光壊以外の話
「今日は七夕だよプラント!」
「・・・誰の入れ知恵だ?タイム」
「チビが言ってたよ」
チビ、というのはおそらくヒートのことだ。顔を合わすたびに喧嘩しているタイムの良き喧嘩相手だ。
七夕だから願い事を書こうということだろう。見ればタイムの手には色ペンと短冊が握られていた。
「私はやる気はないぞ」
先にそう告げるとタイムは少し悲しそうな顔をした。その表情にズキリと胸が痛んだが、人間が作った下らない行事に参加する気はないのだ。
「だけど願うという行為自体も大切なことでしょ?」
悲しそうな表情は一瞬で、そんなことは分かりきっていると言わんばかりに色ペンと短冊を渡してきた。
「七夕っていうのは自分の願いを形に残すいい機会だと思うんだ。いつも心の中だけで願っているよりも、こうやって紙に残せば少しは進展があるような気がしない?」
「人間たちの真似事じゃなくて、ただいい機会だってことじゃ、ダメかな?」
確かにタイムの言う事は正論かもしれない。だが、
「願うよりも実行した方が早いと思うがな。例えば○○くんと両想いになれますように、だったら告白した方が早い。たとえそれがどんな結果でもな」
「それは願うだけで自分からは何も行動しない人のパターンだよ。ボクのお願いはボク自身が動かなければ達成されないものだと思ってるし」
「だからさ、プラントも一緒にお願いごと書こう?」
そう言ってくる強い瞳に負け、ただ頷くしかなかった。つくづつ私はタイムに甘いと思う。
それにしても強くなったものだ。
出会ったころのあの消え入りそうな心が、これだけ強くなった。それがなんだかとても嬉しく感じてしまい思わず笑みがこぼれた。
忘れていた、いや、封じ込めておいた感情が少しずつ解放されていくようだ。不思議と嫌な気分ではない。
「願い事書けた?」
そう言って覗き込んでくるタイムの目の前に願いを書いた短冊を突きつけた。
「私の願いはこれしかないだろう?」
突きつけられたことに驚きながらも楽しそうに短冊を見る。
『人類滅亡』
「こんなこと願っちゃダメぇぇぇぇぇ!!」
時間が止まったように静止していたタイムが叫びながら短冊をグシャグシャに丸めていつも持ち歩いているゴミ袋に入れた。
「もうプラントは昔のプラントじゃないんだからダメだよこんなの!!」
怒っているタイムに笑いながら冗談だと告げるともっと怒られた。本当に面白い子だ。
「タイムはどんな願いを書いたんだ?」
「ん?ボクはねぇ・・・」
『プラントとずっと一緒にいられますように』
同じように突きつけられた短冊の文字を見て私の時間も一瞬止まった。
「・・・もうあんな思いするの、ヤだからね」
タイムは少しだけ泣きそうな顔をしていた。
私が機能停止したときのことだろう。あの時タイムは必死に私を救おうとしてくれた。
タイムは私が光をくれたと言った。だが、私に光をくれたのは紛れもなくこの子なのだ。
こんな私でも必要としてくれるこの子に、私はなにをしてあげらえるというのだろう。
『願わくば、この光が消えることがないように、この子のずっとそばにいられるように、私という存在を消さないように生きる』
私の願いはタイムの願いを実行することだ。
「チビが一緒に飾ってくれるって。届けてくるね!」
「気を付けてな・・・ってそれでは連中に見られるではないか!!他の連中はとにかくウッドに見られて馬鹿にされるのはゴメンだぞ!!待てタイム!!」
気づいた時には既に遅し、タイムは2ボスの基地に向かって駆け出していた。
結局私の悲痛な叫びは届かなかった。
翌日森に顔を出してきたウッドにからかわれたことは言うまでもない。少しだけ恨むぞタイム・・・。
だが、楽しそうにヒートと喧嘩している姿を見ると何も言えなくなってしまうのだった。
・・・本当に私は甘いな。
「だが貴様は許さん!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」
.
