とある幼稚園の1日。~お絵描きをしよう! 編~
「……それで、おまえは将来何になるんだ?」
うんざりとしたリカルド先生の問いにウォルター君はきょとんとします。
「えーと……」
急に勢いをなくして黙り込みます。
目を天に向けてぽかんと口を開けて。
絶対に何も考えていませんでした。
「フツーは将来なりたいものとか描くもんだろうが。てめぇはいったい何になりたいんだ? それを描けよ。その前に机をキレイにしてからだけどなぁ!!」
イラッとしたリカルド先生の怒鳴り声。
黙っていたウォルター君がゆっくりと首を傾げます。
そしてボソッと言います。
「なんかバイク乗る人」
それが考えて出した答えです。
「バイク乗れる仕事がいい」
向かいに立ってシルヴィオ君に付き添っていたタイム先生がそれを聞いてボソッと『バイク便ですね』と言います。
ジョゼフ君のところにいたクレソン先生も顔を上げて『新聞配達だな』と言います。
最後にリカルド先生が『ピザの宅配でいいんじゃねぇか』と言います。
「……」
ウォルター君は呆然とします。
あっという間に自分の将来が決められてしまいました。
バイク便か新聞配達かピザ屋さん。
「……もっとカッコイイのねぇの?」
リカルド先生を見上げて訊ねます。
確かにどれも仕事として真っ当ですが、決して派手ではありません。
地道にがんばるものです。
『あ?』と眉をはね上げたリカルド先生の顔には『生意気言うな』と書いてあります。
向かいのタイム先生がまたボソッと言います。
「某(ピーッ)ライダーとかどうですか」
「「……」」
カッコイイけれども!!
リカルド先生も頬に冷や汗を垂らして固まります。
きょとんとしていたウォルター君は、急にキリッとした顔つきで真剣に言います。
「なれるなら」
い・い・の・か・よ!!
ウォルター君の答えにリカルド先生が仰天します。
目をすがめて赤い頭を見下ろします。
でも、そこはやはり、この年齢の男の子ですので……あまりおかしいことではありません。
しかし、それにしても、とリカルド先生は顔を引きつらせます。
「まぁ……」
バイクだの車だの家だの欲しいものがいっぱいで将来何になりたいかと訊かれると何も考えてなくて出した答えは『バイク乗る人』といういい加減なものであるウォルター君。
彼の将来が果てしなく不安です。
「がんばれ」
不安ですが、言えることが自分にはないので、ぽんと肩を叩いてそう言って、リカルド先生はウォルター君のところを離れます。
「うん」
素直に励まされたと受け取ってうなずいてまたペンを手に取ったウォルター君のところに、リカルド先生が後ろ向きに2・3歩でサッと素早く戻ります。
「……って、てめぇの机をキレイにしなきゃならねぇんだった……!!」
しかめ面で苦々しく言います。
「ええっ!?」
ウォルター君がびくっとして口元を笑みの形にして強張ります。
そしてがっくりと肩を落とします。
せっかく描いたのに……。
しょんぼり。
でも仕方ありません。
カラーペンなどを落とす道具を持ってきたリカルド先生とふたりでしぶしぶ自分の机をキレイにします。
(つづく)
