ウォルター夢(依理愛)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:学パロ(ウォルター高校生)。
主人公は普通の学生の女の子。
内容:ウォルター夢。
カレカノの間柄。甘々。乙女心たっぷり。
名前を変換しない場合『依理愛(いりあ)』になります。
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あー……ヤバいなぁ……。
……もう、完全に失敗した。
苦い気持ちで目の前の背中を見る。
おずおずと顔を上げてちらっと。
黒いシャツを着た大きな背中。
休日の繁華街の人混みの中、私をかばうようにして、前を歩いているウォルター。
その手と手はつながれていて。
はぐれないように、っていうのも、もちろんあるんだけど……。
私の目は自分の足元に落ちる。
今まで履いたこともないヒールの高い靴。
淡いピンク色で、ピカピカしてて、小さな花がついてて、とっても可愛くて気に入ってるんだけど……でもちょっとヒールが高め。
デートの日にわざとそんな靴を履いてきたのは、買ったばかりの新しい靴を見てもらいたかったこともあるし、歩きにくいことを理由に自然と腕を組めるかな、なんて思ったこともあったりして。
……それは……半分くらい、叶った。
残念ながら人混みがすごくて、並んで歩ける状況じゃないから、手をつないで……っていうか引っ張ってもらって……歩くことになって。
実は、それがすごく嬉しい。
そのほうが嬉しいくらい、なんだけど。
本当に自然な流れで手をつなげたし。
人混みがすごくて一緒に並んで歩けないのは悲しいし、つまらないけど、ウォルターの大きな背中を見て歩くのも悪くない。
っていうか、いい、すてき。
すっごく安心するし。
本当に助かってるし。
ただ、ただ問題は……歩いてるうちに、足が痛くなってきちゃったこと!
慣れない靴で……慣れないヒールで……情けないことに、ちょっと考えればこういうことになるのはわかってたんだけど、踵が痛い。
靴擦れ……かな……?
どうしよう。
ずんずんと前を歩くウォルターに、どんどんついていけなくなってしまう。
それでも手をつないでいるから、引っ張られるまま、必死に足を動かして。
気付かれたくない。
だって悪いよ。
せっかく楽しく遊びに来たのに、私のせいで、足が痛くなっちゃったー、なんて。
そんなわがまま言えない。
一生懸命痛みを堪えて歩いていたら、不意にウォルターが立ち止まって振り向いた。
「依理愛?」
不思議そうな顔をしてる。
「なんか遅くねぇ? どうした? さっきから……」
私は慌てて首を振る。
「うっ、ううん! なんでもないよっ」
にこっと笑って、開いてしまっていた距離を縮める。
いつのまにか、私のほうがウォルターの足を止めるくらい、手を引っ張ってしまってたみたいだ。
「平気、大丈夫っ!」
長い赤い前髪の間から覗く黄色っぽい目が、不審げに私の上から下までを眺める。
「ホントか? 俺、速かったか? 無理すんなよ……ってか、あれ、足?」
「え?」
「依理愛、おまえさ、足が……」
ウォルターの目が私の足元で止まり、その眉をひそめさせた。
なんだろう、どうしてだろう、もしかして足が痛いのバレた? でもなんで?
ぎょっとして固まる私を引っ張ってウォルターが道の端に連れていく。
『ちょっとこっち来い』とか言って。
私はズキズキする踵の痛みを堪えて歩く。
コンビニの前で、空いたスペースを陣取り、ウォルターは私の手を離した。
そして、困ったような、怒ったような、複雑な顔をして私に言う。
「依理愛、ちょっと靴脱いでみろよ。ほら、貸して」
「え、えっと……」
戸惑っているうちに、ウォルターが屈んで手を伸ばし、私の足に触った。
靴を脱がそうとしてるんだとわかって、私はウォルターの肩に手を置いて、おとなしくされるがままになる。
……ホントは、こんな街中で靴を脱ぐのは、ちょっと恥ずかしかったけど。
有無を言わさぬ調子に負けたっていうか。
ウォルターがなんで私の足に注意を向けたかも気になった。
バレないようにしてたつもりだったのにな。
どうして気付いたんだろう。
足が痛いことわかっちゃったんだよね、きっと。
どうして……?
