バジル夢(マイ)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:原作通り。
主人公はスキャッグスの逆さ数字の女の子。
ちょっと頭がおかしいコです。
内容:バジル夢。多少グロい。苦手な方は避けてください。
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あたしは今、大変不機嫌。
交渉を進めるバジル君の横で、ソファーに座ってムスッとしている。
……だって、このオジサンたち。
あたしは細めた目で周りを取り囲んでいる黒服のオジサンたちを眺める。
さっきからムリばっか言っちゃってさァ。
っていうか、部屋に入るなり大勢であたしたちの後ろまで囲っちゃって、交渉する気もなく、いかにも武器だけ手には入ればいいってカンジ。
目の前の一番えらそうなオジサンの、あたしをチラチラとさっきから見る目も気に入らない。
最初はあたしの姿を見て、きれいな白いワンピースを褒めてくれて、自慢の髪を褒めてくれて、いいオジサンだなって思ったんだけど。
武器を見るのと同じ、品定めするような目つき。
……それは間違ってない。
間違ってないけど……。
あのね、スキャッグスは、そんなにお安くない。
……ってことを、わからせてやる時だっていうのを、バジル君が困惑の笑みで両手を広げてどさっとソファーに背中を預けてチラと横目であたしを見たのでわかった。
あたしはすっくと立ち上がる。
「どうした? マイ」
バジル君の面白そうな声。
あたしはバジル君から預かったフリをして持っていたカバンから自分の自慢の相棒を取り出した。
これはあたしの一部。
大切なあたしの部品。
さっきまで黙っていたお飾りの可愛い女の子が突然立ち上がったというのでオジサンたちは驚いた顔をしている。
あたしが取り出した武器を見て、とっておきでも紹介してくれるのかと思ったらしく、目の前のオジサンが歪んだ笑みを見せる。
「どうしました? お嬢さん」
……そう、とっておきを紹介してあげる。
あたしはニッコリと微笑んだ。
可愛らしく見えるよう小首を傾げて。
鈴を転がすような澄んだ高い声で笑って。
「どうしたとかってェ……もうどうだっていいの」
折りたたまれた武器を持ち上げて一振りする。
ジャキンッ!
鉄球を途中にいくつもつけた長い鉄の鞭のようなものが出来上がる。
あたしはそれをもう一振りした。
ジャカッ!
部屋に響き渡る音。
球から無数の針が出る。
あたしは熱くなった自分の手を目でチラと確認した後、呆けているオジサンたちに向けて武器を振った。
「NO.***! 無数針毛虫(ファイアー・キャタピラー)!!」
この針は突き刺さると抜ける。
体のあちこちに針を刺されて、黒服のオジサンたちの悲鳴が上がる。
「うおっ」
「ぎゃああっ」
「ぐあっ」
うるさいなァ。
早く終わらしちゃおう。
ブンッ。
あ、そっちの方にはバジル君がいるけど、まァいっか。
あたしはかまわず武器を振り回した。
とっくに武器を取り出して立ち上がっていたバジル君が自分の武器『猛毒蠍(デス・ストーカー)』をブンと振る。
不機嫌そうに垂れ眉の根を寄せて、あたしをジト目でにらんで、軽い手つきで武器を振るう。
ガチャンッ!!
あたしの無数針毛虫から出た針がからめとられて落ちた。
そう、それが正解。
何故なら、あたしの武器は、たたき落としたりするとォ……。
オジサンたちのひとりが銃で狙いをつけて迫る針をつけた球を撃ち落とそうとする。
ああっ、ほら、そんなことしたら……。
バキンッ!!
撃たれた瞬間、針の先端からさらに細かい無数の針が弾けるように飛び出す。
「うああっ」
男が苦痛の表情を浮かべて刺された腕を押さえて床に転がる。
……あーあ。
だから言ったのにィ。言ってないけど。
「ねェ、スキャッグスは絶対なんだよ?」
オジサンたちの誰にともなく言う。
「アンタたちは何? 組織の人間でしょ? かわりなんていくらでもいるんだよ? 意味なんてないんだよ? わかってるゥ?」
あたしは腕を広げて笑った。
「なんにも意味なんてなあああい!!」
いっそう武器を激しく振るってオジサンたちを倒していく。
「ねェ、この世界に意味なんてある? かわりのないものなんて何もない! 真実だってすぐに嘘に変わる!! この世界にはなんっにもなあああいのッ!!」
ピタッと止まってオジサンたちを見回す。
痛みや苦しみや恐怖から引きつるその顔を。
あたしのもたらした効果を。
「……でも、ジークフリードは、意味をつけてくれる」
歌うようにうっとりと言って、ニコリと笑いかける。
……うん、まだまだかな。
あたしはもう一度武器を振るいながら、くるくるとその場で回った。
そして暇潰しに歌った。
『真っ赤なバラで花輪を作ろう
ポケットにはハーブを詰めて
手をつないで回ろうよ
みんな一緒に倒れよう
さァ! さァ!! 倒れよう』
あははっ。
楽しくなって笑う。
白いワンピースのリボンがヒラヒラ揺れる。
おかしくってたまらないの。
蝶のような、それは……。
+++++
静かになった空間にあたしとバジル君だけが立っている。
……ううん、まだまだうめき声とか聞こえて、うるさい。
でもいいの、意味なんてないから、どうだっていい。
だってほら、もうわかったでしょ?
