声が聞きたい

「しかし、まさかこんな初対面になるとはな」
ひとしきり笑った後、ヒビの入った装甲を撫でる。この程度ならすぐ直せるとは思うが、博士には申し訳ない気分になる。起動したてでどれだけ負傷しているのだろう。
「うぅ……ごめん」
俺の言葉に項垂れ申し訳なさそうにしているクラッシュに笑いかけてやる。
「大丈夫だ。これくらい痛くも痒くもねーよ」
痛みがないと言えば嘘になるが、今はそれ以上に嬉しさが勝っている。やっと会えた喜びと、一緒に笑い合える喜び。とにかく今はそんな思いで満たされている。
「おとうとはつよいな」
安心したように笑うクラッシュに心が暖かくなるのを感じた。博士が与えてくれた心、その意味が少しだけわかった気がした。
「フラッシュ、な」
「ふら……し……おとうと!!」
「まぁ、いいか」
しばらくそう呼ばれるもの悪くない。

「おとうと」
「ん?」
「おれさまも、ぜんぶおぼえてるわけじゃない。でも、おもいだした」

思い切り息を吸い込んで。

「おれさまのおとうと、おれさま、ずっとまっていたぞ!!」

とびきりの笑顔でそう言うものだから、ついに泣きそうになった。

ああ、本当になんて愛おしい存在なのだろう。


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