バジル夢(マイ)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:原作通り。
主人公はスキャッグスの逆さ数字の女の子。
ちょっと頭がおかしいコです。
内容:バジル夢。多少グロい。苦手な方は避けてください。
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「バジル君! バジルくーん!!」
興奮した声が俺を呼ぶ。
……ああ、またか。
そう思って、うんざりとする。
女の中でも澄んだ高い……まぁ、きれいといっていいか……声のそれは、明るく脳天気で……まぁ、喜びにはずんでいるといえるが……一言でいえば。
「うるせぇ」
ボソリと吐く。
ぶんぶんと手を振って近付いてきていた相手が目の前に立つのを待って。
「えっ、ヒドい!!」
相手がピタと動きを止める。
ショックを受けたというように口元に手を当てて。
目をまんまるにして。
だが、それでいて、何故か顔は笑っている。
ニヤニヤ、ニヤニヤ。
嬉しくてたまらないというように。
……このヘンタイが。
俺は相手をジロジロと見る。
白い肌。
卵型の輪郭。
ふっくらした頬。
形のいい赤い小さな唇。
整えられた細い眉はきれいに緩やかな山を作っていて。
その下の少し吊り上がり気味のぱっちりとした大きな目は明るい茶色。
その目を縁取るまつげは長く。
まるで小鹿といったよう。
短いスカートから出た脚もすらっと長いので、動物にたとえろと言われたら、間違いなく小鹿だ。
アニメ調の絵が思い浮かぶ。
外見がたいそう可愛らしい。
美人だとは思う。
きれいだ。
とくに、本人も自慢にしている、長い明るい茶色のサラサラした髪などは。
……ただ、残念ながら、コイツは……。
長いまつげの上と下を合わせて何度もパチパチと瞬きをしている相手をにらみつけて言う。
もちろん、はっきりと、目でも口でも嫌そうに。
まず重たいため息を吐いてみせてから。
「なんだよ、マイ。キモい。ニヤつくな。ウザがられてんのがわかんねぇのか。ってか、休み時間ごとに来んな、キモい。キモいし、ウザい」
……よしっ、これくらい言えば大丈夫だろう。
マイはきょとんとしている。
……バカ。
ハッと笑う。
そして去ろうとした。
瞬きをやめてじーっと俺を見ていたマイが若干困った様子で口を開く。
「えーっとォ、バジルくゥーん……。あのねえ、わかって来てるんだよ、マイは」
「嫌がらせか!!」
バッと振り向いて目をつり上げて怒鳴る。
マイは平然として口をとがらせて返した。
「ぜーんぜん。そんなんじゃありませんよゥ。それっくらいバジル君に会いたいっていう、マイの熱い想いだよ」
「……」
……このバカ。
冗談じゃねぇ。
返す言葉が見つからない。
嫌がられていることがわかって来ている相手に嫌だから来るなと言ってもしょうがない。
……俺がバカみたいじゃねぇかっ……!!
イラッとくる。
まったく無駄なことをさせられた。
さて、これで駄目なら、次は何を言ってやろうか。
教室が違うってのに……。
いくらなんだって10分休みの度にわざわざ教室まで会いに来られたのでは迷惑なのだ。
今は昼休みだが。
俺が不機嫌なのは当然だが、同じように不機嫌そうに、目を逸らしてどこかをいまいましげににらみつけ、ぷくーっとリスのように頬をふくらませていたマイが、ツンと顔を上向けて、すねたように言った。
「マイはバジル君に会えないと禁断症状が出るんですゥーッ!!」
「あ?」
目をすがめて問う。
「……どんな症状だ、それは」
ぷんぷんといった様子で、口をへの字に曲げて、うるんだ目をしていたマイは、訊かれて困ったように眉を寄せた。
「えーとォ……」
首を傾げて黙り込む。
……バカだ。
こいつバカだ。
脱力。
付き合いきれねぇ。
「今考えてんじゃねぇよ……」
「違うもーんッ。そーゆーことにならないように毎回会いに来てるんじゃないですかッ。だから禁断症状出ないからわかんないんですゥーッ!!」
バタバタと両手を上下に振って口をとがらせて必死に主張する。
……いや、もう何も言うまい。
コイツがバカってのは変えられない事実だ。
+++++
それにしても、今日は頭のてっぺん近くで片方だけ一房の髪を白いポンポンつきのゴムで結んでいて、こどものようで、余計にバカっぽく見える。
