ウォルター夢(依理愛)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:学パロ(ウォルター高校生)。
主人公は普通の学生の女の子。
内容:ウォルター夢。
カレカノの間柄。甘々。乙女心たっぷり。
名前を変換しない場合『依理愛(いりあ)』になります。
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家でのんびりこたつに入ってテレビを観ていたら、ケータイにメールが届いたことを音で知らされた。
……誰だろ?
あ、ウォルターだ。
彼氏様の名前にどこかホッとして、それでいてドキドキしながらメールを見る。
普通の連絡以外に、何か面白い物を見つけたとかの写メ程度は送ってくるけど、かといって『何してんの?』から始まるような長々とやりとりするメールは送って来ない。
『ヒマつぶしにメール? ダリぃ』な人なので。
学校での執行部のお仕事も忙しいみたいだし……。
私はさっと文面に目を通す。
何かあったのかなと思って、ちょっと急いで。
すると……。
<依理愛、今おまえんちの近くにいるから、ちょっと出てこれないか? 会いたいんだけど>
……うーん。
私はメールを読み返してため息を吐く。
困ったな。
だってもう9時近いよ……。
でも件名まで『今すぐ』だ。
……『今すぐ会いたい』って……。
そんなことカレシに言われて断れる人いる?
早めにお風呂に入っちゃってて、もちろん夕ご飯もとっくに食べ終わってて、後は適当にだらだら過ごして寝るだけみたいな状態だったんだけど……。
つまりルームウェアでのんびりしてたんだけど、今から着替えて、ちょっと髪の毛もきちんとしてっと。
私はウォルターにメールを送った。
15分くらい準備にかかるかなぁ……と。
すると、すぐにメールが返ってくる。
<一番近くの公園で待ってる>とのこと。
……だったら20分くらいで行けるかなぁ……。
私はそれをメールで伝えた。
返信は<待ってるから>。
私はパタンとケータイを閉じて、さっとこたつから出て支度を急いだ。
……毎度わがままな彼氏様だなとは思うけど。
少しうれしくもあって。
ああ、必要としてくれてるんだな……って、思って。
……でもあのウォルターが20分待てるかな?
急がなくちゃ。
+++++
「ウォルター!!」
ハッ、ハッ、と走ったせいで息をはずませながら、公園の入口の街灯のところによりかかっているウォルターに駆け寄る。
白い灯りがウォルターの頭に降ってその片耳の十字のピアスもキラキラ光ってる。
黒いレザージャケットの下に赤と黒のしまのVネックのシャツを覗かせて、ズボンはただのブラックデニムに足元はスニーカーだけど、相当カッコイイ。
そのカッコでダルそうに街灯にもたれて。
……なんかアンニュイ。
ダルそうなのはいつものことだけど、それだけじゃなくて、もの憂げっていうか、ちょっと暗い。
……なにか悩んでるのかな。
それにしても、しっかりオシャレして来てて、なんか様になってるっていうか……やたらとカッコイイ。
私なんか適当にそこらの服着てきちゃったよぅ。
フツーのダッフルコートだよ?
髪もおろしたまま。
うーん、近付きにくい。
でも彼氏様はこっちを見てパッと顔を輝かせた。
「依理愛!!」
うれしそうに二カッと笑ってスタスタと大股で近付いてくる。
私のちょっと前で足を止め、私をまじまじと見た。
……なに……?
やっぱり服が……いや、何もしてない髪かな……?
しばらく私を眺めて、ウォルターはホッと息を吐いた。
「いつもの依理愛だ……よかった。なんか安心する。おまえ見ると」
「……そう?」
「ああ。なんか、ホッとするっていうかさ」
きょとんとして訊ねると、照れ笑いのようなものを浮かべてそう言って、ウォルターは『あー……』と言いながらポリポリと後ろ頭をかいて、公園の中を指差した。
「公園でいい? 話がしたいんだけど。嫌ならどっかファミレスとかでも……って、この時間だもんな。マズいか。依理愛、その……俺と公園入るの怖い?」
真面目に問われてプッとふき出す。
確かに暗い公園だけど。
でもそんなの……。
「大丈夫だよ。そんなの気にしないよ。ウォルター一緒だから怖くないよ」
ウォルターは私の答えを聞いて『あー……』とか『うー……』とか視線を天に向けてうめいてる。
ちゃんとわかってるってば。
そんなこと疑わないよ。
私はぐいとウォルターの手をつかんで引っ張った。
「話があるんでしょ? 聞くよ。入ろ?」
「ああ、まあ……じゃあ……」
笑顔を向けると、少し顔を赤くして、照れくさそうにゆっくりとした足取りでついてくる。
でも、すぐにその顔から笑みが消えて、暗く沈んだ顔になるのが、振り返った私の目には映っていた。
……うん、なんか、深刻らしい。
+++++
……いつになったら話してくれるのかなー?