私の靴を片方脱がせて立ち上がったウォルターが……ちなみに私の肩に乗せた手が外れないようにゆっくりと……私の足元を指差した。
「血が出てるぞ、足……」
「え……? あ」
見ると、白い靴下の踵のところが、真っ赤だった。
あー、靴でこすれて皮が剥けちゃったんだ……。
けっこう広い範囲で前の方まで血が。
……ううっ、この靴下お気に入りだったのに。
って、そんな場合じゃないっ!
+++++
おそるおそる顔を上げると、ウォルターが今度こそ怒った怖い顔つきをしている。
「なんで言わなかったんだよ、依理愛! 痛かっただろ、それ!」
「ごっ、ごめんなさい、私……」
そうだよね。怒るよね。不機嫌にもなるよね。
自分の見栄とかわがままみたいなものでこんな靴履いてきて、せっかくのデートだっていうのに、台無しにしちゃって。
これじゃどこにも行けないし……。
っていうか、怪我で止まるとか、迷惑かけちゃって。
最悪だよ……。
目をつぶる。
涙が出そう。
しょんぼりして頭を下げると、ぽんとその頭に大きな手のひらが乗る感じ。
おや?
おずおずと目を上げると、ウォルターが笑ってる。
「バカ、謝んなって。怒ってねぇよ。あ、いや……」
照れたように横を向いて、ムスッとして言う。
「やっぱ少し怒ってるか。だって依理愛、何も言わねぇんだもん。もうちょっと俺のこと頼れよ」
「ウォルター……」
置かれていた手が乱暴に右に左に動いて頭を撫でられる。
もうっ、女の子だよ。
やさしく撫でてよ。
髪の毛ぐしゃぐしゃになっちゃうじゃん。
嬉しいけど。
私は言われた言葉にますますしょんぼりしてしまう。
「だって、ウォルター、困ると思って」
しかめっ面でウォルターが『はあ』と大きなため息を吐いた。
「『困る』って……そんな怪我するまで黙ってられるほうが困るんだよ! あーもう、今日は帰るからな!! 絶対帰る」
「え……あの、映画は……? 行きたかったお店は……?」
「また今度でいいだろ」
ぽんぽんと頭を軽く叩いて手が離れていく。
ああ……申し訳ないなー……。
私の足のこと気にしてくれてるんだよね。
それで予定を取り止めなんだ。
ここでお別れなんだ……。
……淋しいとか、いけないよね、私が悪いんだから。
うつむく私にウォルターがぶっきらぼうに言う。
「ほら、靴履け、依理愛。それでここで待ってろ。今、バンドエイド買ってきてやるからさ。それで……手当てしたら、俺ん家でいいか? それとも、おまえん家?」
「えっ?」
驚いて顔を上げて、きょとん、そうしたらウォルターが苦笑する。
「『えっ』ってそればっか……。いや、デートだろ。デートじゃん。っていうか、今日一日、依理愛は俺と一緒に過ごすんだろ」
そこで、何故かウォルターは『えへん』と胸を張った。
「つまり、今日は依理愛は俺のもの」
得意げに言われて、ついプッとふき出してしまう。
それから、じんわりと、胸があったかくなる。
切ないくらい、苦しいくらい、じんときて。
今度は嬉しくて涙が出そう。
ありがとう。
言葉の代わりに、腕を回して抱きついた。
「えっ、依理愛……?」
驚いたのか固まっているウォルターに、私は笑って言った。
「そんなの、いつもだよ」
+++++
その後。
靴下を脱いで、ウォルターが買ってきてくれたペットボトルの水でハンカチを湿らせて傷を洗い、消毒して、バンドエイドを貼って、再び靴を履いた。
「痛くねぇ?」
心配そうに顔を覗き込んでくるウォルターに微笑んでうなずく。
「大丈夫」
……本当はちょっと痛いけど、歩けないほどじゃない。
「ありがと」
