ウォルター夢(依理愛)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:学パロ(ウォルター高校生)。
主人公は普通の学生の女の子。
内容:ウォルター夢。
カレカノの間柄。甘々。乙女心たっぷり。
名前を変換しない場合『依理愛(いりあ)』になります。
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土曜日。
いつものように午後家に遊びに来た彼氏様……ウォルター……は、私の部屋で出されたコーヒーとお菓子を片付けて、早くもゆったりとくつろいでいる。
まるで自分の部屋みたいに。
それくらいもう何度も家に来てるってことでもあるんだけど、もともと慣れるのが早いっていうか……。
けっこう気遣い屋さんのわりに、こういうところ遠慮がないっていうか、変な言い方だけど容赦がないっていうか……。
ぐいぐいと入り込んできてでんと居座るのは、その開けっ広げなところとか人懐っこいところからきてるのかな。
部屋はそろそろ暑くなってきたからコタツをしまってテーブルに替えてある。
その低いテーブルの上にあごを乗っけて、手足をのばして座って、だらーんっとしている。
だらだら、だらだら。
特に何をするでもなく。
女の子の部屋ということで最初の頃に見せた緊張とか恥ずかしそうな様子とかは微塵もない。
気持ち良さそうにだらけている。
……まぁ、疲れてるんだろうけど、そろそろ……。
飲み終わったカップを片付けてきた私は、代わりの飲み物を持たずに部屋に戻って、ウォルターの向かいに無言で座った。
「おかえり、依理愛」
「……ん」
「なんだ、どうかした?」
『おかえり』ってここ、私の部屋なんだけど。
……まぁ、それはいいとして……。
いかにも『何か言いたいことがあります』といったように難しい顔をして黙り込む私に、ウォルターは不思議そうにチラと目だけ上げて下から上目遣いに私を見て訊ねる。
私はわざとおどけてコホンと咳払いをしてみせてから言った。
「ウォルターに提案があります。これから一緒に買い物に行こっ」
「……」
『あー……』とぽかんと口を開けたウォルターの目が死んだようによどんだ目になった。
「……ダリぃ……」
しばらくしてぽつりとそう言う。
ムカッ。
私はウォルターの頭に握りこぶしを落とした。
ごんっ。
ウォルターが頭を抱えてうめく。
「いってえっ……!!」
「カノジョがデートに行こうって誘ってるのに『ダルい』って言う人がいるっ!?」
ぷんぷんっ。
もーっ、信じらんない!
本当にそうだとしても他に言いようはあるでしょ!?
「だってさー……、依理愛、今日は土曜日だぜ!? 土曜の午後なんて混むだろ、どこも!! 買い物って……考えただけでダリぃ」
涙目で訴えるウォルターのその言葉に、今度は私のほうが死んだような目になってしまう。
いや、もう、顔にどんな表情も浮かべられない。
……ゲーセンとかははしゃぐくせにぃー……。
こういうことは嫌がるんだから。
まるで私が非常識みたいな言い方しちゃって。
ぶー……。
言うタイミングを間違えたかな?
こんなにくつろいじゃってからじゃ……。
根が生えてからじゃ……。
でも、それにしたって、それはないよ。
「……」
唇をとがらしてムスッとする私に、ウォルターが慌て出す。
がばと起き上がり、取り繕いの笑みを浮かべて、おろおろとして言う。
「いや、ダルいってのは……口癖だからしょうがねぇだろ? 本気じゃなくて……俺が言いたいのは、そんなんじゃなくて、めんどくさいってか、気が進まないってか……あー、その、なんだ……」
「……」
同じなんですが。
怠い上に面倒臭くて億劫なわけね!
私とのデートが。
……なんて。
頭をかきむしっているウォルターに、はぁとため息を吐き出す。
「……もういいよ、ウォルター。だけどこれは、ウォルターのためなんだよ? まだ買ってなかったらだけど、ホワイトデーのお返し一緒に選んであげようと思って……」
「は?」
顔を上げたウォルターがきょとんとしている。
「ホワイト……なに?」
え、いやいやいや。
とぼけてる?
首を傾げちゃって、やだな。
「だから、ホワイトデー。ほら、もうすぐでしょ? 忘れてた? 私の分はいいけど、だってバレンタインデーにお花もらったし。だけど、他の人からもチョコもらったんでしょ? そのお返しを……」
「いやいやいや」
目の前でぶらんぶらんと手を横に振ってみせる。
え?
……まさか、返さないとか!?
