短いシリーズ

帰る場所~帰る場所は守るべき場所~


薄れゆく意識。俺はもう死ぬのかもしれない。
作られた目的すら遂行できないまま。約束すら果たせないまま・・・。


メモリーに焼きついたお前の顔と声が自動的に再生される。
最後はやっぱお前の顔見たいからさ。声、聞きたいからさ。
たくさんの思い出と共にあふれ出してくる想い。
その中で出撃する直前に告げられた言葉。


― 帰ってくるよな?―


不安そうな顔で俺を見送ったその顔。

ああ、そうだ。お前が待っている。
お前のためにも俺は・・・

「こんなとこでくたばってられっかよ・・・!」

「!!・・・まだ立ち上がってくるの?」
「帰る場所があるんでね・・・」

たとえ体がボロボロになろうが、核が砕けようが、俺には帰る場所がある。
俺はそこへ帰る。

「お前、守りたいもんがあんだろ?・・・実はな、俺にも守りたいもんがあんだよ」
「・・・ワイリー?」

ああ、確かに博士も大切だ。守らなくてはいけない。どんなものよりも、最優先でな。
だけど俺には博士よりも大切で、絶対に守りきらなきゃいけないものがあるんだ。

「多分、言っても理解できねぇよ」

ただ同時期に作られた。人格プログラムの作動の誤差で俺は誕生するのが遅れた。だから必然的にあいつが兄だ。
ただそれだけの存在だったはずだ。本来は。

だけど・・・


『おれさまのおとうと、おれさまずっとまってるぞ』


毎日俺のことだけ考えてくれた。任務をもらった時だって俺の誕生に間に合わないと嘆いてくれた。


『大丈夫か?ケガ、してないか?』


初めての共同作業では守ってくれた。
俺のせいで自分も危険にさらされたっていうのに、俺の心配ばかりして・・・。


たくさんのことを教えてくれた。俺の知らないことを、俺が知る知識以外のことを。
弟だから接してくれたわけじゃない。俺も兄だから接したわけじゃない。


俺が俺で、あいつがあいつだからだ。


たとえきっかけがなんであろうと俺たちには関係ない。
俺たちだからこうやってこれた。

ただそれだけだ。
そしてそこが俺の帰る場所、守るべき場所だ。


だから誰にも邪魔させない、壊させやしない。


「だから俺はここでお前に倒されるわけにはいかない」

俺の全てを賭けて、お前を倒す。
そして俺はあいつのもとに帰る。


『フラッシュ!』


おかえりって、よくやったなって、頑張ったなって、俺様の誇りだって言ってもらうんだ。
ただいまって言って抱きしめて、頑張ったご褒美もらうんだ。

クラッシュ・・・俺、絶対負けないから。

だから待っててくれ。

絶対帰るから。


― 帰ってくるよな? ―


ああ、もちろんだ。

必ず、戻る。


「来いよ」


俺たちの絆の強さを思い知れ。

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