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幼稚園ミニ3




 どさどさっと袋から落ち葉が流れ出ます。

 地面に置かれた4人の集めてきた袋を順番に取り上げてひっくり返して。

 大きな山を作っていきます。

 (コニーちゃんも落ち葉を拾いに行っていたのですが、その中にコニーちゃんの分の袋はありません)

 またひとつ大きな袋をシルヴィオ君が持ち上げて中身を出しました。

 すると、それを見ていたコニーちゃんが、いきなり大声を出しました。

「ちょっと、コレ! 夾竹桃の葉っぱじゃない!! 猛毒よ!?」

 しゃがみこんで一枚の葉を手に持って。

 大きな赤い目を見開いてさらに大きくしてみんなの顔を順に眺めます。

 とがめられたようで、みんなは『え……』とポカンとします。

 ちなみにアンナ先生はバケツに水をくみに行っていて今はいません。

 コニーちゃんは片手を腰に当てて、もう片手でつまんだ葉っぱをふりふり、並んだ男どもを叱り飛ばします。

「なんでこんなもの拾ってきたのよ!? こんなの燃やしたらみんな煙で悶え苦しむことになるんだから!! 下手すると死ぬわよ!?」

 ものすごい剣幕で怒鳴るコニーちゃんに男の子たちは怯み気味です。

「探して取り除かなきゃ!!」

 『ほら!』とコニーちゃんは呆然と突っ立つ男どもを促します。

 みんながゆっくりと動き始めます。

 落ち葉の上にかがみこんで。

「え……?」

「えーと……?」

「……って言ってもなぁ……」

「どれですか?」

 コニーちゃんは落ち葉の山の上にしゃがんでまた一枚の葉を拾い上げます。

「これよ、これ。この、剣みたいに先のとがった……細い……ユーカリの葉みたいな……もうっ!」

 コニーちゃんは説明の途中でイライラがついに限界にきてプツンと切れました。

 明らかに区別がつかずにおろおろと落ち葉をかき分けているだけの男の子たちを退けて猛然と落ち葉の山の中からその葉を探し始めます。

 みんながホッとします。

「いやぁ、コニーがいてくれてよかったなぁ。知らずに死ぬとこだった!」

 朗らかに笑ってジョゼフ君が言います。

「へー、そんなヤバい葉っぱがあるんだ。ってか、普通に落ちてんだな」

 他人事のようにのんびりとウォルター君が言います。

「焼き芋が原因じゃ死んでも死にきれないね」

 冷めた口調でアンディ君が言います。

「誰ですか、拾ったのは……」

 シルヴィオ君の真剣な問いに誰も答えません。

 区別して落ち葉を拾っていた者などいません。

 ちなみに言えばシルヴィオ君もみちろんです。

 ただ、根っからの真面目な性格が、この事態を見過ごせなかったというか。

 そして誰も心当たりがないのでそれ故にまた何も言えないのです。

「まったくもう……」

 ぶつぶつ言いながらコニーちゃんが集めた葉っぱを空になったビニール袋に入れます。

 もともと持っていた袋と一緒に、大事そうに抱えて。

 ふうと額の汗をぬぐいます。

「危ないとこだったわ……」

 アンディ君が不思議そうにそれを見て訊ねます。

「コニー、君、それをどうするの?」

 『捨てないの?』と。

 何故ビニール袋に入れて大切に持っているのでしょう?

 訊かれたコニーちゃんはにっこり輝く明るい笑顔を見せてきっぱりと言います。

「白組のやつらが落ち葉を燃やすようなことがあったらそこに混ぜようと思って!」

 『えええええ……』とアンディ君がのけぞります。

 ウォルター君やシルヴィオ君も青い顔をしてコニーちゃんをじっと見ます。

 ジョゼフ君は冗談と取ったのかハハハと笑っていますが。

 コニーちゃんはにこにこ笑顔です。

 白組には気に食わないやつがいて積もり積もった恨みがあるのです。

 しばらく黙っていたアンディ君がおそるおそると笑顔のコニーちゃんに問います。

「……えっと、ソレ、毒だよね……?」

 コニーちゃんがいい笑顔でうなずきます。

「ええ、葉や枝を燃やした煙を吸い込むと悶絶するわ!」

 言い放つコニーちゃんを信じられないものを見る目で見てアンディ君は言いにくそうに言います。

「……やめてあげてくれる?」

 『死ぬじゃん』と言います。

 コニーちゃんは真顔になって言いました。

 指を1本顔の前に立てて、声をひそめて言います。

「大丈夫。植物毒っていうのは不安定だから、必ず死ぬとは限らないわ。それに、誰もが同じ効き目ってわけじゃないのよ。その人の身長や体重なんかの個人差やその日の体調によっても違うし」

