ウォルター夢(フォリア)
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この章の夢小説設定設定:仲間。
主人公は図書館で働く女性。
内容:ウォルター夢。
名前を変換しない場合『フォリア』になります。
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……この人が私を口説いてるんだと気付いたのは、だいぶ後からだった。
「ねぇ、いいでしょう? お嬢さん。君みたいな可愛い娘がひとりでいたんじゃ危ない。買い物に行くなら付き合うよ。もっと長く君と一緒にいたい」
「あの、でも私、すぐに戻らないといけないので……」
「それまでの間でいい。短い時間っていうのは残念だけど、君といれば一瞬一瞬が長く感じられるだろう、楽しいからね」
歯の浮くようなセリフを言って強引に迫ってくる男性。
道でぶつかって、落とした鞄を拾ってくれたのは親切だし、それに礼儀正しく謝ってもくれたけど、その後がいけない。
どうやら誘われているんだと気付いたときには、遅かった。
ぼんやりしていたせいでどんどん話が進んじゃって……。
どんどん相手も近付いてきちゃって。
さっきからなんて言ってもダメで、離してくれそうにない。
買い物に出ただけで、本当にそれを済ませたらすぐに戻らないといけないのに。
もちろん、そうじゃなくても、付き合う気だってない。
そりゃ、結構かっこよくて、いい人そうだけど。
でも。
『これも運命だから』って名前も知らない男の人から言われても……。
『可愛い』も『素敵』も『一緒にいたい』も、言われたって全然嬉しくない。
それなのに。
「ごめんなさい、急いでるから……」
「それじゃあ、後で会おう。君に時間の余裕がある時に。待ってるから」
うわあ……。
この話の流れは困る。この場から逃げ出そうにも、背後は壁だし。
どうしよう……。
「やめろよ、ダセェな。ってか、ダリぃ」
この声は……。
男の背後から手がのびて、ガシッと肩をつかむ。
振り向く男性の目が驚きに見開かれる。
男性の背後に、真っ赤な髪の毛をして片耳に十字架のピアスをした青年が立っていた。
そんな力を感じさせないのに、呆気なく男性が私から引き離される。
「ウォルター……」
ちらっと私を見て、ウォルターは冷たい目のまま、言った。
「遅いから迎えに来たんだよ、フォリア」
一瞬『えっ?』と思ったけど、わざと私の名前を呼んで、知り合いアピールして、約束してるフリまでしてくれたんだ。
私は慌てて口を開いた。
「ごめんなさい、遅くなって……!!」
ウォルターは男を腹立たしそうににらみつけて言った。
「アンタはフォリアに何の用?」
男性の肩をつかんだ手に力が入るのが、服に皺が寄ることでわかる。
男性の顔が引きつった。
「ああ、そういうことなら……失礼しました、お嬢さん」
男性は私に頭を下げて、スッと退いた。そして急ぎ足で逃げるように去っていく。
私は安堵した。
でも、悪いことしちゃったな。
気付くと、ウォルターが呆れ顔で見ている。
「なに、絵に描いたみたいにからまれてんだ。たまたま俺が通りがかったからいいものの……」
叱りつけるような口調に、私はしょんぼりとして頭を下げた。
「ごめんなさい……ありがとう、助けてくれて」
ウォルターは不機嫌そうにそっぽを向いている。
「ったく、あれくらい上手に断れよな。……女のくせに」
その発言にはさすがにムッとくる。
「女のくせに、って……」
思わず言った私に、ウォルターの冷たい視線が突き刺さる。
私がビクッとすると、ウォルターはその目をふせて、吐き捨てるように言った。
「フォリアは可愛いんだから、あれくらいうまくあしらえなきゃダメだろ」
『これから何度ああいう目に遭うか』と、横目でじろっと私の顔を見る。
「……」
私はといえば、ぽかん。
え……えええええええっ。
顔が真っ赤になる。頬が熱い。いや、耳まで。
待って、今なんて言った?
「ちょっ、え……」
「だーかーら!!」
怒ったように言って、ウォルターがくるりと振り向く。
しっかりと目を見つめてくる。
知らず、その迫力に後ろに下がって、私は壁にどんっと背中をつけた。
ウォルターの顔が近付いてくる。
うわわっ……と目をつぶったら、ポンと頭に手が乗せられた。
目を開けると、目の前に笑顔がある。
いたずらに成功したこどものような得意げな笑顔。
「その気がなかったらしっかり断るようにするんだぞ。今みたいなのだって……」
私は焦ってこくこくとうなずく。
手が離れて、ウォルターが背中を向けて去っていく。
私は気落ちしている自分に気付いた。
……でも、嫌じゃなかったよ、ウォルターなら。
『可愛い』も、今みたいなのも。
私はその気持ちをそっと胸にしまい込んだ。
(おしまい)