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ピンポーンという音に反応して大して警戒もせず玄関へと行きガチャッとマンションの部屋の扉を開け放った自分のうかつさをバジルは呪った。
目の前に立っていたアンディがにこりともせず無愛想に『やっ』と片手を顔の位置まで控え目に挙げてこんばんはを言った。
もう片手には何が入っているのか重たそうな大きく膨らんだ大きなビニール袋を持っていて。
予想外の相手に……少なくとも訪問の予定はなかった……驚いてしまって穴が開くほどマジマジと見ていると相手が決まり悪そうにもぞもぞとした。
手に持っているビニール袋がガサガサと音を立て、その中の何かがガチャガチャという。
「ねぇ、入っていい? バジル」
上目遣いで見上げてくるアンディは、その片目の眼帯も、眉の上で切りそろえられた金色の髪も、白い肌も、何もかもバジルのよく知っている昔と変わらないが、輪郭からはやや丸みが欠けて大人っぽく、長い金髪は無造作に後ろでひとつに束ねられていて、成長していた。
いや、久しく会っていないわけではないが、こうして突然見ると昔に戻ったように感じて、つい比べてしまう。
自分だってもう二十歳を過ぎている。
こいつだって成長する。
バジルはそう納得して、胸の中にじわっと湧き出た『不思議感』をそう片付けて、アンディをギロリとにらんだ。
「なんだよ、突然」
本当に突然だ。
来る前の電話もメールも無しだった。
アンディは行動力のあるほうだが、ついでに言えばわりと気まぐれなほうだが、他人の家にこうしてふらっと現れるなんてめずらしい。
外に出ても自分のペースというかそれを守って崩さないのに。
それを守れなくなる他人の城に自ら乗り込もうとは。
めずらしいのか、自分は知らないが、少なくとも自分相手には。
そうバジルは思う。
何かあったのだろうか?
アンディはことんっと首を傾けてバジルをじっと見たまま言う。
「バジル、いるかなと思って。来てみたら居たからよかった。コレ、重いから中に入れてよ」
そのままぐいっとバジルを乱暴に腕で押しのけて中に入ろうとする。
「おい、ちょっと待て。まだ『いい』って言ってねぇ。あとその説明じゃ何もわからなっ……おい、コラッ」
怒鳴る声が背中を追いかける形になってしまった。
アンディは何も気にした様子がなく入り口で靴を脱ぐとスタスタと歩いてまるで我が家に帰ったかのように中に入っていった。
バジルは呆気に取られて部屋に消えていくその背中を呆然と見送ったが、ハッとすると首をぶんぶんと横に振って、大きなため息を吐いて玄関を閉めて追いかけた。
(つづく)
