幼稚園ミニ3
赤々と燃えている枯れ葉の山の傍で。
アンナ先生とアンディ君とジョゼフ君が寒そうに小さく背を丸めて座っています。
他のこどもたちは園のお庭で遊んでいます。
アンナ先生の手には長い菜箸が握られています。
たき火の枯れ葉の下には、銀のアルミにくるまったさつまいもが入っていて、それが焼けたかどうか、その箸で突き刺して試すためです。
「アンディ、そんなジッと見てないで、遊んできたら?」
体育座りで小さくなって火にあたりながら揺れる炎をじっと見つめているアンディ君に、アンナ先生は若干あきれた様子で、目を細めて横を見て言います。
まるで、それは、焼き芋がいつできるかと待っているように見えたものですから。
ジョゼフ君もいますが、それはただたんに寒くて座っている様子でしたので。
アンナ先生は困惑気味に言います。
期待の目をたき火に注いでいるように見えるアンディ君に向かって。
「……まだあと30分は必要だから」
「だって寒いよ」
ツンとして言い返して、アンディ君はさらに火に近付きます。
両手を差し出して温まります。
それはその言葉が嘘ではないことを示していました。
アンナ先生がちょっと息を吐きます。
『こどもは風の子』だというのに。
「アンディ! 火に近すぎ!! もうちょっと離れろよ」
後ろからウォルター君が近付き、ぐいと後ろにアンディ君を引っ張ります。
「……うん」
アンディ君はびっくりした顔で目を見開き、しばらくしてゆっくりとうなずきます。
その頬は、心配されたということに、ちょっと赤かったりします。
後ろから抱きつくようにされて下がらされたことに少し恥ずかしそうです。
アンディ君が無事に安全な距離に離れるのを見てとると、ウォルター君は安堵した様子でまた遊びにその場を離れていきました。
それをアンディ君の目が追います。
ちょっとうらやましそうに。
「行ってきなさいよ」
疲れたように言うアンナ先生に、アンディ君は『ううん』と首を横に振ります。
また体を小さくして、振った首を横に傾けて、悲しそうに。
「お腹すいた」
ボソッとつぶやきます。
『やっぱり待ってたのか……』とアンナ先生はあきれ顔です。
「だからあと30分はできないってば……」
そこにコニーちゃんが笑顔で近付いてきました。
「アンディ! お腹すいてるの? なら、食べられるもの持ってるけど」
『集めたやつ、あげる!』といい笑顔です。
大きなビニール袋の中から小さな袋を取り出し、中から赤い小さな実を取り出し、手の平に転がして乗せて見せます。
「ほら、コレ! 食べていいわよ。さっき集めたの。食べられる木の実。……赤いところだけ」
「ん」
素直に渡された赤い実を口に含んでいたアンディ君がその言葉に途中で動かしていた口を止めます。
「……え?」
『赤いところだけ?』と目で訊ねます。
コニーちゃんはにーっこり笑顔で続けました。
「そう。黒い種の部分は毒だから。タキシンっていってね……」
説明の途中でアンディ君がぷっと口の中のものを吐き捨てます。
当然です。
毒と聞かされては。
そのまま平然と食べられるわけがありません。
コニーちゃんが『あっ』という顔をします。
「ちょっと、ヒドい、アンディ!! せっかく集めたのに!! 黒い部分は返してよーっ!!」
「……先生。毒物を集めている人がイマス」
アンディ君の堂々とした告げ口です。
本人の目の前で言います。
アンナ先生に、コニーちゃんのほうを指さしてまで。
「よし」
アンナ先生はしかめ面でコニーちゃんの手からビニール袋を取り上げました。
「没収」
「なっ、横暴よーっ!!」
ムッとしてコニーちゃんがわめきます。
悔しそうに、地団太を踏みかねん勢いで。
しかし誰も聞く耳を持ちません。
アンナ先生もアンディ君もそっぽを向いてしまっています。
ひとり、それを見ていたジョゼフ君が、『ははは』と明るく笑っています。
こどもたちが走り寄ってきます。
赤組のこどもたち大勢です。
「先生! 焼けたーっ?」
「あともうちょっとかな……」
箸を焼き芋に刺してみたアンナ先生が困ったように苦笑して答えます。
みんなが『なーんだ』とまた散り散りになっていきます。
ウォルター君が残念そうなアンディ君に手を伸ばしました。
「ほら、アンディ!」
「……うん」
アンディ君が少しためらってから、その手を取って立ち上がります。
焼き芋が焼けるまであと少しでも、待っていることには飽きました。
アンディ君はウォルター君達と遊びに園のお庭に駆けていきました。
……焼き芋ができてみんなで食べるまでのあと少しの間だけ。
(おしまい)
→オマケ