ウォルターが持っててくれたビニール袋に手をのばす。
私が靴を履く間にウォルターが血の染み込んだ靴下をビニール袋に入れておいてくれた。
それを受け取ってバッグの中にしまう。
私が戸惑っている間にウォルターはいろいろと用意してくれて、わりと手慣れた手つきで傷の手当てもしてくれて、その後始末もしてくれたんだ。
やっぱり、足元にしゃがみこまれて傷の手当てをされるのは、なんとなく恥ずかしかったけど。
本当に助かったし、嫌がらずにそういうことをしてくれたことに感動したっていうか、やさしいところあるんだなぁなんて。
思ったより手際もよかったし、上手だったし……。
学校の執行部のお仕事で怪我をすることもあるみたいだから、それでなのかな。
私がビニール袋をしまい終えるのを、傍に立って腰に手を当ててじっと見守って待っていたウォルターが、『ふむ』と考え込むように言って、さっと腕を広げた。
「さ、じゃ、帰るとするか、依理愛!」
「あ、うん。……ん?」
ウォルターが両手を広げたまま近付いてくる。
私のほうに。
え、なんだろう……。
なんか怖い。
じりじりと後ずさる私の腰に手をのばしてウォルターがつかんだ。
「きゃっ」
そのまま軽々と持ち上げられ、肩に担がれる。
「ちょおっとーっ! ウォルターッ!?」
「おいっ、依理愛、暴れんなって!!」
ジタバタジタバタ。
急に何よぅ……。
恥ずかしいじゃん!
うう、顔が熱い……。
冗談じゃない。
コンビニの前だよ?
車の陰だけど、近くに人はいないけど、誰に見られているかわかったもんじゃない。
私の慌てっぷりが面白いのか、ぷっくっくっと笑う声が耳をくすぐる。
すごく楽しそうに。
もうっ、いたずらっこっていうか、すぐに人をからかいたがるっていうか!!
「怒るよ!? 放して!! ってか何ーっ!?」
私の怒声に平然としてウォルターが答えた。
「だって依理愛、おまえ足痛いんじゃねぇかと思ってさ。俺がこうやって担いでいけば、歩かないですむだろ? そうしたら痛い思いしなくていいじゃん。どう!?」
「『どう!?』じゃないよーっ!!」
なんかまるで『いい案だ』みたいに得意げに言うウォルター。
褒められることを期待してるみたいに。
声が笑ってるけど。
いやいや、そんな、これで街中を移動するなんて絶対に無理!
っていうのは、ウォルターもわかってて、もちろん本気じゃないんだとは思うけど。
っていうか……。
私は真っ赤になって言った。
「荷物じゃないんだからねっ!」
ムスッ。
土砂袋じゃないんだから……。
暴れるのをやめて体の力を抜いてぐったりとして、ぶらりと揺らされながら、頬をぷくっとふくらませる。
そんなふくれっ面したってウォルターには見えないけどさ。
体が揺れてるのはふざけてウォルターが体を揺らすせい。
まるで赤ん坊を抱き上げてあやすみたいに。
「……」
私はもう無言。
うーん、この扱いは納得できません。
そうしたら、さすがにマズいと思ったのか、ウォルターが私を肩から降ろした。
「悪い、依理愛、ごめんな」
くくくっと堪え切れない様子で笑いながら、それでもちゃんと私を支えてくれて、ゆっくりと足が地面につくようにしてくれる。
私はホッとした。
でもその次の瞬間にはまたびっくり仰天してしまった。
「ウォルター!!」
今度は私の背中と足と二か所に手を回してひょいとまた軽く抱き上げたのだ。
顔がウォルターの胸にくっつく。
すぐ上にウォルターの顔がある。
なにやら嬉しそうに笑っているウォルターの顔が。
こ、これは……。
いわゆる、その、これが……『お姫様だっこ』というやつだ!
