単発

「お、いたいた」

食後の一服として屋上で煙草をふかせていると、背後から聞きなれた声がした。

「どうした?」
「いや、姿見えなかったから何処行ったかなって」
「そんなに俺のそば離れたくない?」
「うるせぇよ」
「(否定しないのか)」

隣にやってきたクラッシュはフラッシュの方を見ることなく、空を見上げていた。
この兄は昔から空が好きなのだ。
空と同じ色を持つフラッシュとしては、それを嬉しく思いながらも自分を見て欲しいという想いもあり複雑な気分だった。

しばらく沈黙が続いた。

「それって美味いか?」

沈黙を破ったのはクラッシュだった。『それ』と称して目線だけを投げかけたクラッシュだが、フラッシュはそれが指す意味を理解した。

「お兄様には向かないと思うぜ?」

「俺様は酒は飲んでも煙草は吸わん」

少しばかり偉そうなその口調に、じゃあなんで聞いたんだ、とフラッシュは苦笑した。

「大体そんなもんばっか吸ってると身体壊すぞ」

「糖分ばっか取ってる奴に言われたくねぇな」

「クイックより取ってねぇ」

「十分だろ」

たまに考えていることがわからなくなる。だが、それがこの兄の良さでもあり、そんな所にも惚れているのだと思った。

特に任務も仕事もない本日の午後。
こんな風にゆったりとした時間を過ごすのも悪くない。
なによりも隣にある「しあわせ」と共に過ごせる時間なのだから。

「んじゃ、部屋行くか」

「んー」

背伸びをしながら返事をし、歩き出したフラッシュの後を追うように着いてくるクラッシュの姿に、笑みを隠すことができなかった。

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