バジル夢(マイ)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:原作通り。
主人公はスキャッグスの逆さ数字の女の子。
ちょっと頭がおかしいコです。
内容:バジル夢。多少グロい。苦手な方は避けてください。
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*『ディリディリディリディリ 殺されにおいで
お前のお腹に詰め物をして
お客のお腹に詰め込まなくちゃ……』
あたしは鋭い視線を感じてぶつぶつとマザー・グースを口ずさむのをやめた。
殺気のようなものまで空気にこもってる。
その視線の意味は『うるせぇ、声を出すな、気付かれるだろ』ってとこですか。
……ぶーっ。
だってヒマなんだもん。
もうずっと壁に背中をくっつけた状態で地面にしゃがみこんで、壁の途切れた向こうを首をのばして窺っている。
退屈すぎる。
注意されたばっかでしゃべるわけにもいかないから、こっちを見ているだろう相手に唇だけとがらせて不満を表してみる。
視線の相手は離れてるから、聞こえるように話すとかなりの大声になっちゃうしィ。
そっちを振り向くわけにもいかないし。
正確には目の前の道から目を逸らすわけにいかないってことだけど。
あたしの耳に微かなため息が返ってくるのが聞こえた。
たぶん、きっと、相手は両手を広げて肩をすくめているか、腰に手を当てて首を傾げているかのどっちか。
それであたしの耳に届いたのは微かにだけど、実際は盛大なため息。
『やれやれだ』ってカンジの。
もともと困ったような垂れ眉をさらに下げて口元には皮肉げな笑みを浮かべてるのは見なくてもわかるような気がするんですが。
……バジル君のが目立つと思うけどなァ。
あたしは『やるべきこと』程度でなんの感情も抱いてないから、気配がないっていうか空気っていうか、気取られないで済みそうだけど。
バジル君そんなにイライラして殺気むき出しにしてたらすぐにバレちゃうよ?
離れてる分マシだけどォ。
まァ、そりゃしゃべってたら隠れてるも何もないもんだけど、その時が来たらあたしはちゃんと黙るし。
標的にバレたくないんだよね。
今のうちに何か言おうかなと思って口を開きかけた時、ザッと落ち葉を踏みしめる足音がした。
固い革靴に踏み散らされているだろう木の葉の音が木々に囲まれた狭い小道に響く。
……来た、来た。
標的確認。
あたしは首をひっこめる。
地面がコンクリートなどで覆われてなくて、土と積もった木の葉だけで、靴音はしない。
そのかわり、ザッ、ザッ、と踏まれた枯れ葉が音を立てている。
音はだんだんと近付いてくる。
あたしは足元の土から出た武器を握る手の能力を発動させてそれを熱した。
ところどころに小さな丸い鉄球……針を出している今は丸まったハリネズミが何匹もくっついているように見える……長い鉄の鞭のような武器を地面にひそませてある。
……うまく踏んでくれるといいんだけど。
踏まなかったらそれはそれで武器を地中から引き抜いて足を絡め取っちゃうつもりだけど。
踏んでくれたほうが楽。
ザッ、ザッと大股で歩いてきた人物があたしの隠れている建物の前を通りがかった時、突然しびれたように棒立ちになり、それから急に倒れて片足を抱えて地面に転がった。
『うわあああっ』なんてみっともない声を出して。
……やった!
あたしはニンマリとする。
大成功!!
スキャッグスNO.***『無数針毛虫(ファイアー・キャタピラー)』。
この武器は太い針の先を刺激するとまた小さな針が飛び出すようになっているのだ。
男は地面に隠していたそれをうっかり踏みつけてしまったに違いない。
足の裏には細かい針がいっぱい刺さっているハズ。
でもそれだけじゃあない。
その針はあたしの逆さ数字の能力『灼熱の掌(バーニング・パルム)』で熱せられている。
周りの木の葉を燃やさないようにほどほどにだけど。
でもきっと火傷くらいしたはずだよ。
とうてい歩けなくて逃げられないだろうけど、うまく獲物をとらえた興奮もあって、あたしは急いで武器を地中から引き抜き、倒れた男に近付いた。
スーツ姿の若い男……とあるマフィアの下っ端……のもとに。
「ヒッ……」
角から出てきたあたしを見て男が悲鳴を上げる。
ムッ。
……失礼だなァ。
あたしこんなに可愛い女の子だよ?
長い髪の毛もツヤツヤで、白いワンピも似合ってるし、なにより若いし!
もちろん顔にも自信アリ!!
