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日常

怖い話?俺がそんなもの知ってるとでも?
下らないこと言う暇があるなら仕事をしたらどうなんだ。……今ので終わった?だったら俺の役目も終わりだろう、その辺の奴らに聞いて回ればいい。……話をすれば出陣に加える、と。はっ。そんな口車に乗ると思っているのか。軽く見られたもんだな。
しつこいぞ。他のやつに……ああ、鬱陶しい。分かった。話してやるよ。あんたが怖いかは知らんがな。





今まで、俺たちに疑問を感じたことはないか?……付喪がどうとかではない。格好だとかそういうのだ。例えば俺の着物だって、学ランとか言う奴なんだろう。……何だ。俺はこんな服知らなかったぞ。ここで知ったんだ。最初から着ていた?それはあんたのイメージの話だ。あんたがこの格好を意識していたから「大倶利伽羅」はこの見た目なんだ。

訳がわからないって顔だな。あんたの仕事の話から入るか。審神者というのは、俺たちモノに意識を芽生えさせ、兵にしているだろう。兵にするには身体がいる。刀がそのまま動いてはそれこそ怪異だからな。この身体というのが俺たちには厄介だが、いや、話がそれる。
……そうだな、あんた、俺たちの区別をどう付けている。刀身か、拵か。柄、鍔……だろうな、今話している、「俺たち」だろう。刀から意識を分けた肉体だ。これの差異の話だ。
なんの意味がある。兵として使うなら制服でも作って着させればいい。装いが違う必要もない。
違う刀だから違う格好は当然だと。個々に来歴があるのだから……なるほど。それはあんたたちの理屈だな。構わないが。

俺たちは刀だ。人に振るわれる。人の手を渡ってきた。人に知られなければ来歴など出来ない。人はあんただけだ。俺たちはヒトガタの何かだろう。人の歴史に、人でないものが殊更重要に出てくることがあるか。この一連の戦が歴史書に記されるとして、事細かに60以上の刀の紹介なんてするか?あんたの出自さえはっきりしていれば、俺たちヒトガタは軍勢の一員で片付けられる。審神者某に励起されし刀剣云々だ。十分だろう。
悲しい?歴史に残らずともここでの生活には?そうだ、そういうものだ。あんたたち人のそういう思考が、俺たちに反映されている。個の刀があるのなら個の性質があるべきだと。だからそれぞれに異なっている。

演練相手か。あれは向こうの審神者の意識だ。あんたにそこまでの力はない。
なら何故同じなのか、か。そりゃ同じものを意識したからだろう。
おい。俺たちが干渉するわけないだろう。あんたに呼ばれるまで意識なんてなかった……わけでは、ないが。大体、言っただろう。俺は、この服を知らなかったと。呼ばれる前に干渉できるなら、ここにいる刀はもっと違っていただろうな。もっと分かりやすく干渉できるところがあるだろう。
あんた、誰に言われて審神者をやっているんだ。

そういう話だ。これでいいだろう。部屋に戻る。……出陣?まあ、出ろと言うなら。いつだ。……ああ、分かった。





主、お茶を持ってきたよ。
今、伽羅ちゃんが嬉しそうに出ていったけど、出陣があるのかな?ああ、そうか。だったら見送りに行こうかな。
うん?どうしたんだい?僕たちが?……うん……へえ……はー!すごいね!彼にそんなに話させるなんて、君も信頼されてるんだね。
え、この話?そうだなあ、よくできた話だと思うけど。信じたのかい?まあ彼、こういうのをいやに真実そうに話すからねえ……。
ああでも、君の認識が重要って話なら嘘ではないかな。ほら、僕たちは呼ばれた存在だから。あんまりほっとかれると、存在が薄らぐんだよね。ほら、見て僕の手……
驚いた?ごめんね、僕も最近戦に出てなかったからいたずらしてみたかったんだ。伽羅ちゃんじゃなくても、やっぱり刀としてはね。側にいるのも役目だけど、戦場を駆けるために作られているから。戦以外のことも楽しいけど、せっかく戦えるなら、もっと……ってね。
え?僕も?なんだか悪いな……いや、ご指名なら頑張らせてもらうよ。ああ、でも、僕だけじゃなくて他の子達も……君には見せないようにしてるけど、結構退屈そうにしてるところ、見かけたから。
うん。君の手駒は物言えぬものではないからね。……ははっ、そうだね、自分で言えるんだよね。じゃあ、自慢してこようかな。
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