ウォルター夢(依理愛)
夢小説設定
この章の夢小説設定設定:学パロ(ウォルター高校生)。
主人公は普通の学生の女の子。
内容:ウォルター夢。
カレカノの間柄。甘々。乙女心たっぷり。
名前を変換しない場合『依理愛(いりあ)』になります。
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「だーかーらっ、俺は言ったんだよ、『ロミジュリ』は嫌だって。おんなじ寝てんなら『眠り姫』とか『白雪姫』とかでいーじゃん。アレは目覚めるしっ」
イライラと吐き出してポテトを口に運ぶ彼氏様。
「えー……あれも一応目覚めるじゃん。その後死んじゃうけど……」
「そこだ!!」
目をつり上げてビシィッと指を突き付けてくる。
『どこだ!?』……なんて言わないけど。
学園祭でウォルターのクラスは劇をやることに決まったらしいんだけど、その劇の候補にあげられた作品がそうとう気に入らないらしい。
……まぁ、わかるけど。
怖いくらいの真顔をテーブル越しにずいと近付けてくる。
「アレ嫌だ。なんで死んじゃうわけ? ってかあのミスはねぇだろ。アレでああなってああなるのが嫌なわけ。だってマヌケだろ、なんか」
あーもう……。
「ロマンがわかってないなぁ……。女の子なら誰でもあこがれるお話だよ。一目で恋に落ちて、でも親が敵同士で、それでも結ばれようとして、叶わない悲劇って」
「……」
ウォルターが死んだ魚のような目をしてぷいっと横を向く。
うーわー……。
どうやら私の発言は彼氏様を呆れさせてしまったらしい。
……っていうか、ちょっと怒らせた?
重たい音をさせて椅子に背中を当てて、ムスッとして口をとがらす。
「とにかく、だったら俺は絶対に主役はやらねぇって言ったの。ダリぃし! それくらいだったら漫才でもやった方がマシだ」
「えっ、ウォルターが漫才? 私、見たい!!」
「依理愛ー……」
ウォルターがテーブルに突っ伏して頭を抱える。
「ちょおっと、危ないよー」
私は慌ててひょいとハンバーガーとかが乗ったトレイを持ち上げる。
そして自分の前に置いた。
ふたりでひとつのトレイには、飲み物ふたつとハンバーガー、それにポテトの大きいサイズが乗ってる。
「でもさー……王子様だとカボチャパンツとかじゃないの? それもけっこー笑えるよ?」
顔にかぶさった長い赤い前髪の隙間から、黄色っぽい目が現れて、ジトッと私をにらむ。
「女は残酷なことを言う……」
「ぷっ」
私は思わずふき出した。
「あははっ……だって、そうでしょ? 衣装、カボチャパンツに白タイツとかでしょ? 想像するとおかしいよー!」
「想像すんな!」
またウォルターが憤然として顔を背けた。
「……ぜっ……たい、ヤだ。変えてもらう。そんなもの死んでも穿かねぇ」
「ウォルター死んだら穿かせちゃおうかな」
「依理愛!! さっきからヒドくねぇ!? 俺のことからかってる!? ……ってかなんか、怒ってる?」
「……うーん」
おっ、気づきましたかー。
うん、さすがに鈍くてもわかるよね、こう露骨だと。
でも、一応、にっこり。
「そんなことないよー」
「いーやっ、嘘だね。怒ってる。なんか機嫌悪い。普段おまえそんなこと言わねぇもん。なに? さっきの劇をバカにしたこと?」
起き上がって、私を見て、首を傾げてみせる。
ぶっぶー。ハズレ。違いまーす。
でもすぐには教えてあげない。
私はにこにこ笑って言う。
今日はちょっと意地悪な気分なんだ。
「私のところはね、メイド喫茶っぽいのやるんだ。メイド服着て『お帰りなさいませ、御主人様』ってやるの。見に来てね!」
「嫌だ」
きっぱりと言って、口をへの字に曲げる彼氏様。
イライラとして髪をかきあげて、ぶんぶんと首を横に振って。
「ダメだ、ダメダメ、絶対ダメ!! 依理愛がメイド服なんか着て他のヤツに『ご主人様』って言うなんて絶対にダメ!! 反対!! 俺は許さねぇよ。断れよ。裏方に回れ」
「……ふーん」
私はちょっと口をとがらせて見せる。
「自分は他の女の子の王子様やるくせにー?」
「え……」
とたんに怯むウォルター。
わかってるけどね、押しつけられたってことは。
得意の『ダリぃ』も効かなかったんでしょ。
私はカップを持ってストローで中の氷をかき回す。
ぐしゃぐしゃぐしゃ。
ウォルター、華があるもんね。
みんなから頼まれれば断れないもんね。
でもね。
私はジュースを一口飲んで、カップを置いて、頬杖をついてウォルターに笑いかけた。
「ねぇ、じゃあ、『水の妖精』の話はどう?」
「は? ……『水の妖精』? 何それ」
突然の言葉に聞き返してくるウォルター。
私は澄まして答えた。
「だから劇だよ。『水の妖精』って話、知らない? ある男の人がね、愛する女性と結婚するために決まりがあって森に入るんだけど、そこで出逢った水の妖精に恋しちゃうの。男の人はその妖精を連れて森から戻るんだけど、色々あって妖精は仲間に自分の国に連れ戻されちゃうんだ。でも、その際に男の人と約束するの。『自分以外の女の人と絶対に結婚しない』って。でも、男の人はすぐにもともと愛してた女の人と結婚しちゃうのね。それで、妖精との約束を破ったから、水の妖精が迎えに来て、男の人を連れてっちゃうの、自分の世界に。それで永遠に一緒に暮らすんだよ。ふたりで……」
「はー」
ウォルターがぽかんとしてる。
「よく知ってんな、おまえ、そんな話。で、なんでそれがいいわけ?」
またポテトを取って口に運びながら言う。
「こらっ、ポテトばっか食べて! 体に悪いよ」
「悪い」
ちょっと怒ったフリして言うと、すぐに謝って、置きっ放しだったハンバーガーに手をのばす。
冷たくなったハンバーガーにかぶりつく彼氏様を眺めながら私は話した。
「いい話じゃない? 切なくて。なんかさー、ずーっとふたり一緒っていうかさ、もう離れらんないわけじゃん? 自分のものにしちゃうっていうか……」
「へえー……」
飲み物のカップに手をのばしながら目を見開いてウォルターが言う。
「女はそういうのが好きなのか……」
「っていうか、ね」
私は笑顔を消して、ギロリと彼氏様をにらみつけ、ムスッとして言う。
「女の子だって嫉妬するんだよ? 他の女の子の王子様役なんて絶対にやっちゃヤだーっ! ダメーッ!!」
「えっ……」
ストンとウォルターの手からカップが落ちる。
「ええええええっ」
ガションッ。
カップのフタが外れてわずかながらも水と氷がこぼれ出す。
「わっ、ウォルター!!」
「あ、悪い、依理愛!!」
向かいでペーパーで必死にテーブルを拭くウォルターを手伝いながら、その顔を見て、私は『王子様役やめてくれるかな……』と願っていた。
(おしまい)