10.終止符を打つために


俺から始まったことだから、俺が終わらせなきゃ。

俺が自分を制御できなかったばっかりに起こった今回の事。兄弟や博士を巻き込んだ最悪の事件。
博士は出かけていて無事だったとか、全員の核が無傷だったから再生は簡単だったとか、そんなことは関係ないんだ。
みんな戻ってきてくれたけど、心に大きな傷が残ったのは明らかだし、博士にも迷惑掛けた。
みんな許してくれたけど、それでも俺の心は晴れない。
傷付けたという事実は変わらないのだから。

いつまでも消えない罪悪感。
たとえ全てに許されたとしても俺の心は晴れないだろう。
なによりも、俺が俺を許せないのだから。

だから俺は全部一人で抱え込もうとした。だから自身を傷つけた。
博士からもらった「命」を自ら絶とうとした。

だけどそれも許さないとあいつは言った。
罪を背負って生きろと言った。
自分も一緒に背負うと言ってくれた。
本当に嬉しかった。
だからあいつにはすごく感謝してる。だけどその分辛い思いもさせた。
あいつの時間を俺のために使わせてしまったから。
俺が自分を抑え切れれば、そんな風にしなくて済んだのに。

だから俺の記憶がない方がいいと思ったんだ。
博士に頼んで、俺自身も部屋に閉じこもって。

お互いの意識が戻っても、一度目を合わせたくらいで何も話さなかった。
もう元に戻ることはないだろうと思っていたから、俺は避けていた。
それでいいと思ってた。俺のために時間を無駄にすることはないんだ。
だけど、それじゃあダメなんだとクイックは教えてくれた。
クイックが俺たちと向き合おうとしてくれたように、俺もまた、あいつと向き合う時が来たんだ。
いつまでも逃げてるわけにはいかない。
ここで逃げたら、俺はいつまでも前に進めない。

自然と足は速くなる。まだ癒えきっていない傷がズキズキと痛むが、そんなことに構ってはいられない。
俺よりもあいつの方が苦しいはずだから。

「フラッ・・・シュ?」

俺と同じように自室での安静を命じられていたはずだから、部屋にいるとばかり思っていた。なのに、其処に弟の姿はなかった。

何処に?

思い当たる場所は一つだけあった。
だけどそこはフラッシュにはあまりにも辛過ぎる場所。

いるはずがない。

そう思いながらも歩みを止めることはできなかった。
もしも、あの場所にいるのだとしたら、どんな気持ちでいるのだろう。

あの場所は・・・


俺たちの墓場


俺たちの心は其処にある。

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