コーヒーカップの底

私的SF概論

2024/06/12 12:25
雑記
サイバーパンク、スペースオペラ、ロボット、機械工学etc……限界まで突き詰めた現実的な近未来に、ほんの少しのミステリアス…………何がそこまで私を惹き付けるのか。
今月は(マジで何も)書くこともないので、私が考えるSFについて、当サイトで取り扱っているジャンルも交えて話して行けたらと思います。

※SFや後述するSOという概念の定義は諸説あります。本内容は用語の再定義をするものではありませんし、先人たちが繰り広げてきた論争に一石を投じるものでもありません。
ここは私一個人が考える、私一個人が好きなSFというものを発表する場です。


●はじめに
SFとは、サイエンスフィクション(Science Fiction)の略称である。直訳で架空の科学。かの漫画の不思議を科学的に考察している、空想科学読本とはまさにSFの事を指していたのだ。
恥ずかしながら私は幼少期の頃SFの事をスペースファンタジーの略称だと思っていました。
今調べたらあながち間違いでもなく、スターウォーズ登場時にそのような意味合いでSFが広まったとかそうでないとか。まぁ確かにサイエンスフィクションからすればライトセーバーならまだしも、宇宙人の存在や惑星間を縦横無尽に飛び回り交流することはあまりにもサイエンスから離れたファンタジー寄りの出来事だろう。
80年代にはスペースオペラ(Space Opera)と呼ばれていた存在が、近年になってSFという大枠の括りに入り、SFの中のイチジャンルとしてSOがカテゴライズされた。
近年の宇宙工学の発展が目覚ましく、現実とフィクションの壁が薄くなりつつあるから、SFの中にSOが組み込まれてしまうことも理解できる。

ここまでだらだらと述べてきたけれど要約すると、『SFとは宇宙に限った話ではない』ということだ。
上記のスターウォーズやE.T.など、有名なSO作品が大枠のSFとして紹介されるようになり、一躍SFの代名詞ともなった。しかしそのおかげでSF=宇宙みたいな紐付けがされてしまったのが、個人的にいただけない。


●SF(サイエンスフィクション)とは

前述の通り、SFとは空想科学である。別に宇宙に限った話ではない。
例えば映画化もした有名なホラーゲーム、バイオハザード。これはアンブレラ社が開発したウイルスによるゾンビ化であり、パニックホラーという大枠はあれど、SFのくくりでもあると私は思っている。
当サイトでも取り扱っているDetroit:Become Humanは、アンドロイドが全世界に普及し生活の一部となっている、まさにSFだ。
他にも仮面ライダー(バッタと人間の人造人間という科学的アプローチ)や、ゴジラ(放射性物質により突然変異を起こした怪物)もSFだと思っている。
要するに、科学的説明が出来るかどうかに、SFの肝があるのだと私は思っている。
これはフィクションであるので、現実性や再現性をここに持ち込むのはナンセンスだ。


●科学的説明の可否

“これはフィクションである”しかし“科学的説明を求めるものである”

この両者は矛盾するようでいて、両立する。
如何にそれっぽいことをそれらしく述べられるか。
ガンダムOOで例を上げたい。
OOでは、地上から大気圏へ伸びる宇宙軌道エレベーターが3基存在し、エネルギー問題が解決した近未来が舞台だ。
ありとあらゆる問題は解決したが、エネルギー問題が解決したことによる石油(化石燃料)の需要低下から産出国の国力低下や、宗教的争い、領土問題など争いは絶えず続いていた。
そんな中、武力による紛争解決を掲げたテロリスト集団が、ガンダムを率い各国に武力介入していく。というのが大まかなあらすじだ。
基本的にモビルスーツ(人形戦闘兵器)はガンダム以前に存在していたが、主人公らが操るガンダムには技術的に劣っていた。そのガンダムのエネルギー原とされているのが、GN粒子という未知の化合物だ。GN粒子を発生させるガンダムの太陽炉というシステムは、土星衛星軌道上の超高重力下において生成可能であり、大量生産は出来ない。

これらは全てフィクションだが、妙な説得力がある。
はじめに宇宙軌道エレベーターだが、これは既に2012年には建設会社が構想を打ち立てている。またこれはついさっき知ったのだけど、軌道エレベーター協会が存在し、毎年大会も催しているらしい。OOはフィクションであるが、軌道エレベーターは比較的現実に即した内容だ。
悲しいかな各地で起きている紛争もリアリティがあり、エネルギー問題解決による、石油の需要低下も現在進行系で起きている問題だ。環境面において再生可能エネルギーを使用していくという現実の動きは、石油で財を成した産油国からしたら痛手であり、実際問題にもなっている。