ハッとして、ボッとなる。
顔がゆでだこ……頭から湯気が……。
怒りじゃなく、恥ずかしさで。
「これでいいか? 依理愛。今度は文句ねぇ?」
きらきらと甘く目を輝かせたウォルターが問う。
わざと真面目な顔をして。
あわわ。
すごく近くに顔があって動く唇がっていうかささやく甘い声がっていうかっ……!
たくましい腕とかしっかりした厚い胸とかいい匂いがーっ……!!
体の熱さが。
パニック。
私の混乱っぷりにますますウォルターがいい笑顔になってはずんだ声で言う。
「いいなら、これで行こうぜ、依理愛。体力には自信あるからさ。家まで抱いてってやるよ」
「え、う、あっ」
なんなのもう!
「おおおおろしてーっ!!」
……文句あります。
いろいろと恥ずかしいんだからねーっ。
もうバカッ!!
+++++
「疲れた……ダリぃ……」
人の部屋に入るなりウォルターはそんなことを言う。
戸口に立ち止まり、急にがっくりと肩を落として。
まぶたを半分下ろして死んだ魚のような目をして。
その目の下のクマもあいまって、なんか今にも倒れそうなカンジ。
ホントにだるそう。
眠そうなのはいつもなんだけど、なんか今は寝ちゃったらそのまんまになりそうな……。
……って、縁起でもないけど!!
私は両手をメガホンのようにしてウォルターに向けて怒鳴った。
「おーいっ、しっかりしろー!! 傷は浅いぞー!!」
冗談で笑ってそんなことを言ってからかってみる。
ジロリとにらまれた。
ウォルターは不機嫌そうに言う。
「誰のせいだと思ってんの? 依理愛。おまえがあんなに暴れるからだろ。それでこんなに疲れたんじゃん!!」
「『抱っこして』なんて私は一言も言ってないけどねっ!」
カチンッ。
まるで、私がわがまま言ったから、みたいな……。
私を抱えたのはウォルターが勝手にやったことだし、結局は(もちろんだけど)私は自分で歩いて帰ったんだし。
ちょっと本気で怒ってケンカになった……言い合いだけど……ことで彼氏様の機嫌も悪い。
嫌がられたと思ったみたい。
……そりゃ、嫌だったんだけど……。
『人前で恥ずかしいから』で、別にウォルターに触られるのが嫌とか、そういういうんじゃない。
そこはちゃんと言ったのにな。
私の言葉に『また……』とすねた顔になって、ちょっと唇をとがらせて、頬をふくらませて、その童顔をさらに幼くさせる。
少しうつむいて、赤い前髪が目を隠し、こっちと目を合わせないままで、ウォルターはぶつぶつと言う。
「なんだよ……。そんなに嫌だったのかよ? ちょっとからかっただけじゃん。っていうか、依理愛、いつまで怒ってんの? 結構根に持つタイプ? っていうか、真面目じゃねえ?」
全力で『自分は悪くない』の主張。
あのねぇ……。
ついイラッとしてしまう。
「決めつけないで!!」
「普通だろ。俺の判断じゃん。依理愛は真面目!! ってかカタブツ!!」
ウォルターは急に我慢ならないといったように天を仰ぎ見て『あーもうっ!!』とわめき出した。
「根に持つヤツもカタブツも俺の周りにはひとりいればじゅうぶんだっ!!」
「……」
何それ……。
唖然としてしまう。
彼氏様の尋常でない憤りっぷりに。
周りの人と何かあったのかな……。
って、それはともかくっ!!
私だって怒っちゃってるんだから。
「あのね、ウォルター。戸口でいつまでも立ち止まってないでよ。ほら、座って。疲れてるんでしょ? 今、お茶持ってくるから。お腹は減ってない?」
低いテーブルの上に手招きして、座るように手でも示して、とうに荷物を下ろしていた私は、お茶とお菓子を階下から持ってこようと扉のほうに近付く。
つまり、ウォルターのそばに。
「……ん」
なんだか今やしょんぼりとしていたウォルターが、ゆっくりと動き出す。
ゆらり……という感じで。
あれ?