「……」

 アンディ君は青ざめて呆然とコニーちゃんを見つめて黙りこみます。

 『え? それって、狙った相手には必ずできるってことだよね?』と。

 青い顔をして聞いていたウォルター君が冷や汗を垂らした顔にあいまいな笑みを浮かべて言います。

「……俺、コニーには、何があっても身体検査の結果を知られたくねぇな……」

「ボクも」

 アンディ君が真面目な顔でこっくんとうなずきます。

 シルヴィオ君とジョゼフ君はもう気にした様子もなく落ち葉の入った袋をひっくり返すことに夢中になっているようですが。

 『何よぅ!』とコニーちゃんがアンディ君とウォルター君の反応に怒った様子でぷくーっと頬を膨らませています。

「じゃあ、そんなふたりに、問題を出しましょう!」

 コニーちゃんは急に笑顔に戻って、手に持っていた袋からふたつの植物を出しました。

 それをふたりに見せます。

 片方は咲き始めた朝顔の巨大なものに似た花のついた植物、もう片方は小さな黒い実をつけた植物。

 それを掲げてコニーちゃんは面白そうにクイズを出します。

「この『エンジェル・トランペット』と『デビルズ・アイ』、どっちが毒でしょうっ?」

 『毒じゃないと思ったほうをあげるわ!』と。

 アンディ君とウォルター君は『え……』とぽかんと口を開け、目を半眼にしてジトッとコニーちゃんを見ます。

 なんてクイズを出すんでしょう!

 それでも、一応考え始めたウォルター君は、首をひねって、悩んだ末に指さしました。

「俺、こっち。デビルのほう。エンジェルは毒じゃねえよ」

 そしてアンディ君のほうを見ます。

「え……」

 アンディ君は苦虫をかみつぶしたような嫌そうな顔をしてふたつの植物を見比べます。

「……ボクは、どっちもいらない」

 最低まで目を細めて本当に疑わしいものを見る目で目の前の植物とコニーちゃんを見つめて。

 コニーちゃんが面白くなさそうにムスッとします。

「もう、アンディってば……つまんないわね。ノリが悪いわよ。どっちか答えなさいよ」

「え、ていうか……」

 責められたアンディ君はきょとんとして首を横に傾けます。

「ふたつとも毒なんじゃないの?」

 コニーちゃんがニーッコリとします。

「正解!! はい! ウォルターにはお望み通りこの『エンジェル・トランペット』をあげるわ」

「いらねぇし」

 憮然として言って、ウォルター君は不思議そうにアンディ君を振り向きます。

「なんでわかった? アンディ」

 アンディ君はさらりと髪を揺らして逆の方向に首を傾けます。

「……そんなことより、落ち葉を拾いに行ったはずのコニーが、なんで毒草を摘んできているのかが気になるよ」

 コニーちゃんは黒い実のついたほうを差し出して、『これは食べると黒目が大きくなって美しく見えることから中世の貴婦人たちがこぞって食べたと言われているのよ。だから、ベラドンナ、って名前なの。でも食べすぎると呼吸困難になって死ぬわよ』と嬉々として説明しています。

「……で、なんで集めてきてるのさ?」

 アンディ君の疑問にまぶしい笑顔で答えます。

「白組のやつらが何かした時に……」

 目がキラキラしています。

 希望というか、むしろ野望というか。

 白組の中の特にひとりが嫌なやつで気に入らないのです。

 それを知っているアンディ君はその相手のためにもコニーちゃんのためにも言います。

「……やめてあげてくれる?」

 お願いだから、と。





(つづく)

*以上に挙げた毒草はくれぐれも口にしないように気をつけてください。
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