このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

いばらの冠






 カルロとジョゼフが並んで立っています。

 カルロはにこにことして首を傾げて腕を組んで。

 ジョゼフは曖昧な笑みに口元を緩めていくぶん申し訳なさそうに窺うような目つきをして。

 向かい合って立ってそれをじっと見ている3人。

 アンディ、ウォルター、シルヴィオ。

『・・・・・・』

 3人とも黙ってカルロとジョゼフを眺めています。

 やがてアンディが口を開きます。

「……ウォルター、もう1回台本を読んでみて」

 言われたウォルターが声を出して開かれた本を読み上げます。

「……『吸血樹の種は強く若く美しい人間の雄の死体を選んでそこに宿り』……」

 3人がもう一度カルロとジョゼフを見ます。

「……若い……?」

 ぽつりともらしたのは誰の声か。

「失礼な」

 カルロの笑顔が恐ろしげなものに変わります。

「まだ若いよ」

 ポリポリと頬をかいたジョゼフが言います。

「あー……これでもその……肉体年齢的なものは」

 ウォルターがぽんと手を打ちます。

 そしてニヤリと笑って言います。

「精神的なものか!」

 カルロの背後からどす黒いものが噴出します。

「……ウォルター?」

「あ、すいませんすいません、マジで!!」

 ビビッて謝りまくるウォルター。

 若い……精神的……精神年齢が低い。

 カルロが怒るのも当然です。

「何かの点でよほど優れていると認められたのでは?」

 そう言うのはシルヴィオです。

「よっぽど『強い』って思われたとか?」

 長兄の意見にアンディも賛成します。

 この場合、しっかり者の長男がシルヴィオ、うっかり者の次男ウォルター、ちゃっかり者の末っ子アンディというカンジで。

 ここで同意しておくとアンディの得です。

 ウォルターの意見よりはよっぽどシルヴィオのほうが。

 目を半眼に据えたウォルターがアンディを見ます。

 『コイツ俺を捨てやがったな』と。

 アンディは平然と知らん振りをします。

 周囲にお花を飛ばしながら微笑むカルロは言い放ちます。

「よほど『美しい』と思われたのかもしれないな」

 シーン。

 硬直して黙りこむ面々。

 静けさに満ちるその場。

「あれっ?」

 カルロが憮然として言います。

「冗談なんだが」

 とたんに『はっはっは』と笑いだすジョゼフ。

 同然に笑い声を上げながらもどこか嘘臭いウォルター。

 カチャリと眼鏡の位置を直すシルヴィオ。

 アンディは死んだ魚の目のままで、たらりと頬に冷や汗を流して。

 何か言いたげに、でも決して何も言わず。

 頬を膨らませて黙っていました。





(閉)
19/21ページ
スキ