声が聞きたい

声が聞こえないまま迎えた目覚めは、あまりに虚しいものだった。
視界が開け、自由に動けるこの環境を待ち望んでいたはずだったのに、心の中はただただ虚しいだけだった。
目の前に現れた4体の兄弟機を前に、この中に声の主がいるかもしれないという期待を抱いてみたが、自己紹介をする声の中に求めていた声はなかった。
「……博士、もう1体いますよね?」
意を決して尋ねてみる。
すると博士は、いや、この場にいる俺以外の存在が動きを止めた。

誕生する前、微かに聞こえていた俺の特殊武器の話。
短い間だが時を止めることのできる武器。タイムストッパー。
この武器のせいで回路が繋がることに時間が掛かっていたのだろう。時を操る能力など、本来人間が手にしてはいけないものだ。
この装置を開発することで博士は何を得たかったのだろうか。その答えは今すぐに見つかるものではないのだろう。見つけられるのかどうかもわからない。

しかし、今はその武器を使ってはいない。だから武器の能力ではなく、個々が動きを止めたことになる。

「フラッシュ……何を言っとるんじゃ」
絞り出すように話し出す博士の声が震えている。何かを隠しているのは明白だ。
俺のメモリーには声の主と会話する博士の声も残っている。
『はかせ、おとうと、まだおきない?』
『もうすぐじゃよ』
と、何度か繰り返されたこの会話、これがなによりの証拠ではないのか。何故存在を隠そうとするのか。

「DWNはお前で5体目だ。おかしな事を言って博士を困らせるんじゃない」
そう言って割り込んできた赤い機体。名前は確か、メタルマン。
青い機体と緑の機体は沈黙を貫き、もう1体の赤い機体は何かを言いかけようとして、やめた。
それに対し問いかけようとする俺にメタルは言葉を続けた。
「とにかく今日はもう休め。起動したばかりで混乱しているんだろう」
なんだそれは、まるで俺がエラーでも起こしているみたいな言い方じゃないか。
「俺は正常だ」
「いいから休め」
だが、殺気を含めた視線で睨むメタルに気圧され、それ以上何も言えなくなってしまった。

「さ、博士もこちらへ」
メタルに誘導されこの場を去っていく博士の顔は青白かった。
一体何を隠しているというのだろう。



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