今日も、削除ボタンが押せない
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「今、駅を出たよ。もう少しで帰るから、待ってて」
優しい彼の声が、受話器越しに聞こえてくる。
19時12分。
駅に着くと、彼は必ず電話をくれる。
駅からバスに乗って、15分。
その間に夕飯の準備を終えて待つ。
ご飯はホカホカ、お味噌汁もいいお味。
焼き魚も今日はいい焼き色で、塩気も丁度いい。
今日の晩ご飯は完璧。
「そろそろ帰ってくるかな……」
20分、30分、1時間……。
いくら待っても、彼は帰ってこない。
分かっていた。
彼はもう帰ってこないことを。
分かっていた。
分かって、いるけど……。
もしかしたら、と思ってしまうんだ。
「遅くなって、ごめんね」
そう笑いながら、帰ってきてくれるんじゃないかって。
「今、駅を出たよ。もう少しで帰るから、待ってて」
「うん……。早く、帰ってきて……」
今日も私は、冷めたご飯を一人で食べる。
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「今、駅を出たよ。もう少しで帰るから、待ってて」
優しい彼の声が、受話器越しに聞こえてくる。
19時12分。
駅に着くと、彼は必ず電話をくれる。
駅からバスに乗って、15分。
その間に夕飯の準備を終えて待つ。
ご飯はホカホカ、お味噌汁もいいお味。
焼き魚も今日はいい焼き色で、塩気も丁度いい。
今日の晩ご飯は完璧。
「そろそろ帰ってくるかな……」
20分、30分、1時間……。
いくら待っても、彼は帰ってこない。
分かっていた。
彼はもう帰ってこないことを。
分かっていた。
分かって、いるけど……。
もしかしたら、と思ってしまうんだ。
「遅くなって、ごめんね」
そう笑いながら、帰ってきてくれるんじゃないかって。
「今、駅を出たよ。もう少しで帰るから、待ってて」
「うん……。早く、帰ってきて……」
今日も私は、冷めたご飯を一人で食べる。
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