ふたりきりの公園で、ベンチじゃなくブランコに座って。
いくら待っても一向にウォルターは口を開かない。
『学校で何かあったの?』『まぁ……』『仕事のこと?』『うん……』『ケンカ?』『そうだな……』のぽつりぽつりのやりとりを済ませて、後は無言。
ブランコに座って、背中を丸めて、膝に両手を置いて、うつむいて、じっとしていて、黙り込んでいる。
……うーん。
私はせっかくだからブランコをこいでいる。
だって、重たい沈黙に、どうしたらいいかわからなかったし。
少しでも明るい気持ちになってくれればな。
私がこどもっぽく振る舞うことで少し気持ちが和んでくれればなんて思ったり。
『ブランコとか久しぶり』なんて笑って言ったりして。
何かまぶしいように細めたおだやかな目でやさしく見つめられたりして。
大人っぽさにドキッとして。
でもすぐにウォルターはまたうつむいてしまって。
「なぁ、依理愛……俺が何してても嫌いになんない?」
しばらくしてぽつりと出された言葉に私はブランコをこぐのをやめた。
小さく揺れ続けるブランコをざっと足で止めてウォルターを見る。
こちらを見ないまま……長い前髪が被さっていて目は見えないけれど多分……で、口元には力のない笑みを浮かべて固めていて。
出された言葉は口調は軽かったけど無理にってカンジで。
いつも大きいなと思う背中は小さくて。
なんだか申し訳なさそうにしていて。
もしかして。
学校の執行部のお仕事って大変って聞いてたけど。
つらいこともあるんだろうなぁ。
それって、自分だけのことじゃなくて、相手がいるからだよね。
ウォルターはそれを気にしてるんだ。
……誰かに、何か言われたとか……?
それで自分を責めてるとか。
じゃないと出てこない言葉だもんね。
……でも、多分、自分だけじゃないこと。
だからこんなに悩んでる。
……どうしよう。
答えなんて決まってる。
……だけど、それだけじゃダメなんだよね、きっと。
「私はウォルターを嫌いにならないよ。たとえ何をしてたって、ウォルターなら嫌いにならないよ。そりゃ怒ったりはするけど、でも……好きだよ。その気持ちは変わらないよ」
「……」
案の定、返ってきたのは沈黙で。
「……そっか」
しばらくしてから小さく笑ってそう言ってまた黙り込んで。
言いたいことがあるのに言えないってふうで。
私はちょっと考えて、ケータイを取り出した。
そしてメールを打つ。
少しして、彼氏様のケータイが鳴った。
私の送ったメールだ。
もそもそとポケットからケータイを取り出して画面を見たウォルターがぷっとふき出す。
<頑晴れ>
私の送った文面はコレ。
ゆるい笑みを浮かべたウォルターが私にケータイを向ける。
「依理愛、コレ……字が間違ってるぜ。ガンバレのバの字は『張る』って字だろ。コレ『晴れる』って字じゃん……」
「いーの!!」
私はキッパリと言い切った。
ブランコをおりて、ウォルターの前に立つ。
そして、腰に手を当てて、強い口調で言い切った。
「間違ってない。それでいーの。頑として晴れ。絶対に晴れるの。たとえば今日が雨だったとしても、明日は晴れるかもしんないじゃん。っていうか、いつか絶対に晴れるんだから、その時に見たお日様に笑えるように、ガンとしてなくっちゃダメだよ!!」
明けない夜はないって言うじゃん。
その時のために、いくら今が暗くても、前が見えなくても、先のことがわからなくても。
がむしゃらに突き進んだっていいし、壁に手をついて歩くんだっていいし、じっと立ち止まったっていいから。
なんでもいいから。
誰かに嫌われるとか気にしちゃいけない。
