短いシリーズ

初めての共同作業・4

馬鹿にしていたわけではない。小さくとも戦闘用。それ相応の能力は持ち合わせているはずだと、何回もシミュレートしていた。
しかし、これではあまりにも、違いすぎる。

「っフラッシュ!!」

そのギャップに驚き立ち尽くしていた。クラッシュの声が聞こえたかと思えば視界が揺れた。それと共に背中に衝撃と痛みが走った。
後ろへ倒れこんだ俺の目に映ったのは、新たに出現したガードロボと、それに抗戦する兄の姿。
先程まで俺が立ち尽くしていた場所には大きな穴が開いていた。というより溶けていた。
「何でも溶かす液・・・ってか?」
もしも弱点がサーチできて接近戦に持ち込めたとしても、こんなもの喰らったら洒落にならない。
背中がズキズキするが、言うよりも行動に出るほうが速い。少々乱暴な気もするが、それは仕方のないことだ。
助かったことには変わりない。

抗戦するクラッシュの援護をしつつ、砕け散ったガードロボの機体を横目で観察する。先程まではサーチできなかった急所を見出すためだ。
クラッシュボムによって粉々に近い形で破壊された残骸を見て、兄の実力は本物なのだと実感させられた。

「!!?」

これほど粉々にされてなお立ち上がってくる機体には最早驚きを通り越して関心しかできない。
これが忠誠心というやつか。
ただ命令に忠実に従うだけの機体。
俺たちにも同じようなプログラムがされているのだろうか。

否、そんな疑問を感じている暇などない。今はただ、無事に生還できるように兄の手伝いをするだけだ。

立ち上がった機体は俺に襲い掛かることなく崩れ落ちた。兄から受けた傷の重さに耐え切れなかったのだ。
これが忠誠心を貫き通した機械の成れの果て・・・。
「馬鹿馬鹿しい・・・」
小さく呟いた。


「おわったぞーフラッシュー」
全て片付けたあと、クラッシュは俺のそばに寄ってきた。
そして
「大丈夫か?ケガ、してないか?」
と言ってきた。その問いに答えようとした瞬間、クラッシュが倒れこんできた。

「ク、クラッシュ!?」

その姿を見て驚愕する。クラッシュの背中から煙が出ているのが見えた。
どうやら俺を突き飛ばした時に、あの液を喰らったらしい。

「俺の心配なんかしてる場合じゃないだろ!?」

「だって、お前がケガしたら、いやだ」

平然と告げる兄に、もはや溜め息しか出なかった。
このクラッシュという小さな兄は、いつも俺のことばかり気に掛ける。なによりも俺の事を優先する。それが嬉しいとは思うのだが、

「俺はお前の方が心配だよ・・・馬鹿兄貴」

いつかそれが、最悪の結果をもたらすことになるのではないかという不安に襲われる。

「おれさまお兄ちゃんだもん。お前のためならなんだってがんばれるぞ」

だから俺はこの時自分に誓った。
何があっても、俺が守ってみせると。

こうして初めての共同作業は終わった。
俺の中に「クラッシュ」という存在をより強い形で残して。

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