光壊以外の話

四月一日。
「ヒートなんか大っ嫌いだぞ!!」
毎年のことだけどこの言葉だけは聞きたくない。たとえ嘘だとわかっていても。

「嫌い嫌い大っ嫌い!!」
嬉しそうに「嫌い」と連発されて誰が喜ぶだろうか。これならいつものように「好き」を連発された方が・・・どちらにせよウザいことには変わりないか。

この日は何を言っても面倒だ。好きだと言えば素直に喜ばれ嘘かも知れないと凹み、嫌いだと言えば凹みはするけど嘘だと思い喜ぶ。
この日は本当に面倒だ。午前中だけは。

「あ、お昼だよプラント!」
「相変らず正確だな」
「時間のことなら任せておいて!どこかの時を止めるだけのハゲとは違うのだよハゲとは!!」
「・・・落ち着け」

近くにいるプラントとタイムのそんな会話を聞きながら気分の悪い午前が終わった事を知った。

「ウッド」
「どうしたヒート!」
ここから話すことは全て本音。普段言えないことを言うにはこの日の午後が一番なのかもしれない。
「ボクね、ウッドのこと本当は好きだよ」
「そっか!!・・・え?」
「そりゃたまにウザくてたまらないときもあるよ?跡形もなく燃やし尽くしたいときだって」
「ヒート・・・?」
「でも・・・ボクはウッドが好きだよ」
「ヒート・・・」
「大好き」
見る見るうちにウッドの顔が赤くなり頭の枝から花が咲いた。感情が限界に達すると花を咲かせると知ったのはつい最近のことだ。木から咲く花でなくても咲く理由なんてわからないけれど。
「ゆ、夢なら覚めないでぇぇぇぇ!!!」
ゴロゴロと転がり出した姿は少し、いや、かなりウザかった。から蹴っておいた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

「ねぇプラント、ウッドが咲かせた花はなんていうの?」
「ミヤマカタバミ。花言葉は・・・歓喜、喜びだな。」
「わっかりやすいよね。あーあ折角咲いたのにバラバラに・・・」
「・・・」

大地が揺れた気がした。

「ああああでも今日はエイプリルフールで嘘つく日でつまりこの告白も嘘ってことで・・・でも嘘でもこんな告白されたら俺は・・・俺はぁぁぁぁぁ!!!」
正確には「嘘をつく日」でなく「嘘をついてもいい日」だけどね。

「な、な、チビ」
「なんだよチビ」
「嘘をついてもいいのは午前中だけだぞ?」
「・・・知ってるよ?」
つまりこれはボクの精一杯の想いの伝え方。ウッドがわかっていなくても、伝えられたからそれでいい。

年に一度の精一杯。
それは一種の賭け。

「教えてあげたらいいのに」
「それじゃあつまらないじゃん」

気付けばそれで終わり。気付かなければ、また来年。
気付くまで、何年でも待ってあげる。

13/14ページ
スキ