「きゃっ!! ちょっとウォルター!!」
私は驚いて思わず大声を上げてしまう。
彼氏様が前に倒れ込むような動きでもたれかかってきたから。
っていうか、両腕を広げて、抱きついてきたっていうか。
背中に腕を回して包み込むようにして……。
私の肩に顔を埋めるようにしてボソッと言う。
「ごめん、依理愛……。そんな嫌がらないでくれよ……」
すごく悲しそうに、すごく淋しそうに。
まるで雨の日に捨てられたびしょ濡れの子犬のよう。
ついプッと笑ってしまう。
だって、そんなのじゃないもん。
そんな……嫌がってるとか、そんなふうに。
わかってないなぁ。
+++++
私はウォルターの背中に腕を回してきゅっと抱きしめ返した。
驚いてウォルターがびくっと固まる。
呆然として。
私は苦笑して言った。
「ウォルター、大好きだよ。触られるの別に嫌じゃないよ。あの、『抱っこ』だって……ひ、人前じゃなければ! 恥ずかしいんだけどっ」
ちょっと焦って、力強く、きっぱりと。
「私、恥ずかしがりやなだけだからねっ。本当はうれしいんだよ。冷たくしてごめんね」
「依理愛……」
力の抜けた様子でぼんやりとしてウォルターが私の名前を呼ぶ。
次の瞬間には私の体に回されていた腕に抜けていた力が新たにこもっていた。
痛いくらいの強さで私を抱きしめ、『依理愛、依理愛、依理愛……』と耳元で何度も名前を呼ぶ。
私の頬に頬をこすりつけるようにして、キスするみたいに耳に顔を近付けて。
右に、左に。
私の視界に赤い髪がチラチラとして。
「依理愛……」
甘く低い声で切なく、何度も何度も……。
私の存在を確かめるように。
苦しいくらい……。
私はドキドキしてたまらなくなって、いつしかウォルターのシャツをつかんでいた手で、背中を軽く叩いた。
「ちょっ……と、ねぇ、ウォルター。苦しいよ。……それに、痛……」
「あっ、悪い! 依理愛」
ハッとしてウォルターが身を少し離す。
完全にではないけれど。
もー、恥ずかしいよ……。
本当言うと、その苦しさも痛さも気持ち良くさえあったんだけど……離れてほしくないくらいだったんだけど、でも、なんだか、心臓がキュッとして。
これ以上だと泣きそうだった。
何かが変わってしまいそうな……。
そんな不安に近い。
だから、離れてほしいような、逆にもっと強く抱きしめてほしいような、複雑な気持ち。
でも、心臓が爆発しそうだから、とりあえず。
「お、お腹とか……」
背中に回されたたくましい腕を感じながら、おずおずと言ってみる。
さっきの問いの続き。
「空いてるなら、なんか作ろうか? パスタとか……」
ウォルターは目を閉じて『んー』と低くうなった。
「いや……」
薄く目を開いて、その目はじっと私の向こう、ベッドを狙いすますように見ている。
なんか、まるで、獲物を狙う野生のケモノのような鋭い目つき。
殺気のような、冷たいような熱いような、怖い空気……。
こらこら。
「なぁ、依理愛。意地悪していい?」
ほんのわずかに口角を上げてニヤリとして……いたずらっこの笑みだ……いいことを思いついたみたいに輝く目で私を見て言う。
私はギョッとして、身を離そうとした。
「えっ、ダメだよ! ダメ!! やだ、ちょっと……」
ぐいっと腰をつかまれて引き寄せられて離れられない。
「ウォルター!」
私の非難げな声に、彼氏様は澄ました顔で平然と言った。
「意地悪なんだから、『嫌』とか聞かねぇよ?」
そんなっ……!!
あまりのことに呆然とする。
そんな私をウォルターがもう一度ぎゅっと抱きしめてきた。
そして、耳元でささやく。
「……ダリぃから、一緒に寝よ? 依理愛。まだ離れないでほしい」
「はっ……」
ひええ。
チュッと軽くキスされて。
結局、今度は抵抗もできずに、お姫様抱っこされてベッドに向かうのでした。
(おしまい)