声が聞きたい

「お前はこっちだ、フラッシュ」
「なぁ、お前らは知らないのか?もう1体のこと」
誘導しようとする青い機体に尋ねる。巨大なプロペラを体内に仕込んでいるその機体は、その姿だけで威圧感を放っている。
「その話題には触れないほうが賢明ブク」
すると緑の機体が口を挟んだ。小さな水槽に納まった姿は少し異様だ。語尾が特殊なのも水中用だからなのだろう。
触れるな、ということはこの2体も何か知っているはずだ。しかしこれ以上聞いても沈黙を貫くのだろう。
ならば、
「あれ……あいつ、クイックは?」
「さぁ?基本的に自由で群れたがらない子だから」
先ほど何かを言いかけたメタルではない方の赤い機体、クイックならば何か話してくれるのではないかと思ったが、既に姿が消えていた。

青い機体と緑の機体、エアーとバブルに連れられてたどり着いたのは自分に与えられた一室。
ここが今日から俺の部屋になる。部屋のナンバーは【014】。
「メタルは俺が5体目だと言っていたが、この数字はどういうことだ?」
「純粋なDWNでは5体目という意味だ」
純粋、か。それ以上詳しく聞く必要はなさそうだ。
ふと隣の部屋に目をやる。そこに書かれていた数字は【012】。
「……おい、【013】の部屋はどうした」
「……触れるなと言ったはずブク」
「やっぱりもう1体がいるってことだろ!?なんで隠すんだよ!!」
バブルに詰め寄った瞬間、機体に衝撃が走った。
「どうやらお前には不要なデータが紛れ込んでいるらしいな」
背後からメタルが攻撃をしてきたらしい。
「“アレ”はもう存在しないものだ」
膝を着いた俺を冷たい視線で見下しながら吐き捨てるように言った。
「どういう……ことだ……」
「存在しないもののデータなど必要ないだろう?」

「誰が存在しないって?」
メタルが再び武器を振り下ろそうとした瞬間、視界が赤で埋め尽くされた。
「なんのつもりだ、クイック」
この場所にいなかったはずのクイックが突然現れ、まるで俺を庇うかのように目の前に立ち塞がった。
右手に大きな黄色の武器を持ち、それがメタルの武器を弾いたようだ。形は剣に似てはいるが別物のようだ。
「それはこっちの台詞だな。あいつが存在しないなんて俺は認めない」
「お前が認めようが認めまいが、“アレ”は存在しない」
言い合う2体を俺は見つめることしかできなかった。
“アレ”とはなんだ。俺が求めている存在のことではないのか。それが存在しないとはどういうことだ。
「クラッシュを“アレ”なんて言うな!!」

『クラッシュ』
それが俺の求めている声の主の名前なのだろうか。



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