光壊以外の話
俺は雪が好きだ。
ずっと昔、フラッシュがまだ目覚めていない頃のこと。
フラッシュの誕生を待つ間、俺はいつもクイックの後を着いて回っていた。
最初はそんな俺の事を煙たそうにしていたけど、初任務を終えた時からはなにかと俺の事を気にかけてくれるようになった。
戦い以外のことに興味のなかったクイックのことだから、俺が実戦で見せた働きに興味が湧いたのだろう。
それからは組み手の相手もしてくれるようになって、他愛もない話をたくさんして。
俺もフラッシュの様子を見に行くとき以外はクイックと共にいた。
俺はそんなクイックが大好きだった。
他の兄たちよりも、クイックが大好きだった。
そんなある日。
「くいっく、あれ、なに?」
窓の外から落ちてくる白い物体、
「雪だ」
ぶっきらぼうに、でも優しい声で答えてくれた。
「ゆき?」
誕生してから初めて見るその白い物体はとても神秘的で、俺の心を捉えて放さなかった。
「ちょっと待ってろ」
そんな俺を尻目にクイックは外に飛び出していた。
「おおぉぉぉ!」
目の前に現れたのは、巨大な雪の塊。
クイックが物凄いスピードで作り上げた、少し歪な形の大きな雪玉。
「クラッシュ、これをどうしたい?」
突然聞かれた言葉。俺は迷わず答えた。
「うえにのぼりたい!」
「よっしゃ!」
そう言うとクイックは俺を肩車してくれた。
クイックの足がガクガク震えていたのを今でも憶えている。
俺の体は重いから、支えるのも一苦労だったんだよな。
だって冷や汗が凄かったもんな。
「すげーすげー!」
大きな雪玉の上から見る景色はとても神秘的で、とても、キレイだった。
キラキラと輝く雪原、まるで羽根のように舞い落ちてくる白い結晶。
全てが俺を魅了した。
「次はどうしたい?」
聞かれて戸惑った。俺はこの景色を、
「・・・こわしたい」
作ってくれた本人がいるのに、不謹慎だと思った。
だけど返ってきた言葉は、
「よし!やっていいぞ!」
「いいの・・・?」
折角作った物なのに、俺は兄が何を考えているのかわからなかった。
だけど、次の言葉で理解できた。
「雪だからな、いくら壊してもいいぞ」
「ほんとか!?」
「ああ」
雪という物質はいくらでも形を崩しても、雪という結晶が消えるわけではない。
だからいくら壊してもまた作ればいい。そう言ってくれた。
俺はその言葉を聞いて、思う存分大きな雪玉を壊した。
だけど、
「なんかものたりない・・・」
無残に崩れ落ちた雪玉を見て、ボソリと呟く。
こんな風にすぐに壊れてしまうもの。俺はもっと壊し甲斐のあるものを壊したい。
壊し屋として生まれた性なのか、そんな風に思った。
そんな俺にクイックは呆れることも、怒ることもせずに、
「じゃあ次はもっと大きくて頑丈なの作ってやるよ」
そう言って、駆け出していた。
さっきよりもとても大きな雪玉を、一生懸命、石のように硬く、山のように大きな雪玉を、俺のために作ってくれているクイックの姿を見て、俺はとても嬉しくなった。
「できたぞ!!」
クイックが作ってくれた雪玉は本当に大きくて、頑丈そうで、とても壊し甲斐のありそうなものだった。
「さぁ壊せ!壊せるものならな!!」
得意げに笑うクイックを見て、俺は思わずクイックに抱きついた。
「ありがとう」
感謝を伝えるために、とびっきりの笑顔を。
クイックは驚いた顔をしていたけど、そのあとちょっと照れくさそうに鼻を掻いたりして、笑いながら俺の頭を撫でてくれた。
「おとうとがめをさましたら、またいっしょにやろうな!」
「ああ、楽しみだ」
大好きな兄と、これから目覚める大好きな弟。3人でこうして笑い会える日を、俺は心から待ち望んだ。
そして今、
「クラッシュ!雪だぞ!」
クイックが言う。
「また雪玉作ってくれよ!めちゃくちゃ頑丈なやつな!!」
俺が騒ぐ。
「雪って、子供かよ・・・」
フラッシュが呆れる。
「なんだとこのハゲー!!」
「黙れV字野郎!!つーかハゲじゃねー!!」
喧嘩になったりもするけど、こんな日常が好きだ。
「お前らいい加減にしないと誤爆させるぞー!」
「「ごめんなさいっ」」
だから俺は雪が好きだ。
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ずっと昔、フラッシュがまだ目覚めていない頃のこと。
