ウォルター夢(依理愛)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:学パロ(ウォルター高校生)。
主人公は普通の学生の女の子。
内容:ウォルター夢。
カレカノの間柄。甘々。乙女心たっぷり。
名前を変換しない場合『依理愛(いりあ)』になります。
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みんなの願いが叶いますように……かなぁ。
そう言ったら、彼氏様は『ゲッ』という苦い顔をして、いきなり笹に下がっているいくつもの短冊を指で次々とつまんでそこに書かれた願い事を無言で読み始めた。
「……ウォルター?」
あれ? 私、無視された?
……なんかそんな変なこと言ったかなぁ?
だって、ずっと一緒にいられるように、とか……。
ずっと一緒に『いる』だし。
言うまでもないじゃん。
……って、それも恥ずかしいんだけど。
だから、言えないけど。
『ずっと一緒にいられますように』とか書けば、きっとウォルターは『カワイイ願い事』とか言って笑って、私をからかってくるだろうから。
うーん、書いてもらえたほうが、うれしかったりして。
それもあるから、自分からは書かないようにしようって、……そう、思ったから。
ウォルターの分も含めて、みんなの願いが叶いますように、っていうのはどうかな、って。
言ったとたんに、これ……。
何がいけなかったのかな。
そんな、『ゲッ』なんて顔されちゃうほど……。
「見ろよ、依理愛。コレ」
ウォルターが一枚の可愛らしい淡いピンク色の短冊を指で挟んでひっくり返して私のほうに向けて見せる。
「ん? 何? どれどれ……」
どんな願い事かなと顔を近付けて読もうとした。
先にウォルターが読み上げる。
「『恋人を奪った憎いあの女がひどい目に遭いますように』」
「……」
ひえぇ。
私、ちょっと引いちゃうな、それ。
ウォルターは普通の顔でまた別のを取って読み上げた。
「『頭いいヤツの成績が落ちますように』」
「……」
うわぁ。
言葉も出ない。
でもまだまだこんなものじゃなかった。
「『大嫌いな学校が火事で燃えてなくなりますように』『自分をいじめるアイツが消えていなくなりますように』『選手に選ばれたクラスメイトが事故で……』……」
「ちょっ、ちょっとっ、もういいよ! やめてよ、ウォルター!!」
あああああ。
……また、なんていうか、こういう時のウォルターは、いつものこどもっぽい明るさがないっていうか、妙に冷めていて、……世の中すべての汚さを見てきている……みたいな、諦めっていうか、悟りっていうか、そんな感じで。
おとなっぽいっていうのとはまた違う。
だけど私のほうがずいぶんこどもに見えると思ってしまう。
たとえて言うなら、クリスマスのサンタクロースを信じている子はこどもだけど、そんなものいないんだぜと得意げに言っちゃえる子もこどもで、二人で『いる』とか『いない』とかムキになって言い合うのは本当にこどもで……。
だけど何も言わずにそんなふたりのケンカを黙ってじっと見ている子はおとななんじゃないだろうか。
……って、そういうような、冷静さ。
何を考えているか訊ねればきっと『世の中には良いことも悪いこともあって……』とか言い出しそうな感じ。
「ゆ……夢がないね」
「ああ、まあな」
平然とした顔でさらりとそう言って自分の分の短冊に手をのばす。
書かないって言ってたのに。
急にどうしたんだろう……。
私も自分の短冊の上にかがみこむ。
ちなみに、スーパーの前で、短冊を飾る笹と、短冊とペンとこよりが1セットになって置いてある台があったから、そこで足を止めて願い事を書くことにしたところ。
サンタクロースがいると信じている子とサンタクロースがいないと信じている子がいることを知っている子の願い事はなんだろう。
そのことで起きる争いを知っているこどもおとな。
こどもだけどおとな。
そんなこどもの願い事はいったい何?
みんなの願いが叶ったら、この世界は大変だよね。
誰かが笑えば、誰かがその陰で泣いてるかもだもんね。
みんなが幸せになんて、無理なのかな。
なんか自分のお願いも書きにくいなー。
そう思っていたら、ウォルターが先にペンを置いた。
+++++
「よしっ!」
短冊の穴にこよりを通して結んでいる彼氏様の手元を横から覗き込む。
「ねぇ、なんて書いたの?」
「ん? ……見たい? 見る?」
私のほうをチラッと見てひっそりと意地悪そうに笑った。
そしてピラリと紙をこっちに寄越す。
受け取ってみれば、そこには……。
『依理愛。ウォルター』とだけ。
ホントにそれだけ。
「……なに、これ……?」
私の名前が願い事?
きょとんとしてウォルターを見る。
ウォルターは、『サンタクロースはいない』と言うこどもの言うサンタクロースという存在は知っているというこどものような顔で静かに言った。
「まあ……七夕ってのは、織姫と彦星が一年に一度逢えるって日だからな。それだけ。俺も何かを願うとしたら、それだけ、ってことで」
眠そうに怠そうに目を閉じて『んー』とうなってから続けた。
「俺の幸せはそれだからいいの」
「……へーえ……ん?」
……カァァァッ……!!
よくよく考えるとずいぶんすごいこと言ってない?
『依理愛だけが俺の幸せ』って……。
赤面。
このぉっ……!!
私は短冊をウォルターに突き返した。
「こっ、婚姻届けじゃないんだからねっ。はっ、恥ずかしいよ、こんなの!」
上ずる声をなんとか普通にしようと努力しながら言う。
「だいたいっ……へ、変な意味に見えるでしょ!?」
うっ、しまった、言うんじゃなかったかな……。
そう思ってるってことみたいだし。
やだな、うぬぼれみたいだし。
っていうか……でも……。
あたふたしていると、ウォルターがニッと笑って返した。
「あ、そっちでもいいか」
台の上にダルそうに体を投げ出して、下から隣の私を上目使いに見上げるようにして言う。
「ってか、じゃあ、そっちで」
「そっちって……っ!!」
「俺の願い事叶ってほしくねぇの? 依理愛」
ちょっと悲しそうに言う。
それが甘えてるってわかる。
わかるだけの付き合いだ。
いいように流されてたまるかっ!!
私はウォルターの頭にボカッと拳を落とした。
「いって!!」
「真面目にっ!!」
怒ってるフリで照れ隠しをする。
冗談じゃないってば。
もうっ、ホントに……すぐ調子に乗って。
こどもなんだから。
こんなんじゃ、本当にずっと一緒にいる約束をするのは、ずっと先になっちゃうよ。
……よね。
そうしたら困るからお願いしとこっかなぁ、お星様に。
『ずっと一緒にいられますように』。
(おしまい)