光壊以外の話

兄貴の手は冷たい。そりゃ針なんだから当たり前かもしれないけど。

手が冷たい人は心が温かいと言う。兄貴の場合、それがすごく当てはまってると思う。
兄貴は普段冷たい態度だけど、他の誰よりも兄弟のことを想ってる。見えないところで支えてる。

俺ははっきり言って他の兄弟にそこまでの想い入れはない。俺は他人のようなものだから。
・・・U字とは違うから。

俺の手は温かいと兄貴は言った。それはそうだ。だって心が冷たいんだから。
俺がそう言うと、兄貴はそれを否定した。

手が冷たかろうが、暖かろうが、誰だって心は温かいものだと。

「お前の心の温かさは、俺が一番よく知ってるっスよ。・・・たとえそれが俺だけに向けられるものだとしても」

兄貴は全部分かってて、そう言ってくれる。
ねぇ兄貴、俺が兄貴の言葉にどれだけ救われてるかわかる?俺だけじゃない。みんなそうなんだよ。

「兄貴の心は、本当にあったかいねー」

だからみんな、兄貴に着いて行く。みんな、兄貴が大好きなんだよ。

兄貴もそんなみんなが大好きでしょ?
だから、俺が守るよ。
兄貴にとってみんなは、みんなにとって兄貴は、絶対に失ってはいけないから。
俺はね、兄貴とみんなを守るためにいるんだよ。
俺がちゃんと守るから、兄貴たちは真っ直ぐ前だけを見ていて。

ありがとう。俺のこと、兄弟として見てくれて。
ありがとう。最後まで信じてくれて。

ありがとう。
俺にこの言葉を言わせてくれて。

俺は今から鬼となる。兄貴達の邪魔はさせない。

「この先には絶対行かせねぇから」

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