夏の終わりの花火(途中)
「……コレだ」
「いや、こっちじゃねぇ?」
「こっちこっち」
「こっちのほうが変わったやつ入ってるぜ」
「ダメ。大人数なんだから、いっぱい入ってるほう」
「アンディ、それつまんねぇって。ガキじゃん。ってか、もろ『お子様用』じゃん!! 年齢考えろよ」
「おまえこそ」
「今なんつった?」
「別に。……花火で『変わってるやつがいい』っていうほうがこどもじゃないの、って」
「『別に』って言いながら全部言った!!」
「はいはい。コレでいいね。文句ないでしょ」
「スルーすんな!!」
アンディとウオルターはスーパーの片隅の花火コーナーで仲良く(?)花火を選んでいた。
ひとつの花火セットを手にしたアンディをキッとウォルターがにらんでいるところ。
ちなみに花火は夏も終わりなので半額になっていたりする。
「……いや花火はもうそれでいいけどさ、アンディ、今俺をバカにしただろ!? ガキって言った、ガキって!!」
「……そう聞こえた?」
「ああ!!」
ウォルターが力いっぱい返事をする。
こっくんと深くうなずいて。
アンディは視線を花火に落としてぼそりと言った。
「じゃあそうなんじゃない?」
「ヒドッ!!」
しごくどうでもよさそうに吐くアンディにウォルターががくりとして嘆く。
だがすぐに元気を取り戻した。
うつむけていた顔を上げて目をキラリと光らせて『フッフッフッ……』と不気味に笑ってアンディを見る。
「もうこうなったらぜーったいに許さねぇぞ……」
花火セットを手にアンディがたじろぐ。
「……何する気だよ」
ウォルターはひとつの箱の中の花火をがしっとわしづかみにした。
「……アンディ、今晩をせいぜい楽しみにしておくんだな!!」
回転花火を手に笑う。
それはひとつの定番のイタズラ道具で、何に使われるのかと言うと……。
アンディはあきれ返って冷たい目を注ぐ。
「……ウォルター、それ、わかってるとあんまり驚かないと思うよ? ウォルターが回転花火を人の足元に投げるとかじゅうぶん予想できることだし。危ないからやめてね」
「ぐっ……」
「危ないからやめてね」
ズイッと怒りのあまり能面のような無表情になった顔をウォルターに近付けてアンディは念を押す。
これで本当にやったら、本当にこどもだ。
悔しそうな顔で赤くなって言葉に詰まっているウォルターを放っておいて、アンディはさっさと花火選びに戻る。
「もう一袋くらい必要か……。どれにしよう?」
チラッと視線がウォルターに向けられる。
それとなく訊ねられたウォルターは、悲しげで淋しげな顔でただ黙ってアンディを見つめ返す。
しばらく見つめ合った後、アンディは最初ウォルターが手に取った花火セットに手をのばした。
「……まぁ、変わったものもあったほうがいいしね」
ウォルターがニッと笑った。
「なぁなぁ、アンディ、ヘビ玉あるぜ、ヘビ玉」
「えっ、何これ、『燃えてのびる』……?」
「ほら、喫茶店のストローの袋を縮めたやつに水をかけるとのびるだろ。あんな感じ?」
「じゃあそれでいいじゃん」
「面白いんだって。買っていこう。あっ、おい、忘れずにロケット花火」
「うるさくて近所迷惑だから却下」
「爆竹とか」
「却下」
「回転花火は絶対に買うからな!!」
「ボクに使ったら殺すよ?」
「この程度のイタズラで殺されるとか!! ……いいぜ、わかったよ、カルロに使うわ」
「……」
「……アンディ?」
「ソレもうちょっと買って行こうか」
「……マジで?」
ふたりの間の買い物カゴの中にどさどさどさ。
すまし顔のアンディとニヤニヤの抑えきれないウォルター。
さらに棚へと手をのばす。
「アンディ、これ、相性診断できるって。ほら、見た目同じだけど、色は種類があるって」
「へぇ……同じ色なら相性ピッタリか」
「やってみようぜ。みんなで一度に並んでいっせーのーせーで」
「どうやって一度につけるのさ」
「ろうそくかなんかでっかいやつ買っていってそれで一気にいけばいいじゃん」
「蚊よけもいるね」
「あー、虫とか寄ってきてコニー嫌がりそうだなぁ。夜に明かり点けてるとやってくるだろ。パニックになるぜ、きっと」
ニシシッと笑うウォルター。
「虫全般よけ? コレにそんな効果あるかなぁ」
蚊取り線香を手にアンディが不安げに首をひねるアンディ。
「大丈夫だろ。煙って嫌がんじゃん、虫とかって。あと、ホイ、着火ライター」
ドサドサッとウォルターが買い物カゴにライターを落とす。
「一個でいいだろ。この太いろうそく買って行こう? 何個いるかな……」
「もう人数分でいいじゃん?」
「お金がなくなるって……」
いい加減なウォルターに顔をしかめたアンディがカゴの中の物を戻していると……。
(つづく)