びっくりして思わずにらみつけるみたいにしてしまった私に、目を見開いたままのウォルターは、さらに首を傾けて言った。
「依理愛、『ホワイトデー』……ってそんなもんあんの?」
「え、ちょっとー……冗談だよね?」
「いや、知らないけど」
えええええっ。
あ、でも……バレンタインにバラの花くれたくらいだし……。
そうだよね、フツーならホワイトデーにくれるものだもん。
それをバレンタインにくれたんだしー……。
バレンタインは女の子が男の子にチョコレートをあげて告白を……って、お菓子屋さんの陰謀(笑)だって話、聞いたことあるし。
「ねぇ、ウォルター。バレンタインってなんの日だと思ってた?」
「ん? 好きな相手に贈り物をする日」
……うん。
外国だと男の人が女の人に花を贈ることが多いとか聞いたことある。
首を戻して先生を見る生徒のような真面目な顔つきをしていたウォルターがうなずく。
「で、依理愛。ホワイトデー……はお返しをする日なんだな、ようするに」
「うん。わかった? フツーはキャンディとかあげるんだよ」
「そういう日があるってのは知ってたぜ、なんとなくだけど」
机に肘をついて手の甲にあごを乗っけて天井を見つめて少しの間ぼけっと……考え事を……したウォルターは、もぞっと座り直して、微かに皮肉げな笑みを浮かべた。
「ホワイトデーね……なるほど。よくできてるな。いつ?」
「3月14日」
瞬間、ウォルターがちょっと眉をひそめて、困った顔をした。
「あんま日がないじゃん」
「そう。だから一緒に買いに行こってー……」
「ちょっ、ちょっと待てよ!」
バッと両手を出して遮るウォルター。
大いに焦った様子で。
なんだか引きつった笑いに顔を歪めて。
+++++
「行くの? 依理愛、買い物に、俺と一緒にか!? 他の女の子へのお返しを買いに行くのにカノジョがついてくるっておかしくねぇ?」
最後は本当に不思議そうに言う。
……うん、それはその通り。
私は大真面目にうなずく。
「うん。変なんだけど。だけどね、ウォルター、本当は他の女の子にお返しあげてほしくないんだけど、そんなの無理でしょ? 無理だよね?」
「いや……まぁ、そういう日があるって知っちゃったからには」
ちっ……言わなきゃよかった。
そうしたら何も問題はなかったのに。
……なーんて。
「じゃあ、私ついていって、せめて選びたい。選びたいっていうか、えーと……」
見張りたい。知りたい。何を選ぶのか、何人ぐらいに買うのか、どれくらい熱心に選ぶのかとか、全部知っていたい。
……私って変かなぁ。
えーと、気持ちをまとめて、わかりやすく言うと。
「見守りたい……かな?」
ちょいと首を傾げて空を見るようにして『うーん』と悩んで腕を組む。
向かいでウォルターがうっすらと笑っている。
たらりと冷や汗を流して。
私をじっと見据えて。
……何その、まるで強大な敵を見るような目は。
「……とてもじゃないが、おまえの前で他のヤツのプレゼントは選べねぇ」
「どういう意味?」
ウォルターは真顔になってぶんぶん、ぶんぶんと首を横に振る。
私の目は自然ときつくなる。
「ちょっとウォルター……」
「ダメだ、依理愛。俺にはとてもそんなことできそうにない。カノジョと選んだお返しを渡すってのもなんかアレだし、第一おまえだって嫌だろ!? 他の女へのプレゼントを選んでる横にいるなんてさー……」
「そんなことないよー」
……いや、だから、なんですが。
「変なもの選んだら殴られそうだし」
「えっ、しないよ、そんなことー!」
ウォルターはさっき私が拳を振り下ろした頭を痛そうにさすってみせる。
うっ……。
私が何も言えずに固まると、ウォルターが不機嫌そうにそっぽを向いてため息を吐いた。
「ダリぃ……」
お返しなんて、とぼやく。
「ダメだよ、ウォルター。ちゃんと選ばなくっちゃ。義理はともかく、バレンタインにくれたのは気持ちのこもった物なんだからねっ、それなりにちゃんとお返ししなきゃ……」
ウォルターがチラとこっちに目を向ける。
「……それでいいわけ?」
「え?」
「……俺が気持ちのこもったお返しして、それでおまえはいいわけ?」
えーっと。
言われたことをよく考えてみる。
そりゃあ、やっぱり……。
「だからっ、嫌だからっ、一緒について行きたいっていうかっ……」
