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分かち合うもの






「アンディ……」

 特徴のある短い垂れ眉をさらに八の字に垂れさせて、その根をきゅっと寄せて、つり上がり気味の目を最低まで細くして相手をいまいましげににらみつけるようにして、それでいてその目は涙が出そうなほどうるんでいて、頬にはたらりと冷や汗を流し、大きな口はいつもの皮肉げな笑みを浮かべておらずその余裕さえないようでピクピクと唇を引きつらせていて……なんていうか……とにかく必死な形相だった。

 その顔が檻の向こうから体をはみ出させそうなほど押し付けられて近づけられている。

 アンディは『ちょっと様子見ておこう』なんて気楽に立ち寄ってこれだったために怯えた。

「頼みがあるんだが」

 バジルが口に含んだ苦いものを吐き出すように嫌そうに言う。

「……バジルがボクに頼み?」

 『えっ』と驚きの声を上げるという大変失礼なことをしてアンディはじりじりと後ろに下がった。

 あまりにも予想外すぎた。

 普通に考えれば何か企んでいる。

 いや実は相手はバジルの振りをした別人かもしれない。

 そんな荒唐無稽な考えまで浮かぶ。

 アンディは距離を取ってジロジロと用心深くバジルを窺った。

 いつもなら即座に嫌味や文句のひとつも言う……『なんだその態度は失礼な奴だな』など……バジルが無言でアンディが落ち着くのを待っている。

 アンディはこの場から逃げようがないことはわかっていたし、バジルの頼みが何か好奇心もあったので、おそるおそる言った。

「一応、聞くけどさ、……何?」

 ずいとなおいっそう顔を近付けて檻に頬を挟まんばかりにしてバジルが真剣な顔で言った。

「この、部屋の、掃除をしろ!!」

「……」

 ぽかーん。

 アンディはぱかっと口を開けたまましばらく固まっていた。

 バジルがたまらずわめく。

「掃除だ、掃除!! 部屋が汚ねぇんだよ!! どんだけ掃除してないと思ってんだよ!!」

「この間したんじゃ……」

「いつのことだと思ってんだ!! おまけに俺にビビりやがってろくに床も掃かなかった!! もう耐えられねぇ!! このままじゃ死ぬわ!!」

 手が自由に使えたらおそらく檻をつかんでガシャンガシャンやっていただろうバジルが檻に体当たりすることでそれをやっている。

 アンディは慌てて手をゆっくりと上下させることと静かな声でなだめた。

「……ああ、はいはい、落ち着いて」

 キッとにらまれる。

 ちなみに涙目だ。

 アンディはその水色の目に仕方なくうなずいてみせた。

「……わかった。ボクがやるよ」






(つづく)
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