分かち合うもの
掃除終わり。
床までピカピカに磨かされたアンディはどさっとバジルのベッドに仰向けになった。
「はぁー、疲れた……」
「おい、俺のベッドだぞ」
上から見下ろして不機嫌そうに言うバジルに、アンディは一瞬だけニッと笑う。
「うん。疲れたから休んでく」
そして目を閉じた。
バジルはその頭の横に腰かけた。
そしてそちらを見ずに言う。
「……バカか。俺がいるんだぞ」
「嫌だけど……」
「嫌なのかよ」
アンディはもぞもぞと動いて寝る体勢を整えた。
仰向けで、ベッドに沈んで、うっすらと笑った。
そして眠そうな声で言う。
「バジル病院臭いし、でも……」
カタン、と首をバジルのほうに傾け、その背中に鼻を押しつけるようにする。
「こどもの頃は『あそこ』で寝てたんだよね……」
『あそこ』。
バジルが壁を見つめて黙り込む。
それはいい思い出ではないけれど。
アンディにとってはただの悪夢の連なりだったけれど。
それでも、こどもの頃、『あそこ』で眠っていたのだ。
ただの事実だ。
バジルにとっては少し違う。
バジルが黙って考えていると、やがてアンディの寝息が聞こえ出す。
本気で寝たのかと、驚いて振り返るバジルの目に、アンディの安らかな寝顔。
『はぁー』と疲れをため息にして吐き出して、バジルは少しの間寝顔を眺めると、アンディの胸の上に体重をかけないようそっと身を傾ける。
手が動かないことをもどかしく感じながら、その寝顔に顔を近付け、そっと眼帯越しにその眼にキスをした。
どうあれ、この眼は自分を捧げたものの、象徴なのだ。
……知られたらたまらない。
どんな思いを抱えているかなど誰も知らなくていい。
バジルは横に寝転がり、天井を見つめた。
そしていつしか眠りに落ちた。
懐かしい夢を見た。
懐かしいはずなのに、それは、血みどろではなく。
そんなことはなかったはずなのに、何故か懐かしく、美しかった。
自分と同じ服を着た少し小さな金髪の少年の手を引いていた。
そんな思い出はなかったはずなのに。
切なかった。
……涙が出そうなほど、それは、……だった。
(おしまい)