目だってパッチリだし、まぶたも二重だし、お鼻だって高いし、唇だって……。
あひる口だってできちゃうんだゾー☆
ソバカスなんて気にしません。
ウソ。
ちょっとは気になるけど……。
それも含めてとにかくマイは可愛いっ!
それを、まるでオバケでも見たみたいに、『ヒッ』とか。
「ありえなあああいっ!!」
あたしは思いっ切り顔を歪めて吐き捨てる。
足を押さえてうめいていた男がビクッとしてあたしを見上げる。
視線はまるで問うようにあたしの持っている武器に移って。
あーそっかァ。
あたしはニコッと笑って首を傾げた。
男の前にしゃがみこんで。
ニコニコと笑って話す。
「ねェ、オジサァーン……。あたし、マイ。マイっていうの。よろしくね? それでもって、アンタの気にしてるコッチがァ……」
ぶんと武器を振るった。
男の体に巻きつけるように。
針のついた鉄球に囲まれた男がまた『ヒイイイィッ……』と情けない声を出す。
「これがスキャッグスNO.***『無数針毛虫(ファイアー・キャタピラー)』だよッ!』
「スキャッグス……!?」
苦痛に細められていた男の目がカッと見開かれる。
驚きに満ちて。
ああ、すっごく気持ちいいなァ。
その反応。
ちょっとスッとしたけど、少し考えるとどうしようもなくムカムカしてきた。
ツンと顔を上向けて、男を見下ろす。
自分でもびっくりの冷たい声が出た。
「そォー。スキャッグス。オジサンたちさァ、ダメだよ? スキャッグスの元縄張りで、麻薬売るなんて汚いことしちゃあ。バレないだろうと思ったんだろうけど……それとも、バレても平気だとでも思った? あ、バレるハズないと思ったのか。『スキャッグス』はもう存在しないと思ってたんだよねー?」
苛立ちのままに武器を持つ手を動かした。
針の出た鉄球が男の体にぶつかり小さい針が飛び出して男の皮膚に刺さる。
今度は容赦なしの高温で。
男が『ぐあぁっ』と声を上げる。
じゅっ……と肉の焼ける臭いがして。
「ざーんねーんでした! この通り存在してるんです。それでね、目障りなんだって、アンタたちのことが。なに勝手なことしてんのってハナシ。いーい気になっちゃってさァ。自分たちが勝ったとでも思ってるゥ? なんにもしてないくせに。そういうの嫌なんだよね。弱いものをさらに弱らせておいしい思いをしようとかってさァ……チョー小者じゃん! うちのボスはァ……」
「マイ。しゃべりすぎだ」
「あ」
遮る声にそっちを振り向く。
真っ白いスーツに身を包んだ少年……バジル君だ。
いつのまにか近付いてきてそこに立っていた。
隠れていた場所から出て、マイのそばに。
怖い顔をしてあたしを見下ろしている。
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*『』内
参照・『マザー・グース(1~4)/訳:谷川俊太郎/絵:和田誠/監修:平野敬一/発行:講談社』
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「ペラペラしゃべってんじゃねぇよ。そいつに聞かせる必要はない。とっとと用を済ませろ」
あたしはつまらなく思って口をとがらす。
「あたしの仕事なんだからいーじゃん、好きにさせてよ」
バジル君が『ハァ』とため息を吐く。
一応武器を持っているけど、まとめて肩にかけてるから、使う気はないらしい。
それをわかってるけど、一応。
「邪魔する気ならバジル君でも容赦しないよォ?」
まさかバジル君がこの男を助けるとは思ってないけど。
おしゃべりする時間くらいくれたっていいじゃん。
あたしヒマなんだもん。
「やってみろよ」
ハッと小さく肩を揺すってバジル君が笑った。
嘲笑。
そう言いながら武器も取らずに。
「……」
……ムゥ。
あたし本気なんだけどなッ。
ホント相手にしてくんないよね。
下からバジル君を涙目でにらみ上げる。
ぷぅっと頬をふくらませて。
プンプンだ。
バジル君はあたしの武器に欠点があるって言ってる。
それはその通りだし、あたしも認めるけど、強さで補えると思うんだけどなァ。
戦いが長引けば確かに困るけど、速攻でやっつけちゃえばいいんだしィ。
それだけの能力があると思ってるわけですよ。
でもバジル君はその能力でも問題があると思ってる。
つまりあたしは失敗作。
欠陥品。
でもね、それだけだとしたら、あたしは今こうして生きてないわけでェ……。
利用価値はちゃんとあるんですよ。
それをこうしてバジル君に認めてもらえてないのはやっぱり悲しいな。
誰より一番認めてほしい人だもん。
バジル君にあたしの価値を見せようか?