ガンダムOOという作品は、サイエンスフィクションのバランスが非常に巧妙で、放送から10年以上経った今でも私の感情を掴んで離さない。


●リアリティとフィクションのバランス

以前とある作家先生のあらすじで見かけた(気がする……インタビューだったかな?)ものだが、『大きな嘘(フィクション)は2つまでにしている』という発言があり、考えれば考えるほど的を得た発言だなと唸ってしまう。

先ほどのOOを引き合いに出すと
①軌道エレベーターの実現
②GN粒子の存在
が上げられる。
①については、現代において構想されている技術だ。それらを作品上で可能としているのが超軽量カーボンナノチューブの開発に成功したから。
その素材を利用し、モビルスーツが作成され、有り余るエネルギーで各種工業部門は発達した。
まぁ、要するに軌道エレベーターを実現できるほどの素材と技術力を手に入れたなら、モビルスーツぐらい作れてるでしょ?という話だ。
軌道エレベーターを実現したという嘘で、あの世界観の基盤は作られている。
②これが今作最大のフィクションだろう。工業が大きく発展している未来であるにもかかわらず、それを大きく凌駕するテクノロジー。それらを用いて主人公たちは世界を相手取って戦うことになる。
2つ目の嘘で物語に動きをつけた。

これが科学的説得力と、フィクションによるリアリティとファンタジーの融合だ。


●フィクションの存在意義

SFをSFたらしめる、なくてはならない存在だ。
科学に偏重するならばノンフィクションや科学雑誌でも読めばいいのだ。しかしSFは違う。
サイエンスとはフィクションにリアリティという質感を出すだけのレイヤーでしかない。しかしそのレイヤーの透過率の塩梅でSFの面白さは大きく変わってくる。
先述のOOでは、レイヤーの透過率は比較的濃いめ(リアリティがあるので、想像しやすい)。Detroit:Become Humanではやや薄め(変異化など一部において科学的根拠薄弱)。ツキウタ。の帝国設定などは非常に薄い(戦艦など現代的技術の延長線にありそうなものを使用してるが、心獣などファンタジー寄り)など、透過率の具合で旨味がだいぶ違う。
あえて言わせてもらおう。
全部違って全部旨い。最高だ。


●脇道、サイバーパンクについて。

SFは時折サイバーパンクとも呼ばれる。
ロボットやアンドロイド、インプラントや義体など、自立思考可能な完全人工物だけでなく、肉体改造を伴う機械化や、インターネットや電子領域の普及など、そういうものが普遍化した世界観をさっくりと大まかにサイバーパンクと呼ばれている。
90年代のインターネットの普及に伴って急速に発展した分野だろう。
基本的にパンクと名がつくものは大抵治安が悪い。最悪。体制側の権力が肥大化し、格差社会の中抗っていくというのが大まかな流れである。インターネットという未知の領域に踏み込んでいくというチャレンジャー精神と、悪で巨悪を討つピカレスクが根底にある。
こちらもサイエンスフィクションに該当する。
2月頃に書いた笑い男の記事でも紹介したけれど攻殻機動隊や、ゲームであるサイバーパンク2077もまさにタイトルどおりサイバーパンクな作品。
私の引き出しでは上記2作品しかパッと出てこないのだけど、他にあったら教えてほしい。見ます。
サイバーとアジアンのエキゾチックさの親和性が非常に高く、アジアンパンクとよく混同されがち(混同している)場合があるが、大抵は同一に近い。
中華の華やかな赤や、キャッチーな陰陽☯アイコンに、曼荼羅もまあまあ人気。また、サイバーパンクに欠かせないロボットやサイボーグなど、日本のネオン文化との噛み合わせが良く、アジア文化とサイバーのセット売りが人気だ。
TRPGにあるサタスペもアジアンパンクを唄っている。あれは、ネオオオサカが舞台だ。面白いね。


●ファンタジーとの差別化またスペースオペラとは

ツキプロ。の帝国設定はかなりファンタジー寄りだが、あれはファンタジーなのかと言われれば私はSFだと思う。
そもより、公式より名言されているスペースオペラが正しい。
宇宙から襲来する異星体を戦艦で撃退する。最高にカッコいい。イメージとしては宇宙戦艦ヤマトが近いのだろうか。個人的には蒼き鋼のアルペジオが一番近いと思っているのだけど、あまり伝わらないのが悲しみ。(心獣の設定的にも一番近いと思ってる)
主題の話に戻ると、ファンタジーとの差別化は出来ている。
魔法や不思議な力を扱い、謎の治癒力をもち、モンスターを倒す。我々の知っている現実と大きくかけ離れたものがファンタジーだろう。というのが、私の認識だ。
基本的にファンタジー作品で、宇宙進出はあまり聞かない。やはり宇宙空間は過酷だし、未知の領域だからだろうか。究極生物となったカーズも考えるのをやめてしまう程のものなのだから相当だ。(出典:ジョジョ2部)

