バジル夢(マイ)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:原作通り。
主人公はスキャッグスの逆さ数字の女の子。
ちょっと頭がおかしいコです。
内容:バジル夢。多少グロい。苦手な方は避けてください。
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学校の帰り道。
駅へと向かう途中にある商店街の入り口に、大きな笹が柱に縛りつけられて立っていた。
その横には木製の台があって、その上には細長く切られたカラフルな短冊と、いくつかのカラーペンと、それから紙を吊るすためのこよりが置いてある。
「あーッ、バジル君! 笹だよ、笹!! 短冊あるよ!!」
あたしが立ち止まって指を差してバジル君に言うと、一緒に止まったバジル君は露骨に嫌そうに顔をしかめた。
袖を引っ張るあたしの手を振りほどいて。
「うるせぇなぁ、マイ。見りゃわかる。あと、汚い手で俺に触るな」
……ムゥ。
いつもの通りのバジル君だ。
でふぉですよ。
いいよ、負けないもんねッ。
これくらい冷たくされた程度じゃあたしはめげません。
「ねェー、なんか願い事書こうよ、バジル君」
バジル君が口の片方の端を持ち上げて『ハッ』とせせら笑う。
まるで憐れむみたいにあたしを妙に細めた目で見下ろして。
つまらなそうに言う。
「バカか。くだらねぇ。こんなガキくせぇこと誰がするか」
……ぬー。
あたしが幼稚だって言いたいわけですな。
あえて言わせてもらえば、その通りですが、何か?
……。
まァ、『くだらない』とは、あたしも思うけどォー。
ってかどうでもいいし!
七夕に願い事書いて笹に吊るして叶うとかそーゆーの。
(笑)ですよ。
意味なあああいッ!
けど、そーゆーのにかこつけて、楽しむことはOKなのですよ。
あたし的には。
こどもなんだからいーじゃん。
ってか、おとなだっていーじゃん。
あたしは不満げにプッと頬をふくらませて唇をとがらせる。
「ツマンナイの! バジル君はァ、損をしてるよ。だってみんなわかってて楽しんでるのに。こーゆーのはァ、やるものですよ。参加して楽しむものなんですゥ。『踊るアホゥ』的なものですよ! 一緒に踊ろうよ!!」
「踊りもしねぇし、見もしねえ。俺には関係ねぇよ、阿呆。勝手に踊ってろ。マイ。ひとりでな」
「ブーッ!! この場合ひとりはバジル君のほうですゥー。ほら、みんな書いてんじゃん!!」
『こんなにいっぱい』と両手を広げて笹とそれに吊るされた紙を示す。
少なくとも参加すればマイはひとりじゃありまっせーん。
ふざけて言うと、バジル君が顔を歪めて吐き捨てた。
「死ぬか?」
わお、直球。
ってか、早急。
いきなりですよ。
「なんでそうなんの? ねェねェ」
「ムカついたから」
バジル君はあっさりとそう言い放つ。
「そういうのよくないと思うなァ」
いや別に、道徳的にとかじゃなくて。
その面じゃあたしも他人のこと言えないし。
じゃなくて、めんどいからとか、あたしの思いやりをぶっちぎるようなー……。
だから、なの、でしょーが。
って、わかってるから、言わないけどォ。
だってバジル君だもんね。
だから別の方面からのアプローチを試みる。
「叶えたい願い事の話とかして楽しもうよォ」
ピクリ、と、バジル君の眉が動く。
スッとひそめられ、次にはわずかに上げられた。
興味を持ったみたいだゾッ☆
あたしは澄ましてバジル君の言葉を待つ。
バジル君はあざけりの笑みを浮かべて言った。
「……どうせ、てめぇは、頭が良くなりますように、とかだろ? マイ」
「ひどおおおいッ!!」
ヨシッ!!
乗ってくれた!!
わーい、嬉しいなーッ!!