そう思った時、バジル君がスゥ……ッと目を閉じた。
「マイ、仕事の内容、覚えてるのか?」
「うえぇ、ええ~っとォ……」
突然言われてビクッとする。
忘れてないけど、覚えてることが多すぎて、急にそう言われても出てこない。
人差し指を唇に当てて小首を傾げて空を見上げて考える。
んー……。
ああ、そだそだ、思い出した。
そんなことよりマイは今バジル君をどう戦うかに興味あるんだけどなァ。
表には出さずに、ふざけて自分のおでこをぺシッと叩いて、ニコッと笑ってみせる。
「えーと……大丈夫、ちゃんと覚えてるよ?」
「それでもこいつに教えてやる意味はあるのか?」
鼻の頭にしわを寄せた険しい顔つきで片方の唇の端をつりあげて笑うバジル君。
わお、ワイルド。
カッコイイッ!
「ん~っとッ……」
あ、おっしゃる通りですね、ハイ。
どうせ殺しちゃうんだからッ、まったくの無駄ですネッ!
でも、『冥土の土産』って言葉もあるくらいだし、聞かせたげたって別にいいじゃんねェ。
なんで殺されるのかわからないとこのオジサンも可哀想だし。
それにそれなら余計にそんなおしゃべりしたって大丈夫ってことになるじゃん。
ぶー。
バジル君は不貞腐れてるあたしに構わずに、足元の男をゴミを見るような目で眺めて、吐き捨てるように言った。
「いいか、マイ。手早く済ませろ。こんなことにいつまでも付き合わせるな。俺はおまえほど暇じゃない」
「ハイハイ。わっかりましたよっと……」
ふむ、まァ、仕方ないか。
バジル君はあたしが仕事をきちんとできるかどうかの確認のためにいるんだし。
つまらないだろうからって思ってあげるあたしってやーさーしー。
実にバジル君思いですよ。
笑顔を作って見上げると、バジル君は嫌そうに顔を背けて離れていくけど、まァこれからのこと見たくもないだろうし、仕方のないことだから我慢する。
バジル君は汚いの嫌だもんね。
あたしはバジル君に向けていた笑顔を目の前に倒れているオジサンに向けた。
黒スーツのオジサンがビクッとする。
……陸に上げられた魚が跳ね上がるみたいに。
ちょっと可笑しくて本気で笑えた。
ずっと武器を握ってたからいい加減手が疲れた。
でも握り直す。
さっき男に刺さった時に針の何本かが抜けてしまった。
針は男に刺さったまま。
能力を使っていたので男の傷口は黒くなって辺りに嫌な臭いが漂っている。
いったん倒れた男の体の下から武器を引き抜いて……男が『ぐあっ……』とかわめいてうるさい……立ち上がって男の上にかざすようにする。
また能力を使って武器を熱くして。
何をする気かわかるよね。
でも、あたしの武器じゃなかなか致命的な傷は負わせられないから、場合によっては苦しみが長引くことになる。
その気になればできるけど。
早くおしゃべりしてくれればそれだけ早く楽になれるってこと。
けど、バジル君がせっかく男の前で『殺す』って決定的なこと言わないでぼかしてたのは、男に希望を持たせて吐かせようってところかな。
性格悪いなァ。
でもせっかくだから。
顔を引きつらせて後退りするオジサンにあたしはとっておきの笑顔を見せた。
可愛らしく首を傾げて。
「ねぇ、オジサンたち一家の、アジトってどこ?」
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やったッ!
やりましたッ!!