マイが頭を振る度にそれがぴょこんぴょこんとする。
まだ一生懸命に話している。
「でも、きっと、すっごいズキュンとしてズガンとしてドキンとして心臓バクバク、顔は真っ青、汗たらたら、ドロドロ、ボロボロ、壊れちゃうんだと思うなッ!!」
「よし、そうなれ。もう来んな。二度と会わねえ。バカ」
「のおぉぉぉッ!!」
マイがジタバタとする。
どうでもいい。
ってか、ホントに、それを望むぞ。
……はぁ……。
疲れた。
肩を落としてやれやれとため息を吐く。
わめいていたマイがピタリと止まった。
「あ、そだそだ。忘れてたですよ」
振り回していた袋が同時に止まる。
マイが手に持っていた小さな紙バッグには気付いていた。
女物のブランドのアクセサリーとか入れるわりと小さめの袋だ。
女はこういうものを大事に取っておいて使うものらしい。
マイと一緒にいて知った。
ということは、当然、中に入っているのはアクセサリーではないだろう。
それはわかった。
「ハイ、バジル君、どーぞ!!」
「……」
……じゃあ、なんだろうか。
用心して、差し出されたそれを受け取らず、不信の目でマイを窺う。
……危険物か、いや相手が危険人物だから、この相手からもらうならなんだって危険か。
そんなことすら思ってしまう。
小首を傾げ、にっこにこ笑顔で、俺が受け取るのを待っているマイ。
「中身は?」
マイは嬉しそうに身をくねらせた。
「それは見てからのお楽しみだよォ」
……一番聞きたくない言葉だ。
恐ろしい。
こういう返しにはホントにイラッとくる。
「……いらねぇ」
ボソッと言うと、マイはしょんぼりとした。
それでもどこから湧き出る元気なのか、がばっと顔を上げ、キラキラした目で俺を見る。
……コイツはホントにめげないな。
「って、言うと思ったよ、バジル君なら!! あのね、これね、クッキー! 手作りだよ!!」
ガサと袋に手を突っ込んで、きれいにラッピングされた袋を取り出す。
派手なリボンつきの透明な小さい袋の中に、茶色いかたまりがいくつか。
……クッキー?
「いらねぇ」
ハッキリと言った。
キッパリと断った。
引っかかったのは『手作り』というところ。
「てめぇの作ったクッキーなんか食えるか」
毒入りを心配しているわけではなく、他人の作ったクッキーなど、汚くて食えるか。
マイは今度はすまし顔で平然と返した。
「食えるもんなくなりますよバジル君」
……それは、そうだが。
大抵は人の手作りだが。
っていうか、今コイツ、俺の心を読みやがった。
ムカつく。
ぐいぐいとクッキーを押し付けられる。
「いーじゃん、コンビニのお弁当だって他人が作ってるんだよー? 食べられるでしょー? これも食べて!!」
「あー……いや、マイ、てめぇが作ったって……」
「え?」
なんとかうまい断り文句を探しながら言うと、マイがきょとんとする。
「えー、なんのことォ?」
「は?」
唖然。
……どういうことだ。
なんで『なんのこと』なんだ。
「……てめぇ、マイ、『手作りだ』って……」
「ああ!」
マイがパッと明るい顔になる。
理解できたといったように。
にこにことして言う。
「『手作り』とは言ったけど、『あたしの』とは言ってないよォ、バジル君」
「……あ?」
眉をしかめ、目を細くして、首を突き出す。
間近でジロジロとマイの顔を見る。
『手作り』だけど『あたしの』じゃない?
「……」
不審なものを見る目でマイの手にある袋を見る。
確かに、売っている『手作りクッキー』もあるが、こんなふうにラッピングされているか?
俺の疑問がわかったようにマイが言う。
「これ、おいしいって評判のパン屋さんで買った『手作りクッキー』なの。それを自分でラッピングしたんだよ。可愛いでしょー?」
そして驚き呆れたことに続けて言った。
「バレなかったら自分で作ったことにしちゃおーと思って!!」
……言うか?
フツーそれを言うか?
そんな計画立ててたことを自らバラすか!?
「……だからてめぇはバカだっていうんだよ」
「えへへ」
ぶつぶつ言いながら受け取ると、嬉しそうに恥ずかしそうにマイが笑った。
しょうがない。
……食ってやるか。
(おしまい)
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あとがき・・・実は本当にマイの手作りだったり。