フラッシュの誕生を待つ間、俺はいつもクイックの後を着いて回っていた。
最初はそんな俺の事を煙たそうにしていたけど、初任務を終えた時からはなにかと俺の事を気にかけてくれるようになった。
戦い以外のことに興味のなかったクイックのことだから、俺が実戦で見せた働きに興味が湧いたのだろう。
それからは組み手の相手もしてくれるようになって、他愛もない話をたくさんして。
俺もフラッシュの様子を見に行くとき以外はクイックと共にいた。
俺はそんなクイックが大好きだった。
他の兄たちよりも、クイックが大好きだった。
そんなある日。
「くいっく、あれ、なに?」
窓の外から落ちてくる白い物体、
「雪だ」
ぶっきらぼうに、でも優しい声で答えてくれた。
「ゆき?」
誕生してから初めて見るその白い物体はとても神秘的で、俺の心を捉えて放さなかった。
「ちょっと待ってろ」
そんな俺を尻目にクイックは外に飛び出していた。
「おおぉぉぉ!」
目の前に現れたのは、巨大な雪の塊。
クイックが物凄いスピードで作り上げた、少し歪な形の大きな雪玉。
「クラッシュ、これをどうしたい?」
突然聞かれた言葉。俺は迷わず答えた。
「うえにのぼりたい!」
「よっしゃ!」
そう言うとクイックは俺を肩車してくれた。
クイックの足がガクガク震えていたのを今でも憶えている。
俺の体は重いから、支えるのも一苦労だったんだよな。
だって冷や汗が凄かったもんな。
「すげーすげー!」
大きな雪玉の上から見る景色はとても神秘的で、とても、キレイだった。
キラキラと輝く雪原、まるで羽根のように舞い落ちてくる白い結晶。
全てが俺を魅了した。
「次はどうしたい?」
聞かれて戸惑った。俺はこの景色を、
「・・・こわしたい」
作ってくれた本人がいるのに、不謹慎だと思った。
だけど返ってきた言葉は、
「よし!やっていいぞ!」
「いいの・・・?」
折角作った物なのに、俺は兄が何を考えているのかわからなかった。
だけど、次の言葉で理解できた。
「雪だからな、いくら壊してもいいぞ」
「ほんとか!?」
「ああ」
雪という物質はいくらでも形を崩しても、雪という結晶が消えるわけではない。
だからいくら壊してもまた作ればいい。そう言ってくれた。
俺はその言葉を聞いて、思う存分大きな雪玉を壊した。
だけど、
「なんかものたりない・・・」
無残に崩れ落ちた雪玉を見て、ボソリと呟く。
こんな風にすぐに壊れてしまうもの。俺はもっと壊し甲斐のあるものを壊したい。
壊し屋として生まれた性なのか、そんな風に思った。
そんな俺にクイックは呆れることも、怒ることもせずに、
「じゃあ次はもっと大きくて頑丈なの作ってやるよ」
そう言って、駆け出していた。
さっきよりもとても大きな雪玉を、一生懸命、石のように硬く、山のように大きな雪玉を、俺のために作ってくれているクイックの姿を見て、俺はとても嬉しくなった。
「できたぞ!!」
クイックが作ってくれた雪玉は本当に大きくて、頑丈そうで、とても壊し甲斐のありそうなものだった。
「さぁ壊せ!壊せるものならな!!」
得意げに笑うクイックを見て、俺は思わずクイックに抱きついた。
「ありがとう」
感謝を伝えるために、とびっきりの笑顔を。
クイックは驚いた顔をしていたけど、そのあとちょっと照れくさそうに鼻を掻いたりして、笑いながら俺の頭を撫でてくれた。
「おとうとがめをさましたら、またいっしょにやろうな!」
「ああ、楽しみだ」
大好きな兄と、これから目覚める大好きな弟。3人でこうして笑い会える日を、俺は心から待ち望んだ。
そして今、
「クラッシュ!雪だぞ!」
クイックが言う。
「また雪玉作ってくれよ!めちゃくちゃ頑丈なやつな!!」
俺が騒ぐ。
「雪って、子供かよ・・・」
フラッシュが呆れる。
「なんだとこのハゲー!!」
「黙れV字野郎!!つーかハゲじゃねー!!」
喧嘩になったりもするけど、こんな日常が好きだ。
「お前らいい加減にしないと誤爆させるぞー!」
「「ごめんなさいっ」」
だから俺は雪が好きだ。
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