うわあ、顔が熱い。
あうう、恥ずかしい。醜いな。汚いな。
こんな自分嫌だな……。
私と一緒だと適当なもの選ぶだろうとか、誰かにだけ高いもの選んだりしないだろうなとか、あんまり決まらなかったら私が選んじゃえばとか、そりゃ確かに、変なもの選ぶんじゃないかとか、優柔不断でなかなか決まらないんじゃないかとか、ちょっとは心配もあるけど……。
なんて嫌な子。
でも、だって、嫌なんだもん。
ウォルターに『特別』がいたらどうしよう……。
そう考えたらどんどん暗くなっちゃう。
いじけてしまった私に、ウォルターはニッと面白そうに笑って言った。
「よかった。依理愛は俺のことなんてどうでもいいのかと思った。一緒にプレゼント選びたいなんて言うからさ」
「……そんなわけないじゃんっ! 逆だよー!! 気になるからついてきたくてっ……」
ああ、しまった、そっか。
言ってなかったな……きちんと。
私は改まってウォルターと向かい合った。
ウォルターもだらっと座ってテーブルに肘をつくのをやめてちゃんと座り直した。
「ねぇ、ウォルター」
「なに? 依理愛」
ニンマリとするのをやめてほしい。
からかうみたいな真似をして。
私はわざともっと真面目な顔をする。
「本当は、ウォルターにお返しあげてほしくない、です」
「うん」
嬉しそうに恥ずかしそうに肩をすくめてウォルターが笑う。
くすぐったそうに。
ムー……。
「あ、あげるのはしょうがないけど……誰かひとり特別な子がいたら、嫌ですっ」
「ん」
もっと言って、みたいな、褒められたみたいな得意げな顔をしている。
おねだりするみたいに顔を突き出して。
もーっ……。
意地悪なんだから。
怒りを堪えて、最後までとりあえず言いたいことを言わせてもらう。
「私以上の子がいたら許さないからっ」
「はいはい」
わかってるとばかりに軽くうなずいて見せる。
憎たらしい~っ。
殴っちゃおうか、もうっ。
「待て待てって! わかった、わかったから!! ちょっ……殴んな!!」
大いに焦ったウォルターの声にハッとする。
いつのまにかゲンコツ作った手を高く上げていた。
ああ、暴力的になったな、私……。
でも、ウォルターといると、つい。
手を下ろしてもじもじと座り直す私に、安堵した様子で、指でぽりぽりと頬をかきながら、ウォルターが言いにくそうに言う。
「あとさ、もうひとつ気になることがあるんだけどさ、その……依理愛、『私の分はいいけど』って言ったよな? あれって、おまえ、本気?」
「え? だってウォルター、バレンタインにバラの花束くれたじゃん。お返しはいらないよ」
「そういうもんじゃねぇだろ」
ウォルターはなんだか怒ったみたいにムスッとして言う。
「バレンタインにちゃんと……くっ、くれたんだし、他の女の子にチョコのお返しして依理愛に何もあげないとかねぇよ」
ウォルターはそう言ってすっくと立ち上がる。
「行くか? 買い物」
「え……」
あれだけ『ダルい』『ダルい』って言ってたのに。
急に行く気になって、どしたんだろ。
それは……行く気になってくれたんならいいけど……でもちょっと、ガッカリ。
他の女の子へのプレゼント買いに行くんだもん。
デートとはいえ、あんまり心は弾まない。
自分から言い出したことなのに、変なの。
複雑な気持ち。
ウォルターはさっさと鞄を背負って部屋の扉に向かって歩き出す。
その途中で振り向いた。
「早く準備しろよ、依理愛。待ってるから。それから……今日買いに行くのは他の女の子のじゃねぇからっ! おまえのだからな、依理愛!! そのへん勘違いすんなよっ」
怒ったみたいに指を差してそう念を押して、ぽけっとしている私を置いて部屋を出て行く。
「は……」
え?
私へのプレゼントを買いに?
私と一緒に……?
「うえぇ……」
がぁっと顔が一気に熱くなる。
めまいまでしそう。
嬉しすぎて変な声が出る。
ああ、よかった、ウォルター部屋出た後で。
顔に手を当ててベッドに倒れ込んで身もだえする。
この奇行も見られずに済む。
本当はさっさと着替えなきゃいけないんだけど……。
少しの間浸りたい。
でないと顔のニマニマが収まらない。
幸せすぎるなぁ。
もうっ、もうっ、ウォルター大好き!
(おしまい)
あとがき・・・『願望』って、『他の女の子にお返ししないでほしい』の、『願望』です。