とある幼稚園の1日。~紙ねんどで遊ぼう! 編~
やることのなくなった3人は額を突き合わせて相談します。
「色を塗らなければなりませんね……」
「黒だね。1色でいいから楽だ」
「つまんねぇよ。いろんな色で塗りまくろうぜ」
「ウォルターはおいといて……」
「俺、おいとかれる!?」
「とりあえずは黒い色で。絵の具、俺のは使っていいですが、あとはどうしますか?」
「ボクの絵の具とウォルターの絵の具とウォルターの絵の具とウォルターの……」
「いやいや、俺、そんなにいないから!! 何それ、どゆこと!? なんでそんなに俺の絵の具使おうとしてんの!? どうして俺だけ3人分の絵の具提供しなきゃなんないの!?」
「労働力の代わりですよ」
「ヒドッ! 働いてるって!!」
役に立ってないみたいな言い方されて、『イジメだ……』とウォルター君がとうとういじけて、泣き出しそうです。
その様子に途中まで言いかけていたアンディ君は『ウォルターの……イカスミで』とごまかします。
「……」
ウォルター君は真顔でまじまじとアンディ君を見て、『俺、イカスミ吐かねぇよ?』と言います。
シルヴィオ君がぽんと手を叩いてまとめます。
「幸い、黒はあまり使う色じゃありませんし、みんなに頼めばくれる人もいるでしょう。集めてきましょう」
「荒っぽい頼み方しないでね」
「俺も行く!」
シルヴィオ君とウォルター君はクラスの仲間に絵の具を分けてもらいに行きます。
せっせと白い巨大な紙ねんどのかたまりをカラスに見えるように形を直しているジョゼフ君と、やることなくて暇でぼーっとするアンディ君が残されました。
そこに、ツツツ……とコニーちゃんが近寄ります。
「ねぇ、黒い絵の具、集めてるの?」
パッとコニーちゃんを見上げてアンディ君はうなずきます。
「うん。コレ、カラスだから」
「黒1色じゃ淋しくない?」
「そう?」
アンディ君は首を傾げます。
淋しいという発想はなかったな……と。
コニーちゃんがフフフと含み笑いをします。
アンディ君は怪訝な顔です。
「……何?」
「ジャーン!!」
コニーちゃんは後ろに回して隠していた手を前に出して、その手に持っていたものを披露します。
紙ねんどでできた色とりどりのリボンやら宝石やらです。
すでに色が塗ってあって、カラフルでとてもキレイです。
「ああ……」
アンディ君はびっくりしてきょとんとします。
コニーちゃんが満開の笑顔ではずんだ声で可愛らしく言います。
「これ、つけようよ。私、飾りつけしてあげる!」
「……うん。色塗ってからだね。ボクも……」
手渡されて1コ1コ掲げて眺めて、アンディ君は考えます。
(こういうの楽しいな……けっこう……)
みんなで紙ねんどで遊んでそれなりに楽しいです。
いいえ、かなり、です。
わくわくします。
無駄じゃありません。
ちょっと赤くなった顔をうつむけて少しだけゆるんだ口元を隠します。
(うれしい……)
本来ならひとりで罰の時間だったのですが。
楽しい仲間たちのおかげで、楽しい時間になりました。
「アンディー!!」
バケツを持ったウォルター君とシルヴィオ君が戻ってきました。
「集まりましたよ、黒い絵の具。面倒なので全部バケツに出して少し水で薄めてきました……あ」
「「「「あ」」」」
床のでっぱりにつまずいてウォルター君がコケました。
バシャーッ!!
頭から絵の具を被るアンディ君(と、ジョゼフ君)。
「……」
スカートに絵の具がはねたコニーちゃんが「ギャーッ!!」と悲鳴を上げます。
『・・・・・・。』
その場に降りる沈黙。
「……悪い。」
ぽつりとつぶやかれるウォルター君の謝罪。
「コラァーッ!! アンタたち何やってんだーっ!!」
悲鳴に近いアンナ先生の怒声。
ずぶ濡れのアンディ君。
一度うつむいて、それから顔を上げます。
ぼんやりと空を見つめます。
(……それでもやっぱり、楽しいかな)
汚れたことはあまり気にせずにそう思うのでした。
その後、リカルド先生にこってりしぼれられたことは、言うまでもありません。
(おしまい)
