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Happy 6th Anniversary!

なんだかんだと予定が切り上がってまだ日の高いうちに帰れた日。片手にお土産を持って、そそくさと寮のエレベーターに乗りこんだ。いつもとは違う階数で降りて、誰もいないのを確認してから、俺はチャイムを押す。事前に連絡してるから、いるのは分かってるし、俺が行くのも分かってるはずだ。だから、ドアはすぐに開いた。
「空、いらっしゃい」
「お邪魔します!」
俺を迎えてくれた昂くんはワイシャツにグレーのパンツで、普段よりもかなりラフな格好だ。オフの日だった……というのもあると思うけど、今日は天気も良くて二月にしては暖かいから、それで少し薄着なんだと思う。うーん、爽やかだなぁ。
「隼さんにはお礼を言わないとだな」
昂くんに連れられて、キッチンまでやって来た。昂くんは食器棚からお皿を出しながら、小さく微笑んで言う。
「あ、そうだね!後で、写真撮ってメッセージ送ろ!」
そして思い出したように、持ってきた手土産を昂くんに渡した。これは今日たまたま事務所で出会った隼さんに、なぜかケーキを貰ったのが事の始まりだ。

今日の予定は事務所で軽い打ち合わせと、ついでにCDのサンプルを受け取りに行くって簡単な仕事。担当者さんがとても話しやすい人で、打ち合わせもすぐに終わってさぁ帰ろうかって時。よく見慣れた顔がパーテーションの上から覗いてきた。
「やぁ、空」
「隼さん!お疲れ様です!」
高身長はこれだからと、思う前に隼さんはにこりと目を細めた。その仕草が優雅で思わず見とれてしまって、ぽけーっと見とれている間にも隼さんは担当者さんと入れ替わるように区切られている打ち合わせスペースに入ってきた。そして俺にひとつの小箱を渡してきた。
それは俺も見慣れている、いわゆるケーキとか生ものが入っていそうな白い箱で、俺は訳も分からず受け取った。
「おめでとう、かな?これ、どうぞ」
「おめでとう?」
何の「おめでとう」だろう?それを受け取りながら聞き返しても、隼さんはにこにこと微笑んだまま何も返してくれない。その代わりに、その細い人差し指を口元に添えて内緒のポーズ。
「二つしかないから、昂輝と一緒に食べて」
そして俺が何かを言う前に手をひらひらと振ると、呆然としている俺を置いてどこかへ行ってしまった。

「それで、これを貰ったのか」
昂くんは箱の中からケーキを取り出して、出したばかりのお皿の上に載せた。色とりどりなフルーツタルトで、とても美味しそうだ。
「うん。おめでとうって……なんか、祝われるような記憶ある?」
昂くんは少し首を傾げて、そして小さく首を振った。
「いや、すぐには思いつかないな……」
「だよね」
「相変わらず、不思議なお人だ」
隼さんに関しては、あまり深く考えてはダメだと暗黙の了解みたいなのが事務所内で薄らとあって、今回もそれの類かなって思う。きっと、俺たちには見えない何かが見えていて、それがきっと祝うようななにかだったんだ。
「お礼のとき、なんのお祝いなのか聞いてみようか」
「そうだね!これだと、ただケーキ貰っただけだし」
昂くんがお茶用のお湯を沸かしている間に、トレイに載せたケーキをテーブルに運んでいく。フォークもだして、丁度良くカップが置かれた。
昂くんが俺の目の前に座って目が合うと、自然と笑顔がこぼれてくる。それに今日は、何だか分からないけどお祝いで、それを昂くんと一緒に祝えてるのがとても幸せに思えて。
「頂こうか」
「あっ、その前に写真!隼さんに送ろ!」
スマホを持って、昂くんの隣に座る。昂くんはケーキをもって、俺はインカメのフレームに入るように肩を寄せていく。
「いい?撮るよー?」
「ああ」
軽い音がして、シャッターを切った。
切り取られた手元には俺たち二人共笑っていて、胸の奥が暖かくなる。隼さんのサプライスは完全に成功だ。
「良くわからないが……来年も祝えたらいいな?」
俺の手元を覗いていた昂くんがそんなことを言い出して、口角が上がっていくのを感じる。
「うん!そうだね!」

来年も、再来年も!ずっと、一緒に!

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