もちろん怒ってるのはフリですよ。
バジル君が相手をしてくれるのが嬉しいの。
あたしの非難の声にうるさそうにしかめっ面をしてバジル君が言う。
「訊くまでもねぇじゃねぇか。何を楽しめって言うんだよ。わかりきったことだろ。ってか、書け。それを書いてその笹に吊るしてみんなに見られとけ。笑われるだろうけどな」
「ムーッ。嫌ですゥ。ってか、ムリだし!」
頭良くなるのムリですから。
必要性もカンジないしィ。
すねたように言うと、バジル君が笑ってくれる。
なんだか少しだけ、いつもより柔らかく、素直に楽しそうなカンジで、明るくニヤついて。
「俺が書いといてやるか? マイのバカが治りますように、ってな」
「もーッ、バジル君、意地悪!!」
ぷんすか、ぷんぷん。
ついでにすんすん。
ひどおおおい。
「マイのことはいいんですッ」
ツンとして言う。
放っといてよ。
それより……。
+++++
「ねェ、バジル君のお願い事、教えてよ」
さっき嫌がられたから、袖をぐいぐいしたいところを我慢して、下から顔を覗き込むようにして言う。
バジル君がスッと顔を横に向け、目を泳がせた。
「……そんなもの、訊いてどうする?」
「全力で叶うようお手伝いしますよ?」
「……それ、コレに書く意味ねぇだろーが」
バジル君が心底呆れたといったようにがっくりとしてため息を吐く。
あたしは人差し指を口に当て、『うーん』とうなって、こくんとうなずいた。
「うん、ないよ。ない。そういう意味じゃね。でも、あたしバジル君の叶えたい願い事知ったら、ホントに全力で手伝うよ! だから教えてよ。コレに書かなくてもいーからさァ」
「だから……」
苦く言いかけてやめて、黙って唇を噛み締めていたバジル君が、それをほどいて、もう一度今度は軽く息を吐いた。
そして笹の横の台のほうに移動する。
そうしながら言った。
「俺の本当の願い事はもう叶わねぇんだよ……」
いくつかの色も豊富な短冊の中から真っ白い紙を取る。
「まぁ、新しい願い事があるけどな。そんなものは自分で叶えてやる」
挑戦的に空をにらみつける目の輝き。
おおう、バジル君、カッコイイ……!!
見惚れてしまう。
「これに書く必要はない」
きっぱりと言って、黒いペンを手に取って、キュッとキャップを外す。
「だが、まあ……せっかくだからなぁ」
そして、バジル君の後にくっついて移動して隣を確保していたあたしを振り向いて、明らかに冗談を言うふうに軽く言った。
「そうだな。この世からGがいなくなりますように、とかか?」
「は?」
あたしは驚きに目を見開いた。
「……バジル君、そういう冗談言うんだ!?」
「……いや……、マイ」
それまでニヤついていたバジル君は、急に真顔になり、真剣に言った。
「俺は本気だ」
……ああ……。
バジル君、黒くて素早いアレ、苦手だもんね。
……って、ごまかされませんよ!!
「えーッ、えーッ、ホントのお願い事はァ? ってか、また1年あたしと一緒にいられますように、とかないんですか!?」
短冊を前に、下を向いて、ペンを握ったままで、真剣な顔をして考えこんでいたバジル君が、顔を上げてチラッとあたしを見る。
「……どうせ、マイはバカだから、お守りが必要だろ? そんなことわざわざ書かなくても、どうせそうなるだろ」
ぶっきらぼうに言ってぷいっとそっぽを向く。
「……」
え……。
ええっとォ……。
うあ、ちょっ……!!
バジル君、耳が赤いよ。
あたしだって顔が熱いよ!
たぶんこれは真っ赤ですよ!!
「バッ……バババッ、バジル君!!」
思わず大声で名前を呼ぶと、『あー、うるせぇ!!』と怒鳴られる。
「てめぇも何か書くんだろ、マイ!! 早くしろ。置いてくぞ」
きょとん。
あたしはパチパチと瞬き。
……あれェ?
「あたしは書かないよ」
「あ?」
今度はバジル君がきょとん。
あたしはにーっこりと笑った。
だってさ。
「バジル君の願い事があたしの願い事だもん。だから、バジル君が書いたら、あたしも一緒に名前書くの。ねッ、ふたりでひとつの願い事のほうが、叶いそうな気がするでしょ?」
「……」
ポカンとしていたバジル君がゆっくりと動き出す。
開いていた口を閉じて、ぎこちなくうつむいて。
そしてゆっくりとペンを動かして……。
「……フン。こんな面倒なもの、来年は書く必要がないようにな」
キャップをしめないままで、コトン、とペンを置く。
短冊を覗き込んでまたあたしの顔は……いや今度は全身が……カッと熱くなった。
もちろん、あたしはバジル君の名前の下に、喜んで自分の名前を書きました。
『これからもずっと一緒にいられますように。バジル マイ』
(おしまい)
オマケ。
+++++
バジル君がムスッとして言う。
「それだけだからな! 勘違いするなよ!」
「わかってるよゥ」
あたしはこくこくとうなずいてみせる。
でも自然と顔がニヤけてしまう。
……えへへェ。
(ホントにおしまい)