「自分の弱い気持ちと戦って、震えながらでも立ってることが『勝ち続ける』ってことなんだ、って誰かが言ってたよ。誰かに勝つとか、自分が正しいとかじゃなくてさ。自分も含めて誰かが悪いって決めつけちゃうのは簡単じゃん。そうじゃなくて、いつか晴れる時のために、胸張っていられるように信じる!! 自信なくしてくよくよしてたらもう負けちゃってるじゃん!!」
「……えっと、依理愛……」
彼氏様ぽかん。
私は暴走します。
重要なのでもう一度。
私は暴走します。
拳を握って力説する。
「晴れることは確かなんだから、絶対なんだからねっ! 気持ちもそう持たなくっちゃ。そしたらそんな間違ったことなんかできないよ。そうならないよ。大丈夫だよ。そうでしょ? ……ウォルター?」
うつむいたウォルターが震えている。
「ぷっ……くくくっ……はははっ……」
大きく肩を揺らして、ふいに顔をあげると、大笑いし出した。
「あはーっはっはっはっ!」
目に涙を浮かべて、大声で笑ってる。
私、きょとん。
はっ。
「ちょっとウォルター! 夜だよ!! 静かにしてっ」
「だっておまえっ……面白くてっ……ダメだ、笑える!!」
私が真っ赤になって言っても効かない。
ウォルターはただひたすらに笑い続けた。
「ちょっ、依理愛……『立ってろ』とかって、俺はボクサーかよ。ひっ……『勝ち続けろ』とかって、プッ……、いいコーチになれるぜ。くっ……はっは……」
時々笑いを挟みながら皮肉を言う。
……人が元気づけようとしたのに。
腹を抱えて笑うなんて、なんて失礼な。
私は唇をとがらせてそっぽを向く。
もういいですよぅーだ。
「俺が腹痛いだけとかだったらどうすんの、まったくおまえってばっ……おかしなヤツー」
ニタニタ笑ったままのウォルターが立ち上がってぽんと頭に手を乗せてくる。
「でも、ま、ありがとな」
そのまま『イイコ、イイコ』された。
う、うーん……。
そんなことじゃ私の機嫌は直らないぞ。
「じゃあ、なに、なんで急に『会いたい』って……」
ムスッとして言ってみる。
ふっとウォルターが真顔になった。
街灯の光に黄色っぽい目がキラリと輝いて。
それは先ほどの涙の名残りだと思うけど、うるんでいて、つやっぽくて、甘くて。
ドキリ。
片方の手を腰に当て、もう片方の手で赤い前髪をかき上げて、どこか困ったような大人びた微笑を見せる。
私をじっと見て。
「……なんか、眠れなくてさ。ってか、眠る気になんなくて。……じっとしてもいられなくてさ。なんでもないんだ。あー……おまえの顔見たくなって。依理愛、おまえの」
やさしく目を和ませて笑う。
「……見たら、安心した。もういいや! 元気出た」
「あ……」
しょんぼりしてたの、本当なのに。
やっぱ話してはくれないんだ。
それはちょっとショックだけど……。
しょうがないか。
ウォルターにはウォルターの世界があるもんね。
「……ちょっと、こっち来て、ウォルター」
「なに? 依理愛。ってか、なんだよ……」
眉をひそめてちょっと不可解そうにしながら私の手招きに応じて距離を縮め、さらに手をひらひらさせて屈んでくれるように促す私に、ウォルターは素直に従う。
私はかわりにつま先で立った。
……チュッ。
「……眠れそう?」
「依理愛……」
キスされたおでこに手を当ててウォルターが真っ赤になってあわあわする。
私はそれを面白く眺めた。
すると、ガシィッと肩をつかまれる。
ん?
目の前に目をつり上げたウォルターの顔。
「眠れねぇ!! おまえのせいで眠れなくなった!! 責任取れ、依理愛!!」
「ええぇえぇぇっ……」
調子に乗って迫ってくる彼氏様を、殴って止めようかどうしようかと、私は本気で悩んだ。
(おしまい)