ウォルター夢(依理愛)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:学パロ(ウォルター高校生)。
主人公は普通の学生の女の子。
内容:ウォルター夢。
カレカノの間柄。甘々。乙女心たっぷり。
名前を変換しない場合『依理愛(いりあ)』になります。
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「ねぇ、ウォルター! 早く早くー!!」
「ちょっと待てって、依理愛ー!!」
踏み切りの前で立ち止まり、振り返って手招きして呼ぶと、少し後方でバッグをごそごそしながら、彼氏様が焦って苛立ったような声を上げる。
でも、だって、ほら……。
カン、カン、カンッ……。
警報機が鳴り出す。
遮断機が下りてくる。
……あーあ。
私はもう一度振り向いた。
「電車来ちゃったよー……」
ようやくバッグをごそごそし終えて肩にかけたウォルターが走ってくる。
「悪い」
ひとこと言って隣に並ぶ。
まぁ、それ自体はさ、別にいいんだけど。
そんなことで怒ったりしないし。
映画観に行くのが楽しみで気が急いちゃって、本当は慌てなくてもじゅうぶん間に合う時間だし。
私にはもっと他に気になることができた。
隣のウォルターを覗き込む。
「カバンの中ちゃんと整理してないからだよ」
私はちょっと口をとがらせて言う。
ウォルターのバッグの中はぐっちゃぐちゃ。
だから、何か取り出す時にも、しまう時にも、いちいち時間がかかる、困ったことに。
ウォルターが困惑顔で髪をかき上げる。
「だってさー……」
あ、ほら、ごまかそうとしてる。
私は前に向き直った。
もうすぐ電車が来る。
私たちの前を走り抜ける。
隣で彼氏様はぶつぶつと言い訳を続けてる。
「この間また人から同じヤツもらって、前の誰かに押しつけようと思って、まだ持ち歩いててさー……」
ぶつぶつ言うけど、結局直す気ないんでしょ。
で、人が手を出すと怒るんだよね。
『どこに行ったかわからなくなった』とか言って。
たいていそうなんだから、部屋とか汚い人って。
初めてウォルターの部屋に遊びに行った時はびっくりした。
『これでも片付けたんだけど……』って言われて。
片付けようとしたら『勝手に触るなよ!』って怒られて。
座るスペースがある分マシかなぁと諦めて。
……部屋の汚い人って独占欲強いってホントかな?
私は澄まし顔で『はいはい』とこどもにするように適当にうなずくのをやめ、好奇心を浮かべてウォルターを覗き込む。
「ね、最近買った一番面白いのって、なに?」
カンカンと鳴る警報機の音に負けないように大声で言う。
ウォルターがちょっときょとんとして、それからやんちゃなこどもの顔でニッと笑った。
「コレコレ。このおもちゃ。手足だけじゃなく舌も動くんだぜ?」
嬉しそうに取り出して見せるケータイストラップ……どうやらガチャガチャで取ったらしい……のカエルを見て苦笑する。
……もう、まったく……。
「かわいいねー……」
「だろ? めずらしいから買ったの。そしたらさー……」
得意げに笑って話す彼氏様。
そんなあなたがかわいいよ。
あなたの笑顔が大好きだよ。
思わず見とれちゃう。
「あー……」
ガタンガタンと電車が走ってきた。
しゃべり疲れた様子のウォルターが息を吐いて口を閉じる。
私はそのまま黙るんだと思った。
そしたら、突然、電車に向かって。
「俺の彼女はかーわーいーいーっ!!」
口元に手を当てての大声。
発したのはもちろん隣の彼氏様。
ちょっ……!!
「依理愛は可愛いーっ!!」
それは目の前を走る電車のガタンゴトンにも負けないくらいの大声で。
止める間もない。
「俺は依理愛が大好きだーっ!!」
まるで電車に宣言するみたいにわめくウォルター。
ちょっと、ちょっと待ってよ。
がしっと彼氏様の腕にしがみつく。
「ウォルターってば、何やってっ……!!」
それは踏み切りで立ち止まってるのは私たちだけだけど。
車とか向こうで待ってる人とかに聞かれたら、どうするの?
恥ずかしいじゃん!!
もーっ、顔が熱いよ。
こっちを振り向いたウォルターが二ヘッと笑う。
「いや、やってみたかったらさ」
その頬が赤い。
「もうっ……やってみたかったって、なに……!?」
「だからさ」
電車が通り過ぎて、音が止み、遮断機が上がっていく。
でも、私たちは歩き出さない。
彼氏様は赤い顔で、それでも得意げに、そして照れた顔で笑って言った。
「俺の依理愛は可愛いって、大好きだって、世界に言いたかったんだけど、みんなに知られちまったらもったいねぇだろ? 取られたくないし。俺だけの依理愛だもん。可愛いってわかってるのは俺だけでいいって」
『だから今がチャンスかなと思って叫んでみた』と一生懸命いつもの顔をしようとしながら言う。
でも、その顔は本当に赤くて、真っ赤で。
ぽりぽりと頭なんかかいちゃって。
恥ずかしそうで。
カッコつけてるのにカッコつけきれてない。
……もうっ……。
そういう場合はね。
私は手をのばしてウォルターの手を取って握った。
ぎゅっ。
にっこりと笑いかけて言う。
「ほら、あなたのだよ。これなら見てわかるでしょ。ね?」
「依理愛……」
ぽかんとしたウォルターがくすぐったそうに笑う。
手をつなぎ合ってふたりでくすくすと笑う。
「あ!」
また警報機が鳴り出して、遮断機が下りてきた。
電車が来る。
通り過ぎる瞬間、ふたりの唇がくっついたのを、誰も見てなかった。
……と、思いたい。
神様以外は知らなくていい。
……部屋が汚い人って独占欲が強いって話、ホントかも。
(おしまい)