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とある幼稚園の1日。~お絵描きをしよう! 編~




「ああ……」

 水道のところでアンディ君の手を洗い終えたアンナ先生が、今度はスモックを洗いながら嘆きます。

「なんか先生になったのに洗い物ばっかしてる気がする……」

 おとなしくきれいになった手でアンナ先生の服の裾をつかんでじっとしていたアンディ君は黙ってアンナ先生を見上げます。

 片方の真ん丸い目で、無表情に、じっと。

 ……先ほどの紙ねんどの時間でも服を汚して洗わせたばかりで、また汚して、今度は先生の服まで汚してしまいました。

 最初のは自分のせいではないし、次のはわざとじゃないし、最後のは……。

 アンディ君はうつむいてぼそりと言います。

「……ごめん、アンナ」

 アンナ先生はにっこりとします。

「『先生』だ、アンディ」





 その頃。

 赤組のお教室の中。

 3人の男がひとつの机の前に集まっています。

 額を寄せ合わせるようにして、机の上の一枚の紙に視線を注いで。

 その画用紙には、真っ赤な手形。

「こ、これは……」

 驚きを隠せないといったように愕然としてリカルド先生が震え声で言います。

 画用紙を示す指がプルプルと震えます。

「これは一体どういう意味なんだ……?」

 クレソン先生を見て、次にタイム先生を見て、ふたりに問いかけます。

「テーマは『みらい』だぞ……」

 真っ白な画用紙の真ん中にめいっぱい指を広げて押し当てられた手の平。

 豪快です。

 なんだかたくましいです。

 そして……謎です。

 あごに手をやって考えながらクレソン先生が問いに答えて言います。

「テーマの『みらい』で……赤い手の平だから……『未来はこの手で真っ赤に染めてやる』とかそういうことかもな」

 それを聞いたタイム先生が無表情でボソリと言います。

「阿鼻叫喚の図ですね」

 真っ赤に染まる地球……。

 逃げ惑う人々。倒されるビル。割れるコンクリートの地面。

 キャーッ……!!

 次々と上がる人々の悲鳴。

 まるで特撮ヒーローものに出てくる怪獣が現れたかのごとく。

 街が破壊されてゆく。

 それはそれは恐ろしい図が3人の脳に浮かびます。

 タラリと汗を垂らしたリカルド先生が怖そうにつぶやきます。

「……アイツ、魔王か……?」

 ハッとしてクレソン先生も言います。

「そうか、この手、『世界を我が手中に収める』って言いたいのか……!?」

 ごく真剣にタイム先生も言います。

「世界を征服したいようですね」

 3人の頭には、顔を上向け、金髪のオカッパ頭を揺らして、高らかに笑うアンディ君の絵が描かれています。

 もちろん、都会の空に、支配者として。

 『ハーッハッハッハッハッ……!!』という。

 「人がゴミのようだー」とか言っちゃって。

 楽しそうに。

『・・・・・・』

 怖いほどの静けさです。

「……」

 沈痛な表情で重たく黙り込むリカルド先生。

「俺たちは恐ろしいものを育てているのかもしれない……」

 震える体を己の腕で抱きしめてつぶやくクレソン先生。

「……まぁ、おそらく、『未来は自分の手でつかむ』とかでしょうけどね」

 本当に冷静にタイム先生が真っ当なことを言いました。

 それが真実です。

 ところが、クレソン先生は真顔で『いや!』と言います。

「このまがまがしい赤い色……ヤツは本気だ」

 アンディ君はたんに一番端っこの絵の具を取っただけなんですが。

「……」

 リカルド先生は相変わらず沈黙していますが、タイム先生の発言に、『それもそうか』とちょっと考え直して、深刻さの抜けた明るい顔をしています。

「今のうちに正さないと将来とんでもないことに……!!」

 クレソン先生がワナワナと震えています。

 演技過剰です。

 面白がっています。

 3人は顔を見合わせます。

 そんな3人をアンディ君の仲間であるカラス班の面々は唖然として見ています。





(つづく)
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