心奪われてしまう。

トンチキばかりが有名になり(実際トンチキは事実だからしかたないのだが)こういった、熱いバトルモノであり人間讃歌であるところが薄まってしまっているのが非常に残念でならない。

最後に私の好きな台詞でもある、ソウカイ・シンジゲートの首領の言葉を引用しよう。
リベンジ系で最も語られ、最も議論の俎上にすら上らない取り留めない悪党のセリフだ。
この悪党のセリフこそが復讐者の怒りを、努力を、力を、精神力を、強情さを、愛を最も端的に示しているものだと私は信じて疑わない。悪党から語られる主人公像こそ最もそれを示しているのだ。

「望むもの全てくれてやる!あのコーカソイド女か!?ソウカイヤが望みか!?力か!?金か!?何かあれば その 復讐心を鎮められる!?何だ!!?」
(ニンジャスレイヤー14巻ネオサイタマ・イン・フレイム#9より)

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