宇宙進出こそ科学技術の粋であり、顔のようなもの。宇宙にて人類が活動する行為こそが、現代科学の遥か先の未来に立っているとするならば、人類が宇宙で繰り広げる物語は概ねSFと言って過言ではない。
では、人類はあまり関係ない、知らぬ惑星の知らぬ生命体の物語はどうだろうか。
一切人類が関わっていないという作品で、これと行った例を挙げることが難しいが、それはSFなのかファンタジーなのか。
否、それこそがスペースオペラなのだ。

未知の宇宙生命体の存在は、現在でも否定できない問題だ。
宇宙研究を専門としている研究者に『地球外生命体を信じるか』というアンケートをしたところ、信じるが上回ったという話を聞いたことがある。
科学や研究の分野では、否定できない事柄は存在すると仮定される性質も関係していると思われる。
これは私の持論であり極論だが、宇宙人の存在は科学的に存在すると仮定されているのならば、その延長線上はるか先は宇宙人と人類が仲良く宇宙海賊をしている未来もあり得ると考える。
ならば、スペースオペラは科学的説明の尺に当てはめるならば、SFと断ずる事が出来るだろう。

宇宙という空間は特別であり、ファンタジーとは一線を期す存在で、だからこそスペースオペラというジャンルが存在するのだろう。

余談。アークナイツは初めこそずいぶんと良く設定の練られたファンタジーだと思っていた。
ケモミミのキャラクターに、アーツとかいう魔法のような不思議な力。ここだけ聞けばただのファンタジーだ。
しかし、天災という災害がもたらす致死率100%の感染症に、差別感情による迫害。また、国同士の戦争や格差社会による貧困など、その世界で起きている問題はあまりにもリアリティに富んでいる。
そんな中、アークナイツをSFと定義づけたのは、外宇宙と先人類という存在だ。詳しくはやってほしいので話さないが、ちらちらと長い事仄めかされていた伏線がふわっと繋がった瞬間に溢れ出るアドレナリンは最高だったとだけ伝えたい。
アークナイツは重厚なSF。また、エンドフィールドやエクスアストリス(未プレイ)も楽しみだ。


●おわりに

私の好きなSFについて理解できただろうか。
この記事は私の好きな事を話しているだけなので、正確性は1ミリも無い上に精査もしていません。ほぼ主観のみで構成されているので、これを気に興味が出てきたという方はぜひSFというリアリティとフィクションの融合というハーモニーをぜひ味わってほしい。
ちょっと前にふわりと話に出したシグナーリスも、大変面白かったのでネタバレもりもりの記事をいつか書く予定。



今月は本当に書くネタが無かったので、なんだか変な記事になってしまったが、たまにはこんな趣味に極振りした長文もいいんじゃないかなって思う。
こんなのTwitterとかのSNSで書いたらドン引きだからね。こういう煮凝りみたいな文章は個人サイトでひっそりと書くに相応しい。たまにはね。

最後に引用させていただいた作品だけ紹介して終わろうと思う。

・『空想科学読本』(本)柳田理科雄
・『スター・ウォーズ』(映画)ジョージ・ルーカス
・『E.T.』(映画)スティーブン・スピルバーグ
・『バイオハザード』(ゲーム)カプコン
・『Detroit:Become Human』(ゲーム)クアンティック・ドリーム
・『仮面ライダー』(ドラマ)東映
・『ゴジラ』(映画)東宝
・『ガンダムOO』(アニメ)サンライズ
・『ツキウタ。』(音声ドラマ)ムービック
・『攻殻機動隊』(漫画)士郎正宗
・『サイバーパンク2077』(ゲーム)CD Projekt RED
・『アジアンパンクTRPGサタスペ』(本)冒険企画局
・『宇宙戦艦ヤマト』(アニメ)読売テレビ
・『蒼き鋼のアルペジオ』(漫画)Ark Performance
・『ジョジョの奇妙な冒険』(漫画)荒木飛呂彦
・『アークナイツ』(ゲーム)Hypergryph
・『アークナイツエンドフィールド』(ゲーム)Hypergryph
・『エクスアストリス』(ゲーム)Hypergryph
・『Signalis』(ゲーム)rose-engine

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