なかなかしゃべらなくてイライラしたけど。
なんかボスへの忠誠心だとか一家の誇りがどうたらとか、ウザいことばっか言ってたけど。
最終的にはしゃべってくれました。
しゃべる前に死ぬんじゃないかって思ったけど。
体中が針だらけになっちゃってて。
でも『もう他の仲間に訊くからアンタはいいよ』って言ったら答えてくれた。
「バジル君、バジル君ッ! 訊き出せたよ!! 褒めて褒めてッ」
あたしは嬉しくて駆け寄る。
少し離れたところに立っていたバジル君は嫌そうに顔を歪めた。
そして片手を出してあたしを遮る。
「来るな。汚ねぇ。マイ、まずその泥だらけの武器をなんとかしろ」
おっと。
きょとんとしてあたしは手に持っていた武器を眺める。
標的をつかまえるために地中にもぐらせていたせいで少し汚れている。
何度も振るったので、泥はほとんど取れているけど、かわりに男の血が……。
……ムッ。
あのオジサン……バジル君を待たせて、あたしの武器を汚すとか、ホントムカつくなァ。
針をしまって素早くまとめて側に放ってあったカバンの中にしまいこむ。
そしてパンパンと手を叩き合わせて手の汚れを落として改めてバジル君に近付いた。
「バジル君、やったよ、あたしッ!」
「ああ、わかった。よくやった、マイ。触るなよ」
抱きつこうとした直前で止められる。
手はたいたのにダメですか。
しょんぼり……。
バジル君の前で悄然として立ち尽くすあたしの頭に大きな手のひらが乗った。
ぽん、ぽんっと、軽く頭を叩くようにしてから、それがやさしく左右に動かされる。
心地よい重さと感触。
あたしの後ろから。
あたしは驚いて勢いよく振り向く。
そこに立っていたのは……。
「ダリオさんっ!」
「よくやったね、マイちゃん。偉いよ。頑張ったね」
ダリオさんがニコニコと笑ってそこにいる。
あたしの頭を撫でたのはダリオさん。
あうう、バジル君がよかったよ、あたし。
って、それはともかく。
褒められてるけど、それもともかく。
「いつからいたんですか、ダリオさん……」
「相変わらずマイちゃんはバジル君しか目に入ってないね」
あたしの頭から手を退けて、『ちょっと前からいたよ』と言って少し困ったように首を傾げて、向かいのバジル君を指差す。
「撫でるのも、バジル君のほうがよかった?」
うああ、何故そんな、心を読むんですかッ。
「乙女の心の中を当てちゃいけませんッ!」
ぷぷんっ。
ダリオさんが楽しそうに『あっはは』と声を上げて笑う。
バジル君は眉を下げて困惑げにしている。
この状況にどうしたらいいか悩んでる。
去りたいけどそういうわけにもいかないってふうに。
バジル君、ダリオさん苦手だよね。
あたしも別に得意じゃないけどォ。
そのバジル君を示していた指があたしの頭上に移動する。
「バジル君、ほら、君撫でてあげたら?」
やったーッ!
ダリオさんいいこと言う!!
大好きッ!!
あたしは期待を込めてサッと振り向いてバジル君をギラッギラ輝く目で見る。
胸の前で両手を合わせて祈るようにして。
よだれを垂らして。
バジル君があたしを汚いものを見る目で見てぼそっと言った。
「汚ねぇ」
「ひどおおおいッ!!」
本当に汚いと思ってた!!
だろうけど、あんまりだよ。
人が一仕事終えて戻ってきたのにソレですか。
「あたしバジル君のために早くしようと頑張ったのにィッ!!」
嫌そうに目をすがめたバジル君が、それでも『フン』と鼻で笑って、皮肉げに口元を歪めて言う。
「埃まみれじゃねぇか。洗ってこい。風呂に入れ。それからなら……撫でてやる」
「ホント? ホントにホントッ?」
わんっ!
たぶん見る人が見たらあたしのお尻には尻尾が見えると思う……。
激しくぶんぶんと振られている尻尾が。
だって、大好きな人に、撫でてもらえるってわかったんだもん。
目、キラキラしちゃうよ。
うるうるだよ。
なんかホントに気持ち悪いものでも見るみたいなバジル君の視線が痛いけどー。
だってだって、嬉しいんだもん。
頑張った甲斐がありましたとも。
「よかったね、マイちゃん」
ダリオさんが横からあたしの髪をくしゃとしてくれる。
「待ち伏せならバジル君のほうが向いてると思ったんだけどねぇ」
「嫌だ、汚れる、汚い」
すねたみたいな口調のバジル君にそれでもダリオさんは変わらずまるで上機嫌で『ははっ』と笑って離れて行く。
『ちゃんと報告するんだよ』と言って。
『俺は用事があるから』って。
どーっでもいい。
キョーミない。
あたしはまたバジル君を見つめた。
「ねえねえ、バジル君ッ」
「なんだ、マイ」
うざったそうにしながら、それでもちゃんと返してくれる。
あたしは思わずふふっと笑った。
怪訝そうにしているバジル君の顔を覗き込むようにして言う。
「あたしね、バジル君のためなら、いくら汚れたって平気だよッ!」
「……なんだそれは」
不愉快そうに眉をひそめるバジル君に、わかっていてくれていることを願いながら、さっさと歩き出す。
……あなたのためなら。
この身が汚れることなどなんとも思わないから。
傍にいられるなら、それがどんな理由だろうと、あたしはそれでいいんだ。
(おしまい)