「・・・誰の入れ知恵だ?タイム」
「チビが言ってたよ」
チビ、というのはおそらくヒートのことだ。顔を合わすたびに喧嘩しているタイムの良き喧嘩相手だ。
七夕だから願い事を書こうということだろう。見ればタイムの手には色ペンと短冊が握られていた。
「私はやる気はないぞ」
先にそう告げるとタイムは少し悲しそうな顔をした。その表情にズキリと胸が痛んだが、人間が作った下らない行事に参加する気はないのだ。
「だけど願うという行為自体も大切なことでしょ?」
悲しそうな表情は一瞬で、そんなことは分かりきっていると言わんばかりに色ペンと短冊を渡してきた。
「七夕っていうのは自分の願いを形に残すいい機会だと思うんだ。いつも心の中だけで願っているよりも、こうやって紙に残せば少しは進展があるような気がしない?」
「人間たちの真似事じゃなくて、ただいい機会だってことじゃ、ダメかな?」
確かにタイムの言う事は正論かもしれない。だが、
「願うよりも実行した方が早いと思うがな。例えば○○くんと両想いになれますように、だったら告白した方が早い。たとえそれがどんな結果でもな」
「それは願うだけで自分からは何も行動しない人のパターンだよ。ボクのお願いはボク自身が動かなければ達成されないものだと思ってるし」
「だからさ、プラントも一緒にお願いごと書こう?」
そう言ってくる強い瞳に負け、ただ頷くしかなかった。つくづつ私はタイムに甘いと思う。
それにしても強くなったものだ。
出会ったころのあの消え入りそうな心が、これだけ強くなった。それがなんだかとても嬉しく感じてしまい思わず笑みがこぼれた。
忘れていた、いや、封じ込めておいた感情が少しずつ解放されていくようだ。不思議と嫌な気分ではない。
「願い事書けた?」
そう言って覗き込んでくるタイムの目の前に願いを書いた短冊を突きつけた。
「私の願いはこれしかないだろう?」
突きつけられたことに驚きながらも楽しそうに短冊を見る。
『人類滅亡』
「こんなこと願っちゃダメぇぇぇぇぇ!!」
時間が止まったように静止していたタイムが叫びながら短冊をグシャグシャに丸めていつも持ち歩いているゴミ袋に入れた。
「もうプラントは昔のプラントじゃないんだからダメだよこんなの!!」
怒っているタイムに笑いながら冗談だと告げるともっと怒られた。本当に面白い子だ。
「タイムはどんな願いを書いたんだ?」
「ん?ボクはねぇ・・・」
『プラントとずっと一緒にいられますように』
同じように突きつけられた短冊の文字を見て私の時間も一瞬止まった。
「・・・もうあんな思いするの、ヤだからね」
タイムは少しだけ泣きそうな顔をしていた。
私が機能停止したときのことだろう。あの時タイムは必死に私を救おうとしてくれた。
タイムは私が光をくれたと言った。だが、私に光をくれたのは紛れもなくこの子なのだ。
こんな私でも必要としてくれるこの子に、私はなにをしてあげらえるというのだろう。
『願わくば、この光が消えることがないように、この子のずっとそばにいられるように、私という存在を消さないように生きる』
私の願いはタイムの願いを実行することだ。
「チビが一緒に飾ってくれるって。届けてくるね!」
「気を付けてな・・・ってそれでは連中に見られるではないか!!他の連中はとにかくウッドに見られて馬鹿にされるのはゴメンだぞ!!待てタイム!!」
気づいた時には既に遅し、タイムは2ボスの基地に向かって駆け出していた。
結局私の悲痛な叫びは届かなかった。
翌日森に顔を出してきたウッドにからかわれたことは言うまでもない。少しだけ恨むぞタイム・・・。
だが、楽しそうにヒートと喧嘩している姿を見ると何も言えなくなってしまうのだった。
・・・本当に私は甘いな。
「だが貴様は許さん!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」
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