レオいず
清々しい夏の朝。おれは部屋に漂う朝食の香りで目を覚ました。
「おー! セナっ! おはよう! うっちゅ〜☆」
「はいはい。うっちゅ〜、おはよぉ、レオくん。朝ごはん、出来てるよぉ」
台所に立つ愛しい恋人に朝の挨拶をすると、面倒くさそうにしながらもきちんと返してくれる。
それはおれとセナが同棲を始めてから恒例のやり取りとなっていた。
夢ノ咲を卒業した後もセナと離れたく無くて、無理やり同棲に持ち込んだあの日が懐かしい。セナに何か言われる前に2人で住める様な部屋を借りてしまい、そこに問答無用でセナを連れ込んだのだが、セナは、そんなおれにぐちぐちと文句を言いながらも率先して同棲の為の準備を進めてくれた。
今おれが寝ていた2人で寝ても充分な広さのあるキングサイズのベッドもセナが用意してくれたもの。
昨日は作曲をしていて……途中から記憶がないから、きっとセナがベッドに運んでくれたのだろう。そんなことに気がつき自然と顔がほころぶ。
「な〜にニヤニヤしてんの、れおくん。朝っぱらから気持ち悪い」
おれの朝食を並べながらセナが悪態をつく。こんな毎日がずっと続けば良い、と思いながら、セナの綺麗な顔を眺めていると、昨日からセナに言おうと思っていた事を思い出した。
「あっ! そうだセナっ! 誕生日おめでとう! あと、俺も誕生日おめでとう!」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「はぁ?」
れおくんの意味の分からない発言に思わず間抜けな声がでる。どうしたの? こいつ頭湧いたんじゃないの? 思った事をそのまま伝えると、
「でもそんな俺の事も好きなんだろ! ちゃんと分かってるよ〜! セナ〜っ!」
と言う間の抜けた答えが帰ってきた。いや、確かにそうだけどそう言う事じゃない。なんて素直に言えるはずもなく、
「ちょっと! ばかじゃないの〜」
なんて言ってごまかす。赤くなってしまった顔はきちんと隠せているだろうか。焦りながらも意味の分からない発言についてちゃんと説明して欲しい。という旨を伝えると、れおくんがカレンダーを指差しながら説明してくれる。
「えっと〜……おれの誕生日が5月5日で、セナの誕生日は11月2日だろ? だから、その丁度その中間の日になる今日、8月3日が真ん中バースデーだ! だからお祝いしよう!」
そう言って、れおくんはエメラルドグリーンの瞳をキラキラと輝かせた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「あ〜、なるほどねぇ。そう言えばファンの子が言ってたっけ。でもあんた、この前も記念日作ってなかったっけ? その度にお祝いしてたらキリないんだけどぉ?」
セナが呆れたふうにそう口にするのも無理はない。
おれはやれ同棲記念日だの、始めて2人で出かけた記念日だのやたら記念日を作りまくっている。
それらはまだ可愛い方で、一緒に箸を買いに行った記念日まであるのだから、セナにとってはたまったもんじゃないだろう。
しかし、記念日は大切にしたいタイプのセナは、呆れながらもスケジュール帳にしっかり記念日を書き込んでくれている。
そして、その書き込みを見ているセナの頬は緩みきっていて、大層可愛らしい笑みを浮かべているのだ。
誰にも見せたく無いくらいに。
本人は全く気がついていないのだが、おれは知っている。
だから、そんなセナの笑顔がもっと見たくて、おれは事ある事に記念日を作っていた。
「いーじゃん! セナ、記念日大好きだろ〜?」
「俺は記念日が好きなんじゃなくて、ただ大切にしてるだけ! 勘違いしないでよねぇ! ほら、朝ごはん冷めるよ! 早く食べな!」
そう言われてセナの作った彩の良い上に美味しい朝食を口に運んでいると、セナが出掛ける準備を始めていた。
「あれ? セナ? どっか行くのか? 今日は1日オフのはずだろ〜?」
「あんたがさっき言ったんでしょ、真ん中バースデーって。誕生日ならケーキ買わなきゃでしょうが。れおくんも早く準備してよねぇ、一緒にケーキ選ぶんだから」
セナはぶっきらぼうに言いながらおれに背を向けた。
いつ見ても美しい後ろ姿。
ただ一つだけいつもと違うのは、銀色の髪から覗く耳。それは、赤く色づいていて、本人は平然を装っているつもりなのだろうけど全然隠せてない。その様があまりにも可愛らしくて、
(あぁ、早く俺の腕の中に閉じ込めて全部全部食べてしまいたい)
そんな衝動に駆られるけれど、夜までは我慢。今はこの世界一可愛いセナと一緒に早くケーキを買いに行かなくちゃ。
「セナ〜! 準備出来た! 早く行くぞ!」
「あ〜もう、分かったから。ちゃんと戸締り確認して。あ、あんまカロリー高すぎるのはダメだからね」
「むぅ〜、セナのケチ! ケチんぼ! 」
そうして住人がいなくなった部屋に置き去りにされた、瀬名のスケジュール帳の8月3日の部分には新たな記念日が記されていた。