スキャッグスは絶対なんだよ?
見せつけて来いって言われたもの。
あたしは白いままのワンピースの裾をつまんでひょいと持ち上げた。
「……でも、あたしのお庭に赤いバラは咲かないの」
武器を持つ片手を持ち上げる。
その手にはスキャッグスのマーク。
それを掲げて見せる。
「だって、みんな焼けちゃうから」
ジュゥゥゥ……。
周囲に漂う肉の焼ける臭い。
オジサンたちの傷口は黒くなっている。
「逆さ数字(リバースナンバー)***、灼熱の掌(バーニング・パルム)」
もう、みんな、動けないよね。
別にどうだっていいけど。
そしたらまた倒すだけだもん。
何度か自分の武器を振るっていたバジル君が……それは主にあたしの武器を避けるためだけど……眉をひそめて床に転がるオジサンたちを見ていた目をあたしに向けて、いかにも嫌そうに吐き捨てた。
「……この毒蛾が」
「……バジル君に言われたくないなァ」
自分だって猛毒蠍のくせにィ。
そう、あたしは毒蛾。
それがあたし。
あたしの意味。
あたしはニンマリ笑ってバジル君に近付くと顔を覗きこむ。
クリーム色っぽい髪が目について、ああ、『砂漠のバラ』って石みたいだ、と思う。
バジル君の首がもげることがあったら、あたしの膝に飾りたい。
白いワンピースにその髪の毛を散らしたい。
「ねェ、バジル君、知ってる? こないだ誰かから聞いたんだけどォ、差しのべられた温かい手をはねつけることこそが本当の罪なんだってさ。でも、あたしとバジル君じゃ手もつなげないから、なんの意味もないね」
はずんだ声でそう言うと、いかにも嫌そうな顔してバジル君が顔を背ける。
「……それがどうかしたのか」
「どうもしなあああいっ!!」
あたしは首を傾げてケラケラと笑った。
なんにも意味なんてないもん。
その誰かさんもすぐ殺しちゃったしィ。
「てめぇの汚ねぇ手なんか誰が触るか」
「あたしバジル君のそーゆーとこスキィーッ!!」
踵を返してさっさと扉に向かうバジル君を追いかけて隣に並んで言う。
すごく嫌そうな顔された。
「意味なんてないから、汚れたりもしないのにィ?」
ケッという舌打ちが返ってくる。
もうッ、冷たいなあ。
バジル君、焼いちゃうゾー?
「行くぞ、マイ。仕事は終わった。帰って報告だ」
「わかってるよー。なんで言うのォ? なんでなんでえ?」
「……その頭でわかってるのか」
「……うーん?」
わかってないのはバジル君のほう。
あたしにとって意味があるのはスキャッグスに関することだけなのに。
でもね、だからね、……どうでもいいや。
「いかに貞淑で雪のように真白だとて悪のそしりは免れぬ、ですかァ」
「なんだ?」
「べぇぇぇつぅぅぅにぃぃぃッ?」
ちょっときょとんとして訊いてきたバジル君にわざとニッコリ笑いかける。
「なんっにも意味なんてなあああいッ!!」
手もつなげないあたしたちは、それでも並んで歩く。
おかしくって笑える。
あたしは狂ったオフィーリアよろしく歌い出した。
『てーをーつーないでまーわーろうよッ
みーんないっしょにたーおーれようッ♪』
「わけがわかんねぇ……」
首を振ってつぶやくバジル君を気にせず歌う。
あなたの気持ちなんてどうでもいいの。
あたしがあなたを好きなだけなんだから。
(おしまい)
*歌、もとはマザー・グース。
『Ring-a-ring o’roses』より。
参照・『マザー・グース(1~4)/訳:谷川俊太郎/絵:和田誠/監修:平野敬一/発行:講談社』
少し変えてあります(本の訳とは違う上、二行付け足してます)。
*『貞淑で……』シェイクスピアのハムレットより。