大前提

・核さえ残っていれば体の再生はいくらでもできる。
・核のデータさえあれば記憶の再生や消去も簡単にできる。
・核をコピーし予備として保管しておくことはできない。

核さえ残っていればたとえ体を粉々にされても再生は可能です。
ですが、核が完全に破壊されてしまえばもう二度と再生できません。同じ形や同じ人格にすることができないのです。まったく同じものを作ることは不可能なのです。これが「ロボの死」です。
ロボ自身は自分の核がどこにあるかということを知りません。それは自害という形を防ぐためにワイリーさんがそうしたのです。特に2ボスは完全な戦闘用であるがゆえに「負けるくらいならいっそ自分の手で」という概念を持っているのです。ワイリーさんにとってロボとは自分の息子や孫のようなかけがえのない存在なのです。ワイリーさんにしてみればロボが自害するということは愛する我が子が自殺するのと同じであり先立たれるのと一緒なのです。そんなことをさせないためにも核がどの部分に取り付けられているのかを教えることはしないのです。
それでも間違って破壊してしまう可能性があるので自分の力では決して壊れることがないようにそれぞれに合った強さの核を取り付けているのです。だから一度核を取り外し他のロボに取り付けるということはできません。臓器移植と同じようなもので拒否反応を示してしまうのです。
自分以外のロボの核の場所を知っています。これは同士討ちを防ぐためです。自分の力では決して破壊できない核ですが他のロボの攻撃には耐えられないのです。最初から核の位置を把握しておけば核周辺に攻撃を仕掛けることはないのです。
しかし完全に殺意を持っている場合はどうしたらいいのでしょうか?仲間意識の強い連中なのでそう易々と核を破壊しようなどと考えたりしないのです。本能的にそれはしてはいけないことだと理解しているからです。
壊が暴走したときに全ての核が無傷ですんだのは壊が無意識に核を傷つけないようにしていたからなのです。
もともと壊は自分の身を犠牲にしてでも兄弟を守りたいという理念の持ち主であり、兄弟がいなくなるという状態になるのが耐えられないのです。自分はどうなってもいいから兄弟たちだけは・・・という思想で生きているのです。それ故に目の前で兄弟が壊されるようなことがあれば暴走してしまうのです。あの時は破壊衝動が限界に達してしまっただけなのです。ワイリーさんが徹夜して兄弟たちを直している間に孤独を感じた壊はさらに理念と思想を深く持つようになったのです。
自害しようとした時は「とにかく自分を傷つければいい。そうすればきっと楽になれる。兄弟たちを傷つけることもなくなる。とにかく自爆を繰り返せばいい」という考えのもとだったのです。光が気付かなければ壊はそれを実行していたことでしょう。光は心のどこかで察していたのです。このときはまだ心の繋がりはありませんでした。しかし最も近い時期に生を受けたこの二人は何かを察することができたのでしょう。
ほぼ同時期に作られた二人ですが人格プログラムの作動の誤差が生じ、光の目覚めが遅くなったのです。体は完成しているのになかなか目覚めない弟を壊はずっと見守っていました。その時の記憶があるのかどうかは分かりませんが光は目覚めたときから壊にしか懐いていませんでした。
ワイリーさんの作る人格プログラムには性格のベースがありません。人と同じように周りと触れ合いながら成長させるためにそうしたのです。失敗から学びまたそれをどのように生かしていくか、それを見届けたいのです。
ワイリーさんは生涯独身を貫く人なので当然子供はいません。それ故にロボを本当の子供のように育てるためにあえて人格を作らなかったのです。
ワイリーさんが独身でいる理由としては自分が相手をしてやれないと確信しているからなのです。それに世界征服という野望を持つ自分と一緒になってしまっては必ず不幸にさせてしまう、孤独にさせてしまう、という思いがあるからです。孤独なのは自分ひとりでいい。そういう概念を持っている人なのです。
世界征服という野望は幼い頃から持っていた気がします。
なにもない状態からロボがどのように成長していくのか、それはワイリーさんの唯一の楽しみだったのではないでしょうか。
そんなわけで人格のベースがない状態で正を受けたロボたちはデカイ図体をしておきながら言動はまるで赤子のようだったのです。でも金属だけは何故か最初から完璧な性格なのでした。

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