真ん中バースデー
「おー! セナっ! おはよう! うっちゅ〜☆」
「はいはい。うっちゅ〜、おはよぉ、レオくん。朝ごはん、出来てるよぉ」
台所に立つ愛しい恋人に朝の挨拶をすると、面倒くさそうにしながらもきちんと返してくれる。
それはおれとセナが同棲を始めてから恒例のやり取りとなっていた。
夢ノ咲を卒業した後もセナと離れたく無くて、無理やり同棲に持ち込んだあの日が懐かしい。セナに何か言われる前に2人で住める様な部屋を借りてしまい、そこに問答無用でセナを連れ込んだのだが、セナは、そんなおれにぐちぐちと文句を言いながらも率先して同棲の為の準備を進めてくれた。
今おれが寝ていた2人で寝ても充分な広さのあるキングサイズのベッドもセナが用意してくれたもの。
昨日は作曲をしていて……途中から記憶がないから、きっとセナがベッドに運んでくれたのだろう。そんなことに気がつき自然と顔がほころぶ。
「な〜にニヤニヤしてんの、れおくん。朝っぱらから気持ち悪い」
おれの朝食を並べながらセナが悪態をつく。こんな毎日がずっと続けば良い、と思いながら、セナの綺麗な顔を眺めていると、昨日からセナに言おうと思っていた事を思い出した。
「あっ! そうだセナっ! 誕生日おめでとう! あと、俺も誕生日おめでとう!」
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「はぁ?」
れおくんの意味の分からない発言に思わず間抜けな声がでる。どうしたの? こいつ頭湧いたんじゃないの? 思った事をそのまま伝えると、
「でもそんな俺の事も好きなんだろ! ちゃんと分かってるよ〜! セナ〜っ!」
と言う間の抜けた答えが帰ってきた。いや、確かにそうだけどそう言う事じゃない。なんて素直に言えるはずもなく、
「ちょっと! ばかじゃないの〜」
なんて言ってごまかす。赤くなってしまった顔はきちんと隠せているだろうか。焦りながらも意味の分からない発言についてちゃんと説明して欲しい。という旨を伝えると、れおくんがカレンダーを指差しながら説明してくれる。
「えっと〜……おれの誕生日が5月5日で、セナの誕生日は11月2日だろ? だから、その丁度その中間の日になる今日、8月3日が真ん中バースデーだ! だからお祝いしよう!」
そう言って、れおくんはエメラルドグリーンの瞳をキラキラと輝かせた。
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「あ〜、なるほどねぇ。そう言えばファンの子が言ってたっけ。でもあんた、この前も記念日作ってなかったっけ? その度にお祝いしてたらキリないんだけどぉ?」
セナが呆れたふうにそう口にするのも無理はない。
おれはやれ同棲記念日だの、始めて2人で出かけた記念日だのやたら記念日を作りまくっている。
それらはまだ可愛い方で、一緒に箸を買いに行った記念日まであるのだから、セナにとってはたまったもんじゃないだろう。
しかし、記念日は大切にしたいタイプのセナは、呆れながらもスケジュール帳にしっかり記念日を書き込んでくれている。
そして、その書き込みを見ているセナの頬は緩みきっていて、大層可愛らしい笑みを浮かべているのだ。
誰にも見せたく無いくらいに。
本人は全く気がついていないのだが、おれは知っている。
だから、そんなセナの笑顔がもっと見たくて、おれは事ある事に記念日を作っていた。
「いーじゃん! セナ、記念日大好きだろ〜?」
「俺は記念日が好きなんじゃなくて、ただ大切にしてるだけ! 勘違いしないでよねぇ! ほら、朝ごはん冷めるよ! 早く食べな!」
そう言われてセナの作った彩の良い上に美味しい朝食を口に運んでいると、セナが出掛ける準備を始めていた。
「あれ? セナ? どっか行くのか? 今日は1日オフのはずだろ〜?」
「あんたがさっき言ったんでしょ、真ん中バースデーって。誕生日ならケーキ買わなきゃでしょうが。れおくんも早く準備してよねぇ、一緒にケーキ選ぶんだから」
セナはぶっきらぼうに言いながらおれに背を向けた。
いつ見ても美しい後ろ姿。
ただ一つだけいつもと違うのは、銀色の髪から覗く耳。それは、赤く色づいていて、本人は平然を装っているつもりなのだろうけど全然隠せてない。その様があまりにも可愛らしくて、
(あぁ、早く俺の腕の中に閉じ込めて全部全部食べてしまいたい)
そんな衝動に駆られるけれど、夜までは我慢。今はこの世界一可愛いセナと一緒に早くケーキを買いに行かなくちゃ。
「セナ〜! 準備出来た! 早く行くぞ!」
「あ〜もう、分かったから。ちゃんと戸締り確認して。あ、あんまカロリー高すぎるのはダメだからね」
「むぅ〜、セナのケチ! ケチんぼ! 」
そうして住人がいなくなった部屋に置き去りにされた、瀬名のスケジュール帳の8月3日の部分には新たな記念日が記されていた。
真ん中バースデー