単発
クラッシュはクイックを、というか他のナンバーズを介して電子空間にアクセスすることができる。
自力での行動というものは制限されているものの、クラッシュも電子戦には強い方だと思う。
俺やバブルのような電子戦を得意とするものでもクラッシュには勝てないかもしれない。
ただ、自力でアクセスできず身動きが取れないということがあるから実戦で使わないだけということだ。
しかし基地内でのことなら背後を取られる心配もなく、クラッシュが他の誰かを通じてアクセスすることが可能となる。
それはわかるが・・・わかっているつもりではいるが・・・。
俺の隣には二つの影がある。一つは現在電子空間に入り込んでいるクラッシュ。もう一つはクラッシュを電子空間に送り込むために介する機体の役目をもつクイックだ。
つまり俺は待ちぼうけと言う訳だ。
普段は俺の仕事が終わるまでクラッシュが待っているというパターンだが、今日は俺がクラッシュの仕事が終わるのを待っていることになる。
待たされるのが嫌いというわけではないが、面白くはない。
クラッシュが電子空間にアクセスするためには各自に備え付けられているケーブルを繋がなくてはいけない。そのケーブル自体は聴覚センサー内に備え付けられている。
外部からセンサーの場所がわからないエアーやウッドがどのようにしてケーブルを繋ぐのかはわからないが。
互いのセンサーをケーブルで繋ぐという行為は目に見える繋がりができたということでもある。
それが気に食わない。
何故、俺でないのか。何故、クイックなのか。
答えは簡単だ。昔からクラッシュはクイックと共に電子の海に潜っていた。
ただそれだけのことだ。
性能などを考えれば俺やバブルの方が良いのはわかっているが、慣れているクイックの方がやりやすいのだと言う。
それが妙に腹立たしい。
俺ではない。
その事実だけが俺を不愉快にさせる。
いつ終わるのかわからないこの時間がもどかしい。
時を止める。それが俺の能力だが今使うようなものではない。早く過ぎ去って欲しい時間を止めてどうしようというのか。
それにそれをしてしまえばクイックの機体は傷付き、クラッシュはこっちの世界に帰って来れなくなるかもしれない。
・・・いっそそうなってしまえばいいと、そう思ってしまう自分がいる。
そうすれば俺の力でクラッシュを守ることができる。クイックに邪魔されることもなくなる。
だが、それはしてはならないことだ。
己の欲求に溺れてしまえば全てが壊れてしまう。
なによりそれを、クラッシュは望まない。
「早く帰って来いよバカ兄貴・・・」
俺が俺を抑えられているうちに。
―キュイーン・・・―
二人が戻ってくる音がした。
「っと、お疲れさん。変な感じしないか?」
「ん、大丈夫。ありがとな」
二人を繋ぐケーブルが外れたのを見て、俺はようやく安堵した。
「じゃあ俺は博士に報告してくるから。ゆっくり休めよ・・・休めればだけどな」
「いってら。・・・なんか言ったか?」
「いや、なんでもねぇ」
ヒラヒラと手を振って部屋を去ったクイックの姿をクラッシュは不思議そうに見つめていた。
しかしそれはほんの数秒で、すぐに俺の方に近づいてきた。
「終わったぞフラッシュ!・・・待たせたか?」
「・・・ギリギリセーフってとこだな」
「?」
なんのことだかよくわかっていない表情のクラッシュを抱きしめて、足りなかったものを補給した。
今度俺が仕事でクラッシュを待たせるときは、なるべく早く終わらせてやろうと、そう思った。
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自力での行動というものは制限されているものの、クラッシュも電子戦には強い方だと思う。
俺やバブルのような電子戦を得意とするものでもクラッシュには勝てないかもしれない。
ただ、自力でアクセスできず身動きが取れないということがあるから実戦で使わないだけということだ。
しかし基地内でのことなら背後を取られる心配もなく、クラッシュが他の誰かを通じてアクセスすることが可能となる。
それはわかるが・・・わかっているつもりではいるが・・・。
俺の隣には二つの影がある。一つは現在電子空間に入り込んでいるクラッシュ。もう一つはクラッシュを電子空間に送り込むために介する機体の役目をもつクイックだ。
つまり俺は待ちぼうけと言う訳だ。
普段は俺の仕事が終わるまでクラッシュが待っているというパターンだが、今日は俺がクラッシュの仕事が終わるのを待っていることになる。
待たされるのが嫌いというわけではないが、面白くはない。
クラッシュが電子空間にアクセスするためには各自に備え付けられているケーブルを繋がなくてはいけない。そのケーブル自体は聴覚センサー内に備え付けられている。
外部からセンサーの場所がわからないエアーやウッドがどのようにしてケーブルを繋ぐのかはわからないが。
互いのセンサーをケーブルで繋ぐという行為は目に見える繋がりができたということでもある。
それが気に食わない。
何故、俺でないのか。何故、クイックなのか。
答えは簡単だ。昔からクラッシュはクイックと共に電子の海に潜っていた。
ただそれだけのことだ。
性能などを考えれば俺やバブルの方が良いのはわかっているが、慣れているクイックの方がやりやすいのだと言う。
それが妙に腹立たしい。
俺ではない。
その事実だけが俺を不愉快にさせる。
いつ終わるのかわからないこの時間がもどかしい。
時を止める。それが俺の能力だが今使うようなものではない。早く過ぎ去って欲しい時間を止めてどうしようというのか。
それにそれをしてしまえばクイックの機体は傷付き、クラッシュはこっちの世界に帰って来れなくなるかもしれない。
・・・いっそそうなってしまえばいいと、そう思ってしまう自分がいる。
そうすれば俺の力でクラッシュを守ることができる。クイックに邪魔されることもなくなる。
だが、それはしてはならないことだ。
己の欲求に溺れてしまえば全てが壊れてしまう。
なによりそれを、クラッシュは望まない。
「早く帰って来いよバカ兄貴・・・」
俺が俺を抑えられているうちに。
―キュイーン・・・―
二人が戻ってくる音がした。
「っと、お疲れさん。変な感じしないか?」
「ん、大丈夫。ありがとな」
二人を繋ぐケーブルが外れたのを見て、俺はようやく安堵した。
「じゃあ俺は博士に報告してくるから。ゆっくり休めよ・・・休めればだけどな」
「いってら。・・・なんか言ったか?」
「いや、なんでもねぇ」
ヒラヒラと手を振って部屋を去ったクイックの姿をクラッシュは不思議そうに見つめていた。
しかしそれはほんの数秒で、すぐに俺の方に近づいてきた。
「終わったぞフラッシュ!・・・待たせたか?」
「・・・ギリギリセーフってとこだな」
「?」
なんのことだかよくわかっていない表情のクラッシュを抱きしめて、足りなかったものを補給した。
今度俺が仕事でクラッシュを待たせるときは、なるべく早く終わらせてやろうと、そう思った。
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